海の男ボガード

 ニリの港町へと訪れたギン達はそこの港にあるドックに入り、1人の屈強な男と対面する。


「何だあんたら?ボガードなら俺のことだが、運搬の依頼ってわけじゃなさそうだな」


 自らをボガードと名乗る男はギン達が運搬の依頼に来たわけではないことに気付き、その言葉を受けルルーがボガードに対し話しかけた。


「申し遅れました、わたくしはミッツ教団のシスターのルルーと申します」

「私はミッツ教団の神官戦士のムルカと申します」

「自分はミッツ教団に護衛として雇われているギンです」


 それぞれが自己紹介を終えるとボガードは疑問が生まれぶつける。


「どうしてミッツ教団の聖職者様がはるばるこんな遠くの街まで、しかも御大層に護衛まで連れて?」

「我々はあなたにある依頼をする為に、この街まで訪れました」

「わざわざそういう言い方をするってことはやっぱり運搬の依頼じゃねえんだな、話は聞くがその代わり俺んで構わねえか?」

「我々はそれでも構いませんが……」


 ルルーの言葉を聞き、ボガードは船の整備をしている男に声をかけた。


「じゃあ決まりだな、おいちょっといいか!」

「何でしょうかい⁉」

「俺はもう帰ってこちらの人達の話を聞かなきゃなんねえから後の仕事はてめえらに任せる!あと、を呼んで来い!」

「分かりやした!」


 ボガードに言われ、男はを呼びに行った。


「あの、ボガードさん、というのは?」

「まあ、すぐ分かるから、あわてるなって」


 ボガードがそう言ってしばらくすると先程の男が若い男と一緒に戻ってきて、その若い男がボガードに対し言葉を放つ。


「どうしたんだよ親父?」

「親父じゃねえ!ここじゃあ大将って呼べっつてんだろう!」

「それで一体?」

「俺はこれからこの人達の話を聞くために帰るからお前も一緒に話を聞け」


 親父という言葉が気になったギンは思わずボガードに尋ねる。


「あの、親父というのは?」

「ああ、悪いな。こいつは俺のせがれでウィルっていうんだ。腕はそこそこだが今一つ頼りねえんだよな」


 若い男はボガードの息子でウィルといい、ルルーとムルカが挨拶をした。


「息子さんですか?お初お目にかかります、わたくしはミッツ教団のシスターのルルーと申します」

「私はミッツ教団の神官戦士ムルカと申します」

「どうも、ウィルです。それで依頼というのは?」


 ウィルがルルー達に尋ねると、ボガードが口を挟む。


「俺もまだ聞いてねえ、だから帰って聞くんだ」

「聞くだけならここでもいいんじゃ?」

「おかしいとは思わねえのか、ミッツ教団の聖職者様がわざわざ遠くから、それも護衛を連れてきてんだぞ、こりゃあ何かあると俺は思う。秘密の話なら家で聞くのが一番安全だろ」


 ボガードは長年の傭兵経験から今回の依頼は裏があることを読み、そしてそれは間違っていなかったのである。

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