父越え宣言

ブロッス帝国の補給拠点を無力化することに成功したギン達はボガード親子と共にミッツ教団の馬車でニリからスップまでへと帰路についた。


 馬車の中で何やら会話がされている。


「それでボガード殿、特使の2人に話したいことというのは?」

「報酬の話だ。さっきあんたはウィル達が功労者だと言ったが、一応うちの運搬業として依頼を受けたしその話をな」

「個人としてだけでなく、事業としての報酬ですか、多分そこも考えてくれていると思いますが」

「一応俺が代表だし、自分てめえでやるのがけじめってもんだろ」


 ボガードは運搬業として受けた依頼でもあるので、子供達が功績に応じた報酬だけではなく、運搬業としての報酬も受け取るべきだとギンに話し、それをムルカやルルーに相談しようとしているというのだ。


 そんな時、ウィルがボガードに声をかける。


「なあ、親父……」

「おう、何だ?」

「俺さ、今回ほど海が怖えって思ったことはねえ、ブロッス帝国なんてとんでもねえでかい国が海まで牛耳ると、あんな恐怖が襲ってくるって、俺は海の……、水の精霊の声が聞こえる。だから海なんて怖くねえって思ってたのに……」

「じゃあ、俺のような海の男になるのはあきらめるのか?」


 ボガードの問いに、ウィルが強い言葉を返す。


「そうじゃねえ!親父が昔、海賊退治の依頼ばかりをなんで受けていたかが分かったんだ。海は自由!海は誰のものでもない!きっと親父はそういう考えで傭兵をやっていたんじゃないかって!」

「……今回の出来事だけで俺の考えに気付くのは大したもんだが、それとお前がどう関係するんだ?」

「俺は親父を超えたい。だからこいつらと一緒にブロッス帝国と戦う!」


 ウィルの宣言にボガードの前に、ギン、ジエイ、ミニルが驚愕する。


「何だって⁉」

「ウィル殿⁉」

「ちょっと兄さん!どうしたの?」


 ギン達が驚く中、ウィルがギン達にも話す。


「別に俺だって思いつきで言ったわけじゃねえ、どの道ブロッス帝国に勝たねえと俺達の商売もやりにくいし、ミニルの仕事だってやりにくいだろ」

「それはそうだけど、でもどうして?」

「あんな大国、親父たちですら倒してねえんだ。俺がこの一団に加わって、奴らを倒せば親父越えを証明できる」


 今度は再びボガードの方を向いて話す。


「やるぞ、俺は」

「ふっふっふっ、ハーハッハ!大口をたたくのは相変わらずだが、今日のお前には説得力を感じるぜ、今回の事で一皮むけたようだな」

「俺はまだまだこれからだ」

「いいだろう!その日を期待しないで待ってやる!」


 期待しないという言葉とは裏腹にボガードの気持ちは期待であふれていたのだ。

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