素直な言葉

ギン達がニリの港町へボガードへの依頼に赴いている間、スップに残っていたエイム達はしばしの休息の時を過ごしていた。


 魔導騎士団との戦いとの最中に出会った少女マリンはスップの防衛兵団の団員の妹であり、兄に連れられ教会でエイムと再会を果たしていた。


「マリンちゃん、お久しぶりです。元気でしたか?」

「うん、元気だったよ。おねえちゃんは?」

「私は色々あって忙しかったんですけど、元気ですよ」


 エイムとマリンがやりとりをしている中、マリンの兄が二フラにぼやいていた。


「隊長、人づかいが荒いですよ。まさかいきなりマリンを連れてきてくれなんて」

「何を言うんだ!エイム殿とギン殿はお前の妹さんの命の恩人だぞ。2人がいなかったらどうなっていたか」


 二フラの言葉にエイムが言葉を返す。


「おおげさですよ、帝国の人が何かしそうに私には見えませんでしたから」

「確かに奴らが民間人を虐殺するような話は聞きませんが、巻き込まれを避けられる保証はありませんからやはりあなた方は命の恩人でしょう」

「そうですか、そう言っていただきありがとうございます」


 二フラと会話をしているエイムにマリンが話しかける。


「おねえちゃん、あの剣士のおにいちゃんは?」

「おにいさんは、今大事なお仕事に行ってるから私達は帰るのを待っています」

「そうなの、さびしくない?」

「えっ?私がですか?」


 エイムの反応に対しマリンが更に話す。


「うん、前に教会でマリンとお話してくれた時もあのおにいちゃんが出て行ったとき少しさびしそうに見えたよ」

「そうなんですか……あんまり考えたことはなかったですね」


 エイムとマリンのやりとりを見て、ヨナがブライアンに声をかける。


「子供ってのは素直だね」

「そうだな、前の誰かさんと違って」

「ちょっと待ってよ!まだあの時のことを根に持っているの⁉それはさすがに許してよ」

「悪い、冗談だって、もう誰も根にもっちゃいねえよ」


 ブライアンは以前、ヨナ達に不当な通行料をとられそうになったことをからかい気味に話す。


 当時は深刻な状況に陥ったが、今となっては彼らにとっては笑い話のようだ。


 その笑い話をしている中ジエイと傭兵団2名の計3名が戻って来た。


「街に戻って来た時に、傭兵団の方と一緒になりましてそのまま一緒に戻ってきました」

「それで、帝国軍は?」

「はい、先遣隊らしき部隊はいなかったのですが、本隊は例の小島に立ち寄っているようです」

「補給してから攻めてくるってわけか」


 フィファーナ隊本隊の接近を前に戦慄が走る。

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