第38話 黒川と青野 3

 「出ました!課長のニヤリ顔。


  腹に一物あるその笑顔が出たって事は、もしも失敗したら、本当に左遷させるって事だったんじゃないですか。」

 青野が驚くように言った。



 「さすが青野、よく気が付いたな。

  確かにそうだったらしいが、まぁそう言うなって。


  あの当時の状況で、俺が病院へ行く事を許可してくれた『課長の器のでかさ』だと俺は感動していたんだぞ。」



 「黒川さんのその純朴さ、僕は長所だと思います。」



 「青野、俺をからかうな。」

 黒川が楽しそうに答えた。



 「からかっていませんよ。


  僕はいたって真面目です。」

 青野も真面目腐った顔をして答えてから、笑った。



 「ははは、青野いい奴だなお前。




  …悪い。

  ちょっくらトイレに行ってくるわ。」

 そう言うと、黒川は席を立った。




 「俺がいなくなって、寂しくて泣くなよ。」

 黒川はクルリと振り返って、青野を見ながら決め顔で言った。


 「はい、はい、泣きませんよ。頑張って耐えています。


だから、早く戻って来て続きを聞かせて下さいね。」

 青野は笑いながら、手をパタパタとして、早く行って来なさいと黒川を送り出した。


「わははは…、おう!任せとけ。」

黒川は上機嫌で歩いて行った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る