新たなる旅

プレツから各国と反帝国同盟を形成する為に特使へと任命されたムルカとルルー。そしてその護衛の依頼を受けたギン。エイムとブライアンも同行することとなり、5人の旅立ちの準備をしていた。そのさなか司祭より最初に訪れる国が告げられようとしている。


「さて、皆さん。皆さんに最初に訪れてもらう国はプレツの東に位置する、スール国です」


 スール国の名を聞いてムルカが返答をする。


「スールは現時点では帝国との戦争状態ではなく。これまでも帝国の脅威にはさらされてはおりませんが」


 ムルカは反帝国同盟に加入するという事は帝国と戦う意思の表れを自ら表明するものであると主張しておきたいのだ。現時点で帝国の脅威にさらされていない国がそんなリスクを冒してまで同盟に加入するかという不安があるのだ。


「同盟を結んでもらえるかどうかという不安ですね。水面下ではコッポとの同盟を結ぶ算段がつきました。まずは隣国同士で同盟を結び連携を強化するのが良いとの陛下のお考えです」

「隣国とはいっても交流のほとんどない国ですし、私やルルーは外交というものをしたことがありませんし」


 ムルカの抱える不安に対し、司祭が言葉を掛ける。


「あなた方は直に帝国と交戦したことで、あなた方の話には重みが感じられるはず。それにミッツ教徒のあなた方が戦わないといけない事態にすでになっているという話をすれば、スールもいつまでも無関係とは思えないでしょう」

「我らの言葉1つが同盟の成否を分けるということですな」


 司祭はムルカの言葉に頷き、ムルカは強く返答をする。


「承知いたしました。このムルカ、命をとしてこの任を全うする所存であります」


 ムルカが強い決意を司祭に訴えているなか、教徒の1人が一同に声を掛ける。


「皆さま、馬車の準備が整いました」


 一同の前に現れたのは馬車であった。それも毛並みのきれいな白馬である。


 一同は大いに感心しており、エイムは思わず年相応の少女のごとくはしゃぐ。


「なんでしょう、ここまできれいなお馬さんは見たことがないのでちょっと感激しました。私達このお馬さんに引いてもらって旅をするんですよね?」


 エイムのはしゃっぎっぷりにルルーが微笑んで返答する。


「そうよ。彼も私達の旅の仲間よ、名前はループっていうの」

「そうなんですか。よろしくおねがいしますループ」


 馬の名はループといい、エイムも早速仲間の一員と認識したようだ。そんな時司祭から一同に言葉が告げられる。


「皆さまにミッツ様の加護がありますように」


 その言葉を聞いて一同は旅立つ。

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