第10話 弟
先生とコイツを鉢合わせさせたくない。
俺はどうすれば先生を守れるか頭の中で考えを思い巡らせた。
「へぇ、美人だね。義兄さんの彼氏?」
「あ」
「歯医者だよ」
先生の声を遮って俺はきつい口調で言い捨てた。
背後で先生が固まった気配を感じた。
けど先生が和哉に絡まれないように、話に少しでも早くキリをつけたかった。
俺はただ、先生が誤解して傷ついていないことを願っていた。
「ああ、先生か。
タケルの弟の和哉です」
「歯科医の長谷川です」
先生は俺の様子から何かを感じとってくれたようで、普段の落ち着いた歯医者の顔で返答した。
皮肉なことだけど、先生が今までの経験から人付き合いに用心深いことに助けられた。
和哉はふっとため息をつくと、肩をすくめて笑った。
「義兄さん。
感動の再会なのに義兄さんがピリピリしてるから、歯医者さんにまで警戒されてるじゃん」
「用件は何だ」
俺が家を出てから何年もたつのに、今さらなんだって言うんだ。
「あまりに俺を避けるから、何か勘違いしてるのかと思ってさ」
「勘違い?」
「俺は義兄さんを嫌いなわけじゃないよ。
家に帰っておいでよ。
皆待ってるから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます