炎の見る夢、夜の朝
海津木 香露
祭祀
だんだんだん、周りを囲む者たちが思い思いに足を踏み鳴らす。
どんどんどん、地面が揺れて、低い唸り声が重なっていく。
だんだんだん、まなざしは中央に立つソルタに注がれている。
ばらばらに踏み鳴らされていた足の動きはいつしかそろい、どん、どん、と大地が揺れる。揺れに合わせて拍を取り、唇から放たれていた音のうねりは意味のある言葉としてソルタの背中を押す。
炎よ、夜を退けたまえ
炎よ、夜を退けたまえ
一歩踏み出し、足を大地にたたきつける。揺れに合わせて伸び上がり縮み、ぐるひと回って飛び上がる。心のままに、激しく、燃え上がる
やがてその苦しさの先、唐突に訪れる眩しい世界をソルタは待っている。
額から流れこめかみをたどり顎を伝い落ちる汗の一滴、首に張り付く髪の一筋、腕を擦る袖の軽さ、舞い上がった砂の一粒が脛を叩くその感覚。体のすべてがくっきりと知覚され、
息を吸い、息を吐き、指の先が、髪の先が、つま先がほどけていくのを感じる。ぱちぱちと耳の奥ではじける、炎の音を聞く。吐く息が熱く喉が焼け付き、血管を流れる血液は炎となって全身を焼いていく。体を低く沈め足で強く地を蹴って伸び上がる。飛び上がって、そして、高く舞い上がり広がっていく。そこに己の体はなく、ただ熱と光として、夜を退けるものとして、どこまでも、どこまでも飛んでいける。迫る夜を押し返し、熱を与え、何よりも希望を与える光として、どこまでも。
ソルタは炎であり、炎は夜を退けるものである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます