諜報任務

 スール国の国境付近で倒れていた男をルルーの治癒魔法で救ったギン達。傷は治ったものの体力が弱っているようなので男を介抱している。率先して動いているのはルルーのようだ。


「えっと、お水飲みますか?」

「かたじけない。いただきます」


 ルルーから差し出された水を飲み干す男。その男にギンが尋ねる。


「お疲れのところを申し訳ないのだが、何故あんたはあそこに倒れていた?良ければ説明してほしいんだが」

「助けていただいて申し訳ないが、私は得た情報を持ち帰らなければならないのです。それを外部にもらすわけにはいかないのです。それではごめん」


 男は立ち去ろうとするが、すぐにギンに呼び止められる。


「待て!1人でいるとまたあんたを狙ってくる奴にやられるんじゃないのか?とりあえず俺達はこれから王宮を目指すんだが……」


 ギンが王宮を目指すと言ったとたん、男の目の色が変わった。


「お待ちください!今、王宮に行くとおっしゃいましたか?」

「そうだが」

「目的は何ですか?」

「自分は秘密を守ろうとするのに人の目的は聞くのか?」


 少し、ギンと男の間の空気が不穏になるが、ルルーが間に入る。


「ちょっと!なんでギンがこの人にケンカを売るような真似をしてんの。申し訳ありません。私達はプレツより特使に参ったのです」

「特使?と、いうことは陛下に謁見なさるのですか?」

「そうですね、同盟の為の特使ですから」

「同盟とは?」


 ルルーは男に現在プレツが反帝国同盟を結ぶための動きを説明して、スールも同盟に加えたいことを話したのだ。


「そういうことですか。なら我らは味方同士ということですか。剣士殿、先程は失礼しました。お許しください」


 男の謝罪にギンが応じて話す。


「いや、俺も言葉が過ぎたようだ。申し訳なかった。今の反応だとあんたはスール国の者か?」

「はい」


 2人の会話にブライアンが入ってくる。


「味方同士ってことが分かったんだから、あそこで倒れてていた理由を話してくれてもいいんじゃないか」

「得た情報はまず陛下のお耳に入れたいのでそれ以外で構いませんか」

「めんどくせえが、まあ、いいや。ところであんたの名前は?」


 ブライアンに促された男は自己紹介を始める。


「私の名はジエイと申します。スール国に仕え、主に諜報任務を担っております」


 諜報という言葉を聞きなれないエイムがジエイに尋ねる。


「あの、そのチョウホウとは何でしょうか?」

「諜報とは敵の情報を探ることです。私はそれが主な任務なのです」


 敵という言葉からムルカが何かを察したようだ。そしてそこから生まれる疑問をぶつける。


「待たれよ。敵というのはまさか……」

「お察しの通り、ブロッス帝国です」

「だが、貴殿達はブロッスと戦争状態ではないであろう」


 スールがブロッスを探る理由とは?

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