海の男の家族

 港町ニリでギン達はボガードというかつて海の傭兵をやっており、今は荷船で運搬業を営んでいる男と会い、更にその息子であるウィルという若者とも会っていた。ボガードはミッツ教徒であるルルーやムルカが護衛を連れて自らを訪ねてきたことを疑問に思い、自宅でルルー達の話を聞く提案をして。今まさに帰路についていたのである。


 ボガードとウィル、そしてギン達は周囲を警戒して少し離れて動いており、ギン達が会話をしていた。


「この短時間で我らが訪れたことへの違和感に気付くとはさすがだな」

「ええ、しかも自宅となると他の者に話を聞かれる危険性は少ないので、そこまで見越しているのですね」

「気になるのは息子にまで俺達の話を聞かせようとしていることだ、一体何を考えているんだ?」


 ギン達が話しているとボガードの自宅らしき建物の前にボガード達が立っており、ギン達もすぐに追いつく。


「とりあえず、つけてきた奴はいねえようだな、ま。入ってくれや」


 ボガードの案内でギン達はボガードの家に入っていき、挨拶をする。


「お邪魔します」


 ルルーがそう言葉を発すると、ある女性が反応をする。


「あら、お客さん?」

「おお、帰ったぞ」

「今日は早いのね」

「ああ、ちょっとこの人達が俺に用があるからちょいとうちまでな」


 ボガードが女性と話し込んでいると、ギン達の方向へと体を向き直し、女性を紹介した。


「紹介するぜ、俺の嫁さんだ」

「初めまして皆さん、ボガードの妻のレンと申します」


 レンの挨拶にギン達も挨拶を返す。


わたくしはミッツ教団シスターのルルーと申します」

「同じくミッツ教団神官戦士のムルカと申します」

「護衛として雇われているギンです」


 ギン達の挨拶を聞いてレンが返事をする。


「まあ、わざわざ遠くからご足労おかけしました。そうだ、お話している間にお料理をしているので是非召し上がって下さい」

「お構いなく、我々はボガードさんに依頼があって来たのですから」

「まあまあ、そう言わずに、ちょっと待って下さい、なんのおもてなしもしないのは申し訳ないですから、ミニル、ちょっといい?」


 レンはミニルという者を呼び、そのミニルらしき者が姿を現す。


「何、母さん?」

「お客さんが来ているからお茶をお出ししてくれる、私はお料理をしなくちゃいけないから」

「うん、分かった」


 ミニルは若い女性であり、先程のウィルと年はそう変わらないようであり、ミニルはお茶の準備に行き、ミニルについてルルーがボガードに尋ねる。


「あの、あの方は?」

「ああ、あれは俺の娘でさっきのウィルの野郎の妹にあたる」

「娘さんで、ウィルさんの妹さんなんですね」

「さ、それよりも聞かせてもらおうか、俺に頼みたいことをよ」


 いよいよボガードとの交渉が始まる。その行方は?

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