追いつき、追い越し

 ブライアンやルルー達が魔導騎士団と戦っている中、ギンはエイムを救出すべくアビィ率いる魔導師団に追い付きつつあった。


 その状況が魔術師たちにも伝わり、1人の魔術師がアビィの元に報告にやって来る。


「ご報告です!アビィ様」

「何か?」

「魔法剣を使う剣士が単身でこちらへ近づいている模様です。迎撃なさいますか?」


 ギンが近づいている事実を聞いてアビィは少し考え方針を一同に伝える。


「やむを得ん、馬車は捨て逃走をする」

「はっ!」

「私は娘を連れ、ここを離れる。何名かは私の護衛に、他の者はそいつを食い止めよ」

「はっ!」


 部下の返答を受け、アビィはエイムの腕をつかみ、引っ張っていく。


「来い、簡単に逃げられると思うな」


 エイムも今の敵の数の前ではまともに戦っても勝ち目はないことを悟っており、とりあえずはアビィの指示に従うが、ギンが必ず助けてくれる。心はその思いであふれていたのだ。


 アビィ、エイム、アビィの部下の数名は倒れた木の小さな隙間を通過し、この場を離れる。


 アビィ達が倒れた木の隙間を通過してからしばらくするとギンが到着し、魔術師たちに呼びかける。


「そこをどけ!俺はこの先に行かなくてはいけない」

「そうはいくか、貴様を食い止めよとのご命令だ」

「ならば力づくで通らしてもらうぞ」


 そう言ってギンは剣を抜き、魔導師団に立ち向かっていく。魔導師団も魔法を放つがギンにかわされあっという間に懐に飛び込まれ次から次へとギンに斬られていく。敵の背後を取ったギンは火の魔法を放ち、残った者達の進路を防ぎ、エイム救出の為に木の隙間を通過する。


 ギンに斬られなかった魔術師達が通過するための方法を模索している。


「くそ、これでは」

「水の魔法で消火するぞ、急ぐぞ!」


 魔術師達は水の魔法で火の消火作業に当たり、ギンは分かれ道に来て、迷っていた。


「くそ、どこに逃げたんだ⁉」


 ギンがどちらの道を進むかを迷っているとジエイが現れギンに声をかける。


「ギン殿、どうしましたか?」

「ジエイか、分かれ道があってどこに進んだのか……」

「お任せを」


 そう言ってジエイは地面に術を放ち足跡が自分の目に映るようにした。


「どうやら、あちらのようです」

「それならすぐに行くぞ」


 ギンがそう呼びかけていると、後方より魔術師達が迫っていた。


「くそ、もう追い付いて来たか!」

「ギン殿、ここは私が食い止めます、ギン殿はエイム殿を」

「すまん、任せるぞ」


 そう声をかけ、ギンはエイム救出の為に走り出し、再度速度強化の魔法を使用する。


 エイム救出までもう一歩である。

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