第39話 理由を教えて
扉をノックした後、黒川は西塔先生の部屋に入っていった。
デスクに向かっていた西塔先生が振り返り、黒川の顔を見るなり、露骨に嫌そうな顔をした。
「西塔先生、今日はお話を伺いに来ました。」
黒川は、笑顔で話し掛けた。
「確か君は、病院への立ち入りを禁止されているはずだが、なぜ入って来ているんだ。」
「それが、どうしても先生にお伺いしなければいけない事があって参上致しました。
先生、桜井会長のカルテを見せていただけませんか?」
「カルテ!?
それを部外者で家族でもない君に、見せられる訳がないだろう。」
「そうですか、分かりました。
では、まずこちらの薬の成分分析表をご覧頂いてもよろしいですか?」
黒川は、持ってきた書類を西塔先生に渡した。
黒川は、書類に目を通している西塔先生の顔色が変わったのを確認していた。
「これが、何か…。」
西塔先生は、動揺を隠す様にしながら黒川に話し掛けて来ていた。
「さすがは、西塔先生。
書類を見ただけでも、どうやらピンと来ているようですね。」
黒川が言った。
「君は、何を言っているのかな?
僕は忙しいんだ…。」
西塔先生は、黒川と目線を合わせないように、また机の方を向こうとした。
「そうですか、じゃあ私からご説明させて頂きます。」
黒川がそう言って、西塔先生の動きを制した。
「これは、桜井会長の部屋に残っていた薬の成分分析表です。
その表を見たら、誰でも不思議だと思いますよね。
丁度真ん中の列の薬一つだけが、他の薬とは異なる成分が含まれていたんですよ。
ちなみに、その加わっていた成分と言うのが『クアゼパム』。
この成分は、長時間型の睡眠薬の成分として有名なんだそうですね。
不眠症の治療として用いられる薬の成分が、なぜ含まれていたのでしょう。
ちなみに、その隣の薬は既に飲まれていました。
順序良く飲まれていた様子から、その薬を飲んだ翌朝に、会長は倒れているという事が分かります。
もし会長がその日飲んだ薬にも、同じ成分が含まれていたのではないかと考えたとしたら…。
西塔先生は、ずっと桜井家の主治医をされているそうですね。
では、なぜこのような薬を処方したのか、
黒川が言った。
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