第14話 『魔女』たちの夜、女子会2
夕飯の食べ過ぎで動けなくなった
「うーーーん、もう食べられないよ〜」
「もう、智優ちゃん。欲張って食べ過ぎるから……」
「だって、栞ちゃん家の唐揚げ、
「お母さん、智優ちゃんが食べるだろうって、いっぱい揚げたんだよ!」
「うーー、
「ほんと栞ちゃん
「ありがとう、詩芙音ちゃん。今度はうちに遊びに来て!そうしたら温かいうちに食べられるからさ」
「うん!でも私は何も……
そうだ!お父さんに教えて
「いいよ〜、気を
「
「!!!」
――夕食後、詩芙音の部屋
部屋に入り、まったりとする二人。
今度は今まで休んでいた智優が
智優と栞は旅行カバンを開いてオススメのお菓子、マンガ、ゲームを取り出し、テーブルに並べていく。
意外にも栞はジャンクなお菓子が好きなようでポテトチップス、きのこの山、
一方、智優のオススメは……
「智優ちゃん、例のマンガ読む?」
「あー、『マルガレッタ』ね!?読む読む!」
ちょっとだけ大人の少女マンガが多い『マルガレッタ』の6月号を開くと最初はバツが悪そうにモニュモニュしながら読んでいた智優だったが、しばらくして
「智優ちゃん、お風呂とシャワー、どっちが良い??」
「……」
「ダメだ、返事がないよ」
「普段、お兄さんの少年マンガばっかり読んでるから
「
「夢中になると周りが見えなくなる王子様、カワイイ」
「だね。カッコ良いけど、カワイイ王子様」
「最強じゃない?」
「うん、最高!!」
智優から何も反応が無いことを良いことに勝手なことを云い合う二人だった。
「でもさ、智優ちゃんって。意外と……すると可愛いと思うんだよね」
「それは思う!だって素材が良いもの」
「うーん、一度……させてみたい!」
「じゃあ、こういうのはどう?」
『ロジックの魔女』と魔女のごとき
「にゃーーーん」
(そら、ボンヤリしておるではないか)
頭上から聞こえる黒猫ロムの鳴き声にも気付かず、ツッコミ返しを忘れる智優だった。
無言でマンガに没頭する智優をほったらかして女子トークに盛り上がる栞と詩芙音。やがて二人はシャワーを浴び終わりパジャマに着替え、夜更しの準備は万端。
「よくさ、きのこの山派とたけのこの里派が分かれてどっちが美味しいって議論するよね?」
「するする!」
「美味しければどっちでも良いって思っちゃう」
「だよね〜。甘くて美味しければどちらも一緒!」
ケタケタ笑う二人の
「甘ければ好物。
きのこの山は甘い。故に好物!」
「たけのこの里は甘い、故に好物!」
「「だったら同じ!!」」
あの事件以来、すっかり仲良しになった栞と詩芙音。元々、女子力の高い二人は波長を合わせれば向かう所敵なしの親友となっていったのだ。
とはいっても手放しに波長が合うわけは無く、波長を合わせるキッカケが必要。そのキッカケがみんなの王子様キャラ、智優だった。
「ね、ねぇ!智優ちゃんが泣いてるよ!!」
「え!?そんなに??」
涙で
「う、うるさいな〜。良いところなんだから水を差さないでよ〜。えぐえぐ」
目から
「ねえ、智優ちゃん。こんなことを云うのはアレだけどヒドイ顔になってるからシャワーを浴びて顔を洗ってきたら?」
「えっ?シャワー??」
「そう、シャワー。私も栞ちゃんも先に浴びちゃったから後は智優ちゃんだけだよ〜」
「し、知らぬ間に置いてきぼり……」
「あは☆
私たちのこと無視して周りが見えないくらい独りで夢中になっている方が悪いんだよ」
「ひ、ヒドイ……」
――智優がシャワーを浴びた後、
再び詩芙音ルーム
「ねえ、智優ちゃん!」
「はー、さっぱりした〜。良いお湯加減でした!」
「ねえ、智優ちゃん!!」
「え?あれ?何々??」
「女子会って可愛いパジャマが必須なんだよ……」
だぶだぶのTシャツに灰色のスウェットを
「えー、このTシャツ可愛いでしょ!?『ご飯』の絵に『パン』のロゴ文字。間違ってるじゃん!ぷぷぷ」
「……ダメだ。期待しちゃダメだ。女子会の雰囲気が台無し」
「まあまあ、気長に行こうよ栞ちゃん。夜は長いよ?」
満面のドヤ顔で変なTシャツの自慢する智優の横にパステルカラーに彩られたパジャマで首を横に振る栞と、耳付きフードを被ると猫又に化けられるパジャマの詩芙音がいたのだった。
「ねえ、みんなでできるゲームをやろうよ!」
「やるやる!マリカー?スマブラ?」
「もう!詩芙音ちゃん、ゲーマーだからテレビゲームだと勝負にならないじゃん。だからトランプにしておこうよ」
「いいね!やろうやろう!私、テレビゲーム以外も得意だよ」
詩芙音ちゃんの暗い
最初のゲームは智優の提案に従ってスピードとなった。しかしながら
「よし、これでラスト!」
「えー、また智優ちゃんが勝っちゃったじゃん……」
「そうだよ〜、手加減できないの??」
「手加減できなくてゴメンね、ゴメンね〜」
……ふっ!☆
……あは!☆
「ねえ、智優ちゃん。そろそろゲームを変えようよ。そうね〜、シンプルにババ抜きなんてどう?」
「イイネ、イイネ!ババ抜きだろうとジジ抜きだろうと何でもやるよ!!」
(ふむ。ボンヤリ子が調子に乗っておるな。ここらで何か起きるのかの?)
――場風の変化に気付かない智優
「いやー、ババ抜きも強いね、智優ちゃん」
「でしょでしょ?トランプだったら任せてよ!」
「うーん。このままじゃ面白くないから
「えー、良いけど私勝っちゃうよー」
軽く
「あと5回勝負して負けた人が1回だけ何でも云うこと聞くの。何でもだよ〜」
「イイネ、イイネ!何してもらおうかな」
「「じゃあ、勝負だ!」」
1回、2回と勝負が進むにつれて徐々に顔が青くなる智優。それまで勝てていた勝負が全く勝てないのだ。
「お、おかしい……
ふ、二人とも強過ぎない??
私のババが動かないんだけど……」
「偶然、偶然!」
「偶然〜」
「ひーん……」
勝敗が決まる頃にはすっかり
「じゃあ、敗者の智優ちゃんには〜」
「罰として女装で登校してもらいまーす!もちろん、コーデは私たちに任せてね!」
「ひぃーーーっ!!」
ニコニコ顔の詩芙音と栞、そして真っ青な顔で
――二人が寝た後、日付が変わった深夜
野伊間家2階のテラスに置かれたテーブルには真っ赤なワインが注がれたグラス。背もたれの高い椅子に座り長い脚を組み、夜空を
真っ直ぐに伸びた髪は床に触れるくらい長く、月の明かりに
グラスを持ち上げワインを飲み干すと
「寝ないのですか、ロム
「いやだわ、シフォン。
「失礼。今は執務中の姿かと思い」
昼間と異なり
向かい合って椅子に座り、黙って月を眺める二人の魔女たち。薄いはずのオモテの世界のマナがテーブル付近に集まってきて
「正直云って大ハプニングだったわ」
「私と智優ちゃんが融合したことでしょうか?」
「ええ。予想もしていなかったわ」
「新しいグリモワールが創られる時、ハプニングが
何か云いかけた詩芙音の言葉を
「先ほど『フリジアン』第1階位の魔女、メム卿から連絡がありました」
「?」
「『フリジアン』第7階位の魔女、ミルがこちらに向かっているそうです」
「なんですって!?」
「なんでも『シフォン姉さまの手助けをする!』のだとか。仲良くやって下さいね」
「ええい、魔力不足のこの時に!」
「ふふふっ、仲良きかな。ミルの魔力を注ぎ込まれて上書きされないように気を付けることね」
大きく舌打ちをするシフォンを無視するかのように
(くっくっく!そうだ!!
グリモワールの創出にイレギュラーは憑き物なのだ。何千回、何万回と繰り返しても思い通りになった試しがないわ……)
ふと床に落ちた♣のJのカードを見る。
(このカードの
ロムは過去を
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