準備!婚姻の儀
ブロッス帝国の帝都では現在バンス将軍の娘であるピリカとルホール地方領主ルドルフの息子であるルードの婚姻の儀の準備が進んでいた。
城の玉座の間にルドルフ、ルード、ピリカが居たが、ピリカの父であるバンスの姿はなかった。
そんな中、彼らの前に、皇帝であるギガス、そして魔導師団長であるエンビデスが現れ、ギガスが言葉を発する。
「文でも伝えたがルード、ピリカ、そなたらの婚姻の儀を少々予定より早く執り行うこととなった。足労であったな」
ギガスの言葉を受け、ルードの父であるルドルフが返答をする。
「めっそうもございません陛下。我が子ルードと、バンス将軍の息女であるピリカ殿の婚姻の儀がなれば我らブロッス帝国の結束は強まります。実に良き判断でございます」
父の言葉を受け、ルードもギガスに対し言葉を述べる。
「私も父と同じ考えにございます。現在の帝国内の情勢は我が耳にも入っておりますが、私個人としてはピリカ殿と1日も早く夫婦になれることを望んでおりましたので陛下には感謝の気持ちしかございません」
ルードの言葉を聞き、ギガスがピリカに声をかける。
「ふっ、言い寄るな。ピリカよぬしもそう思っているのか?」
「はい、陛下と父が取り計らってくださったからこそ、ルード様と夫婦になれることを思えば私も感謝のお気持ちしかございません」
ピリカもルードもギガスへの感謝の意を伝え、ギガスより言葉が発せられる。
「うむ、下がってよいぞ。婚姻の儀までぬしらは城に泊まっていくがよい」
そう言ってピリカ達は玉座の間をあとにし、ピリカ達がいなくなったのを確認するとギガスがエンビデスに尋ねる。
「ところで、バンスはどうしたのだ?」
「はっ、遠征予定ではありましたが出発前に婚姻の儀を早める旨を伝え、バンスは本国に残ったはずですが」
「まさか……あやつ」
ギガスは何かを察し、エンビデスに指示を出す。
「あやつのことだ、遠征先に向かったかもしれん」
「それでは、いかがなさいますか?」
「やむをえまい、あやつも武人というわけか」
ギガス達はバンス抜きで婚姻の儀をとりあえず進めることとした。
そして玉座の間をあとにしたルドルフがルードに声をかける。
「ルード、私は挨拶回りをしてくる。お前はピリカ殿とゆっくり過ごしていろ」
「心遣い感謝します父上」
ルードの言葉を聞いて、ルドルフは帝国の要人への挨拶回りに向かう。
残ったルードはピリカに声をかける。
「ピリカ、ちょっと庭園まで行ってみないか?」
「はい」
そう言ってピリカとルードは庭園まで歩いていき、庭園に着くとルードが言葉を発する。
「バンス将軍はどうしたんだろうね?」
「きっと、戦いに行かれたと思います。お父様は戦場生活が長いですから」
「あの人が戦うのはきっと君を守る為、君が平和に生きていけるようにする為なんだろうと僕は思うよ」
「ルード様……」
次の瞬間ルードはピリカに対して抱擁し、言葉を続ける。
「え?ル、ルード様?」
「これからは僕が君を守っていく。いつまでもバンス将軍を頼ってばかりじゃダメだからね」
「ルード様、うれしい、私もあなたの妻として、武人バンスの娘として恥じないようにしたいと思います」
「君は素晴らしい女性だ。それは、それだけは僕は自信を持って言える」
家同士の結びつきを強くする婚姻の儀ではあるが、そこには確かに2人の愛もあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます