エイムの懇願
ギンは帝国に乗り込み、雌雄を決することを一同に意見として伝え、それぞれが賛成の意見を述べる中、エイムが最後に言葉を発しようとしていた。
「私は乗り込むことには賛成です。ですがその前にもう1度説得することはできませんか?」
エイムが説得という言葉を口にしたので、思わずギンは尋ねる。
「説得って、誰を説得するんだ?」
「あの魔導騎士団のプラナって人はどうですか?」
「何で、そこであいつが出てくるんだ?」
ギンに尋ねられ、エイムは自身がアビィ達に捕らわれていた際のプラナの行動について話す。
「実は私、捕まっている時にあの魔術師に暴力を振るわれそうになったんです」
エイムの話を聞き、ウィルが怒りの感情を露わにする。
「何だって!あいつら人さらいまでして、ろくでもない奴らだな!」
「でもウィルさん、そんな時に私を助けてくれたのがその騎士の人なんです」
エイムの言葉を聞いて、ヨナが言葉を発する。
「でもさあ、あいつら騎士は誇りとかを重んじる奴らだし、エイムを助けたのはそういうのを汚されるのが嫌だっただけなんじゃないの」
「それでも私を助けてくれたのには変わりません、それにあの人も私と同じなんです」
「同じ?何が」
「あの人は他の家から養子に出されて、帝国の騎士の子供として育ったんです。だからあの人も本当のお父さんとお母さんを知らないんです」
続けてエイムはプラナが抱えていた感情についても話した。
「だけど、あの人は親に捨てられたと思っていたようでした、それで憎んでいると話していました。でもあの人の元の家も滅んだようです。
その後、魔導騎士団に入って、帝国1強の為に戦い、自分のような子供をださないといってました」
エイムが全て語り終えるとギンが強く言葉を発する。
「奴らの方法では無理だ」
「ギンさん?」
「奴らが戦火を拡げれば、結局あいつのような子はいなくなるどころか増える一方だ。それに普通の方法ではやはりあいつらと話すことは無理だ」
ギンの言葉にエイムが更に言葉を重ねる。
「でも、せめてもう1回くらいは説得をしてみましょう!」
「エイム、何で助けてくれたからといってあいつにこだわるんだ?」
「それは……、ごめんなさい、私まだ冷静になれてないかもしれません。でも戦いを早く終わらせるならギンさんの意見が正しいと思います……。ごめんなさい」
「まだ気持ちの整理もつかないだろう。俺のほうこそ辛い状況を思い出させて悪かった」
ギンとエイムは互いに謝罪するが、その様子を見ていたルルーはエイムがまだ何かを言いたそうにしていたのを感じていた。
そのルルーにギンが声をかける。
「ルルー、今日はもう王都に泊まって明日に出発するか?」
「ん?え、ええそうね、そうしましょ」
ギンに声をかけられて動揺しているルルーに対し、ブライアンが声をかける。
「何だ、ルルー。ボーっとしていたのか、お前も案外抜けてるところがあるんだな」
「わ、私はみんなが安全に旅ができるように考えているのよ。あなたと一緒にしないで」
「へいへい」
「あ、またそうやってバカにしたような態度をとる」
ブライアンの言葉で少し緊張の糸が切れたのかルルーも声を上げ、他の者も少し、緊張状態がほぐれたのである。
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