秘めし話

 一同の意思として、このままブロッス帝国に乗り込むという意見が統一された。目的としては直接皇帝であるギガスに相対し、決戦、もしくは会談を行うというものであった。


 意見がまとまり、ルルーが一同に呼びかける。


「それじゃあ、さっき言ったように今日はこの街で泊っていきましょう、アイルの街に着いたら、船に乗る前に私達の意思を書いた文をプレツの司祭様に届けるから」


 ルルーの発言に対しブライアンが疑問を抱き、ルルーに尋ねる。


「まさか文の返事を待ってから出港するのか?それじゃあいつ出港になるか分かんねえぞ」

「いいえ、返事は待たないわ。というより最初から返事は不要の文を送るつもりよ」

「は?どういうことだ?」


 ブライアンの質問をルルーが答える。


「司祭様には私達の行動を把握してもらう必要があるわ。そうしておけば状況がどう転んでも説明しやすくなるし」

「なるほど、事前に根回しをしとくってわけか」

「そういうこと、とりあえず夜までは自由に過ごしていいわ」


 そう言って、一同がそれぞれの時間を過ごそうとする中、ルルーがエイムに声をかける。


「あ、エイム、ちょっといい?」

「はい、なんですか?」


 そう言ってエイムはルルーに近づいていく。他の仲間や周りに住民がいないことを確認するとルルーがエイムに尋ねる。


「私の勘違いかも知れないけど、まだ何かギンに言いたいことがあったんじゃないのかな?」

「え、それは……」

「ごめん、やっぱり止めておくわ。勝手な憶測で言われちゃ迷惑よね」

「待って下さい、その、これこそ私の勘違いかも知れないので」


 勘違いという言葉を聞いたルルーがエイムに再度尋ねる。


「それってどういう意味?」

「最初に違和感があったのは、あのプラナって人が私を捕まえる為にギンさんと戦っていた時に2人共が魔法を発動した時に魔力の波動が似ていたことなんです」

「なんですって⁉でも待って、彼女とはグラッスでも、スップでも交戦していたはずよ。その時は感じなかったの?」

「あの時は色んな人が魔法を同時に発動していたのでその違和感に気付かなかったんです。だけど2人だけが魔法を発動した時に違和感がありました」


 更にエイムはプラナと話した内容についてもルルーに説明をする。


「さっきも話しましたが、あの人が他家から養子に出された話とギンさんの妹さんが他家に養子に出された話も単なる偶然にしてはでき過ぎているような気がして」

「エイム、まさか……」

「もしかしたらあの人はギンさんの妹さんかもしれません」

「それで彼女の説得をしきりに訴えていたのね。でも途中で引き下がったのはどうして?」


 ルルーが抱いた疑問にエイムがうつむき気味に返答をする。


「怖かったんです」

「怖い?」

「はい、ギンさんがこの事を知って、私のように苦しんだりするのを見たくなかったんです。それにこれは全て私の憶測で……、そんなことでギンさんを……、皆さんを振りまわしちゃいけないと思って」

「エイム、あなたの思ったことが真実かどうかは分からない。だけどもし本当だとしたら兄妹同士で殺し合いをすることになって互いに辛い思いをするわ」


 ルルーの言葉にエイムは言葉を返す。


「でも、どうすればいいのか……」

「とりあえず今はこの話は私達だけの秘密にしましょう。私も今度彼女と遭遇したら魔力をしっかりと感知してみるから」

「ありがとうございます、ルルーさん」

「どういたしまして、私達も夜までゆっくりしましょう」


 エイムが感じたギンとプラナの違和感。これらの真実はどのように明かされるのか。

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