第0話 運命は良くも悪くも変わるもの
ある寒い日のことだった。
雪は降るし、風は
それでも暴力的すぎる真っ白な世界を、少女と少年は必死に進んだ。
固く手を
何よりも、決して
「ねぇ、こっちであってるよね?」
「あってる」
「でも、何も見えないよ」
「
「そうね。早くジーンに薬を買ってあげなきゃ」
しかし不幸だったのは、やっとの思いで
どれだけ店の
このやるせなさに、少年の心が先に折れた。実は彼自身も最近
それでも少女を心配して、彼は
けれど。
「エリク、しっかりして、エリク!」
彼の
やはり
「エリク……っ」
一歩一歩、背中の重みに倒れないように、しっかりと雪の積もった地面を
やがて、そんな少女にも限界が来て、足の動きが
「だ、れかっ」
──
声にならなかった
「大丈夫ですか!?」
天使が──吹き
それを最後に、少女は意識を手放した。
あの日、少女と少年を助けてくれたのは、その地の領主の
よく養護院に
それから数年。少女と少年は
しかし少女が
大切な二人が幸せそうな姿を見て、少女も
何者かに、屋敷を
これは、よくある恋物語。
身分
大丈夫、負けないからと、少年は約束するけれど。
彼女は何かを
『たとえこの先何があっても、私はずっと、あなたを愛しています』
そう言って、彼を送り出したのだった。
● ● ●
「──そ・れ・が! なーんでこんなことになってんの!?」
さらさらの金の
「知らないわよ。そういうことは私に
「訊けるわけないだろ!」
気安い会話を
なんの因果か、前世で
(こういうのを
エリアナはため息をつく。
目の前で
幼い
彼は、彼女は、前世で共に養護院で育ち、共に散った、
そして互いに記憶があることを、二人は知った。
その喜びようといったら
喜んで、同時に彼は期待した。前世で恋人だった〝彼女〟も、もしかして──。
が、現実はそう甘くない。
「ほんと、笑うわよねー。まさかシルヴィア様が男に生まれ変わってるなんて。しかも私の護衛騎士よ。
「知ってるよ! じゃなきゃ君を任せられないからね!」
その言葉にドキリとする。なんて心臓に悪いのだろう。彼はたまにそうやって、エリアナが期待するようなことをさらりと言う。
「シルヴィ……ああシルヴィ! そんなに俺との再会が
こんな泣き言はしょっちゅうで、エリアナはもう傷つくよりも
口元を
「筋肉のついたシルヴィなんてシルヴィじゃない! こんな人生、あんまりだ!」
彼の最後の言葉には、さしものエリアナも深く頷いた。
そう、あんまりだ。
また同じ男に失恋する、わかりきった人生なんて。
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