応募作を使い回すことの是非

多くの新人賞に作品を応募した私ですが、『落選した作品を他の新人賞に送る』という経験もあります。


この『再投稿』については、賛否両論の議論があるかと思います。


「ひとつの作品をなるべく多くの出版社や審査員に見せて、複数の意見を貰うのは良いこと」

「他の新人賞では一次や二次落ちだったが、最終審査まで行ったり受賞したケースもある」

「いやいや、落ちた作品を手直しして他のところに送るくらいなら、新しい作品を書き上げるべき」

「再投稿した作品だなとバレることもある。その時点でマトモに審査してもらえなくなる」


などなど……。他にも様々な意見があるようです。



私個人の意見としては、「次々に新作を生み出せるなら再投稿はしない方が良い。ただ、複数の出版社に見せるのも悪くはない」という……どっちやねんって感じですね。


順を追って説明します。


まず私は、書き上げた作品を新人賞に応募し、落選しても修正を加えてから、新作と共に二作応募していたりもしました。

Aという新人賞では二次選考で落ちてしまったのに、Bという新人賞では最終選考まで進んで、あと一歩で書籍化できるところだった。そんな経験があります。

逆に、Bの新人賞では良いところまで行ったのに、Cの新人賞では一次審査すら通過できなかった、という経験もしました。


D新人賞の一次審査を通過した際、評価シートはオールA判定で「素晴らしい作品でした。シナリオのお手本のような出来栄えです」と絶賛され、「おっ、コレは行ったか!?」と期待しました。

しかし二次審査で落選し、評価シートはオールCで「もっと基本を勉強しましょう」と指摘され、流石に笑っちゃったこともあります。どっちやねん。


ここで言いたいのは、「新人賞の審査員や出版社は、テキトーな審査をしている!」という告発ではありません。

『読む人によって、その人の好みや読書経験で、作品の評価は変わるもの』という、至極当然の事実です。


中学生の頃に読んだ自己啓発本『夢をかなえるゾウ』(著作:水野敬也先生、飛鳥新社より2007年発刊)には、こんな一文があります。



「世の中に、どんだけぎょうさんの仕事がある思てんねん。しかも、その才能を判断する人、どんだけおる思てんねん。確かに、なかなか自分の才能は見出されんかもしれへん。けどな、それでも可能性を感じるところにどんどん応募したらええねん。そこでもし才能認められたら、人生なんてあっちゅう間に変わってまうで」



作中の趣旨とは少し違うかもしれませんが、とにかく小説やラノベにおいても、作品の面白さや作者の才能を評価する人は、世の中にたくさん存在します。

なのに、ひとつの新人賞で落選したからといって、それで『どこに出しても評価されない作品』になるとは限りません。


超ヒット漫画『進撃の巨人』の作者である諌山創先生も、集英社に漫画原稿を持ち込んだ際に「ジャンプらしい作品を持ってこい」と言われたのは有名なエピソードです。

もし諌山先生がそこで「ジャンプ編集部からああ言われたし、自分には漫画を描く才能がないんだ」と諦めていたら、進撃の巨人は誕生しなかったことでしょう。


ですので、たった一人か二人の審査員に評価を下されても、それで『作品の絶対的な価値』は決まりません。

ひとつの小説投稿サイトで人気が出ないからといって、どこに出しても誰に見せても評価されない、とは限りません。


故に、私は新人賞へ投稿した応募作の再利用――もっと言うと『なるべく多くの人に作品を読んでもらい、評価してもらう』ことは推奨します。


ただ勘違いして欲しくないのは、どこの新人賞に送っても一次や二次審査落ちで、具体的に「ココが短所です」と言われているのに「いや、それでもきっと、評価してくれる人がどこかにいるはず……!」と、何年も同じ作品に固執してしまうのは良くないと思います。というかダメです。

そんなことをする暇があるなら、新しい作品を書いた方が良いと思います。



新人賞について語ってきましたが、Web上で、小説投稿サイトで人気を集めてから書籍化するのも、デビューを目指す方にはオススメです。

その点について、次は持論を展開していこうと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る