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エリー.ファー

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 変わらずに生きていくことができるなら誰だってそうするだろう。

 私にとっても、あなたにとってもそれは望みに決まっている。

 大切にしておくべきなのは、過去だ。現実でも現在でもない。とりつかれて生きることこそが、私たちにとっての正義なのだ。

 過去に首を絞められても、そのまま殺されることになっても、命が潰えても。私たちは幸せを感じられるようにできている。

 重要なことこそ、言葉にはしない。過去にもない。けれど、過去から学ばなければ私たちは、どこにもいけないのだ。

 現在も、未来も過去の上にある。

 しかし、その現在と未来の上に過去ができあがる。

 私たちは、過ぎ去った現在を過去と呼び、未来を過去と呼び、そして、積み重なった経験によって、自分の時間の再解釈を始める。一切合切のしがらみを、一つの方法として再定義するのである。これが、私たちが過去と共に生きていることの最大、そして最も良質な証拠であると言える。

 私は、自分を失うことを恐れている。

 個性が亡くなる、というようなありきたりな悩みではない。

 間違えてはならないのだ。

 私たちは私たちから逃れることができない。

 これもまた過去による呪縛と言える。

 解き放たれることを望む大人は多く、子どもたちは皆、それらに縛られることを望んでいる。

 文化も文明も、歴史も、言葉も、人生も、コンテンツも、音も、静寂も、猫も、犬も、木も、空も、風も、地球も、数字も、時間も、完全なる感情から始まる、自分自身を放棄する快楽に溺れるべきだと示している。

 それが、私たちの望むべき道である。

 大切に抱えて、どれだけ時間をかけたか分からない、その丁寧さをすべて捨ててしまう。

 論理もそうではないか。いつか、壊すために組み立てるのだ。綺麗になくなって残骸くらいしか見つからない。そうなってから、ようやく論理に自分の考えが乗り移り、何かの解釈に使えるようになる。

 私たちは、壊すことで、失うことで、消え失せたものの香りを味わうことによって、自分を作り出すようにできている。

 過去を知ろうと、そう思うようにできている。

 公園の近くを通った時に、子どもたちの声が聞こえた。何人かいると思ったのに、近づくと影だけが地面に張り付いていて、実体はどこを探しても一切見つからなかった。

 寂しくなってしまった。

 孤独がなんたるかを知ってしまったのである。

 数えきれないほどの、自分の経験を凌駕する現在、そして、それが過去になる瞬間をも味わってしまう。

 そう。

 私はその数年後、公園に来ていたのだ。

 もう、影だけの子どもたちはいなかった。

 重要ではない。

 私は、黒く塗りつぶしてしまった。自分の視界を丸く整えて捨ててしまおうとした。

 できなかった。

 単純なことである。

 私には過去が大切に思えたからだ。その行動も過去があってのことなのだと瞬時に理解できたからだ。

 物語は続いている。これも連綿とした因縁である。合わせ鏡のようにして、失ってこそ理解できるようになる、一生分の経験値である。


「何か、ここに落としたのですか」

「あぁ、落としたような気もするのですが、分からないのです」

「そうですか」

「でも、まだ探そうと思います」

「見つからないかもしれませんよ」

「見つけたくはないのです。探したいのです」

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