ラックの街

 ギン達とカイス率いる魔導騎士団の共同戦線により、魔族であるピッキーを退けることに成功する。


 共闘後の一時休戦案をカイスは拒否し、魔導騎士団はギン達の前より姿を消した。


 そうして再びギン達はミックサック団の護衛をしながらラックの街へと向かう事とした。


 ギンは再度ループの手綱をとり、馬車を御する。その馬車内でブライアンがムルカに話しかけている。


「結局、俺達は帝国とも魔族とも戦い続けなくちゃならねえのか、先が思いやられるな」

「我らとしては旅をしながら反帝国同盟を形成しつつ、魔族との戦線も強化しなければならん。いかに帝国が強大とはいえ、1国でできることなど限られると理解してもらえれば、再交渉も可能やも知れぬ」

「あいつらの態度を見ていると、まるですでに自分達だけがこの世界を動かしているような態度だしな。その鼻っ柱をへし折る必要があるってわけか」

「ま、簡単に言うとそういう事だな」


 ブライアンとムルカが馬車で会話をしていると、ミックサック団の馬車内でミニルがエイムに何かを尋ねている。


「ねえ、エイム、何でギンさんはあのカイスっていう騎士のことを信じようと思ったの?私には分からないわ」

「前に私達がグラッスに行った時に、あの人は私達を行商人かどうかをまず確認したんです。だからギンさんはあの人はむやみに戦いを起こしたりしない人だと思ったんじゃないかと思います」

「でも、帝国が戦争を起こしているんだし、それだけで信じられるものなの?」

「ギンさんは帝国がどうかよりあの人を信じたかったと思います」


 エイムとミニルの会話を聞いて、リーザも自らの考えを話す。


「えっと、エイムさんだっけ?」

「はい」

「あなたやあの剣士みたいな思いやりを持った人ばかりなら戦争は起こらないでしょうけど、現実はそうはいかないものね」

「リーザさん……」


 更にリーザは話を続ける。


「さっきの騎士の人達だってそうよ、私達を助けてくれたから悪い人ではないでしょうけど、帝国という戦争を引き起こす国にいるという事実は変えられないわ」


 リーザの言葉を聞き、エイムは返答をする。


「リーザさん、帝国が戦争を続けるなら私達はそれを止める為に戦います。リーザさん達が安心してお芝居を続けられるように」

「エイムさん、ありがとう。でも無理しないでね」

「ありがとうございます」


 次の瞬間、リーザはミニルにも話しかける。


「それから、ミニルさん」

「はい」

「いつか、あなたの街に行くわ。待っててくれる?」

「もちろんです。お待ちしております」


 会話をしている間も馬車は進み、なんとか次の公演の予定日の前にラックの街に到着する。


 ラックの街に到着すると団長がギン達に礼の言葉を述べる。


「諸君のおかげでわしらは無事にここまで到着できた。代表して礼を言わせてもらう。あ、君、ちょっといいか?」


 団長が声をかけたのはミニルであり、呼びかけに応じる。


「はい、なんですか?」

「実はプレツのニリの港町での公演をしたいと思っている。シスター殿から今は帝国の侵攻の心配はなく、海路も封鎖されていないと聞いた。だからさせてもらおう」

「はい、喜んで」

「では、文を送って交渉したいから観光ギルドの名称を教えてくれ」


 ミニルは自身が所属する観光ギルドの名を団長に話し、団長は団員に文を送るよう指示を出す。


「じゃあ、早速、文を送る手配をしてくれ」

「はい」


 団員の1人が文を出す手配にその場を離れると、団長達最後の挨拶をギン達とする。


「世話になったな、王都までの護衛はまた別の者に依頼する」


 そう言って、団長はその場を離れていき、リーザも挨拶する。


「ありがとうございました。また皆さんと会える日を楽しみにしています」


 リーザを始めとした団員達もギン達のいる場所から離れていった。

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