父の遺言

 バンスの屋敷を訪れたプラナはバンスの死に際の言葉を娘であるピリカに伝えようとするが、言葉に詰まってしまう。


 だがピリカの強い言葉に促されプラナは意を決する。


「ピリカ様……、バンス将軍は敵の剣士と正面から堂々と戦い……、お見事な最期を遂げられました。ま、ま……さ、に、武人……バンスの名に、お、ふさわ……しい、最期……でした」


 プラナは涙を流し、声を震わせながらも懸命にバンスの最期を伝える。ピリカは冷静に返答をする。


「……そうなの、お父様が……」


 続いてプラナは声を絞り出し、更に伝える。


「それから……こうもおしゃっていました。『お……前の、母、親を見捨てて……すまな……かったと……」

「……お父様が、そんなことを……」

「申し訳ありません、私が……私達がもう少し早く発見できていれば……」

「ううん、プラナ達のせいではないわ。きっとお父様のことだから最後に強い相手と戦えて満足だったと思うわ」


 プラナに対し気遣いの言葉を述べるとピリカは更に自分の現在の状況を伝える。


「教えてくれてありがとうプラナ。これから私、ルホールに行って、ルード様と暮らすことになるから。また落ち着いたらお父様の埋葬や弔いはするから。あなたはもう下がっていいわ」

「はっ!ではルホールでもお元気で」

「落ち着いたらあなたもルホールにいらしてね」

「はい、では失礼いたします」


 そう言ってプラナはピリカの部屋を退出する。


 プラナが部屋を退出してしばらくするとピリカは突如膝から崩れ、涙が溢れ叫びだす。


「うっうっうっ、あああああ!お父様ーーーー!どうして!どうして死んでしまったの⁉」


 プラナの前では気丈に振舞うも1人になると悲しみがどっと押し寄せ叫びが止まらない。


「どうして……何で……、私に子が……生まれたら……その、子を立派な武人に育てあげる。そう約束したじゃない……、それなのに、その……約束も……果たさずに、逝ってしまう……なんて」


 ピリカは約束を果たせずに命を落としたバンスの事を考え、涙が止まらず、叫ぶことしかできなかった。


「うわあああん!お父様ーーーー!」


 その叫び声は部屋を出てまだ廊下にいたプラナにも聞こえ、涙を流しながらも決意を言葉にする。


「ピリカ様……、このプラナがきっとバンス将軍の無念をはらします」


 プラナにとって、ギン達はやはり敵だと再認識する出来事であった。


 悲しみと憎しみの連鎖はもはや止められないのか?

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