戦いへの憂い
ブロッス帝国の魔導騎士団が帝国に帰還している頃、ギン達はとある街の近くまで来ていた。
街が見えてくるとギンが一同に声をかける。
「みんな、街が見えてきた。今日はここで休んでいこう」
ギンの言葉に最初に反応したのはブライアンであった。
「しかしよ、砦で足止めを喰らったうえに砦をぶっ壊してから進んだからな。また帝国がピトリに来て俺達に戦いを挑んできやしねえだろうな?」
ブライアンの言葉に対しルルーが自身の考えを述べる。
「急ぎたい気持ちは分かるけど。焦りは禁物だわ。帝国本国に乗り込むということは今までの戦いと違って敵地に行くわけだし、休める時に休んでおかないと」
「確かにな、ま、今の俺達ならそう簡単に負けやしねえけどな」
ブライアンは強気の発言をするがそれに対しムルカが苦言を呈す。
「しかしブライアン殿、油断は禁物だぞ。帝国には魔導師団長エンビデスがおる。あの者の魔力もあなどれんし、何より皇帝ギガス。最大の強敵が控えているのを忘れないほうがよい」
「そのギガスっていうのは強えのか?」
「ボースの将軍時代は自ら前線で戦う猛将と言われていた。今でこそ皇帝の政務を優先して前線にはでないが強敵であると認識すべきであろう」
ムルカとブライアンのやり取りを聞いてギンも発言をする。
「その前に魔導騎士団と戦うことになるだろう。今度こそ奴らは俺達との決着をつけるつもりだ」
ギンの言葉を聞いて、エイムが自らの思いを吐露する。
「魔導騎士団……ですか、あのプラナって人、相当悲しんでましたね、よほどバンス将軍のことを慕っていたんですね」
エイムの言葉を聞いてヨナがエイムに対し言葉を発する。
「エイム、あんたにとっては助けてもらった恩人かも知れないけど、あたしらにとってはあいつらは敵なんだよ。戦場で敵に同情なんてしたら命取りだよ」
「ヨナさん……」
「あたしはあんたや他のみんなに死んでほしくない。だから生き残ろう」
「……はい」
エイムとヨナのやり取りを憂うような表情で見るルルーにジエイが声をかける。
「何か気がかりなことでもあるのですかな?」
「ジエイ、どういう形であれ、私はこの戦いを早く終わらせたい。そう思っているわ」
「それはルルー殿だけでなく、みな思っているでしょう」
「……そうね」
ルルーの中ではエイムより聞かされていたギンとプラナが兄妹かも知れないということが気になっていた。
先程のエイムの発言の中に、やはりギンとプラナが戦うことに抵抗があることがエイムの中にあると感じはしたが、現状では戦いを止める術はないことをルルーは憂いていた。
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