29話 1億5000万年の重み。
29話 1億5000万年の重み。
3523万年経過。
『よし、オズマサクヤ、召喚成功』
『これで……現状、召喚できるようになった神獣は……【カースソルジャー】、【ソラル】、【レゼナウン】、【ジェネラル・スファギ】、【キングスケアクロウ】、【ラピラピナウ】、【夜空馬(やくば)】、【メルトゼウス】、【極羅(きめら)】【ガチャピエロ】、【マリオネット・シュバリエ】、【界介(かいすけ)】、【モキュ】、【オズマサクヤ】……』
『んー、バリエーションだけは豊かになったけど……んー』
『カースソルジャー以外は、どれも、ちょっと、俺の戦闘スタイルと合わない感じだなぁ』
『つぅか、そろそろ、もっと上位の神獣を召喚したいんだけど……』
『……あー、無理だな……今の俺だと、上位神獣は、不可能……』
『……【聖なる死神セイバーリッチ】とか【究極超天使クスオテンドー】か、だいぶ強そうだから、召喚したいんだけどなぁ……』
一日、一日を、しっかりと踏みしめながら、
センは、着実に強くなっていった。
たゆむことなく、毎日、毎日、
折れることなく、バカみたいに、
時々、心を病みながらも、
それでも、必死になって、
『確かな意味のある一日』を積み重ねていく。
――そうやって、センは、
5000万年目を迎える。
「まだ、折り返し地点かよ、畜生ぉおおおおおおおお! あと5000万年だとぉおお?! 長ぇえよ、ド畜生ぉおおおおおおお!」
何年経っても、
『一日の長さ』は変わらない。
『一日の苦しさ』に変化などみじんもない。
『慣れる』ことはあっても、『辛さが軽くなること』は決してない。
『ジャネーの法則』によると、『時間の過ぎる速さ』は『年齢に比例』して加速する。
『10歳の時は一日が長く感じる』が『80歳の時は一日が一瞬に感じる』というもの。
――ここで問題になってくるのは、ジャネーの法則は肉体年齢にのみあてはまる法則であり、精神年齢に、この法則が適応されることはないということ。
センの肉体年齢は、ゲートの中にいる間、ずっと『3歳』のまま。
つまり、『一日の長さ』に対する体感時間は『おそろしく長い』のである。
だから、ずっと、ずっと、同じように苦しい。
「前回の1億年の時も……5000万年目に、まったく同じことを叫んだ気がする……」
1億5000万年という、えげつない『永き』を生きてきたことで、
戦闘能力だけではなく『精神面』の方も大きく成長しているはずなのに、
『苦しさ』に対する『感情の精度』は大差ない。
「……あと、5000万年がんばって、なんとか外に出たとしても……『現実の翌日』がくれば、また1億年……うぉぇ……」
『この事実』が頭の中をよぎるたび、
まるで『脳が炸裂したみたい』に、
強い嘔吐(おうと)と頭痛にみまわれる。
「じ、地獄すぎる……もう、いっそ、世界、滅んでくれねぇかな……」
その願いは、『本気の想い』の一つ。
もう、いっそ、全部、木っ端みじんに吹っ飛んでほしい。
その方が、明らかに楽だ――と、マジで思う。
けれど、
「……ちぃ……くっ……」
そんなことを考えるたび、
シューリの顔が頭の中でチラつく。
無数の想いが、頭の中でグルグルとめぐって、
だから、結局のところ、
「……絶対に……死なせねぇ……」
そんな結論に落ち着く。
どうしても譲れない想い。
どうあがいても消えてくれない『ウザすぎる恋心』が、
センの命を、世界に縛り付けて離さない。
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