第7話 瀕死のわたし、そして邂逅
そして一瞬の出来事の少し前。
足を
「今晩の回、敵の新しいメカに負けるんだって絶対!角生えてて片目で足が無いじゃん、ヤバいって!」
「でもよー、ライバルは先週、ニュースキルに
「強いんだって!新しいメカ、有線式でもオールレンジ攻撃だぜ!!」
「最終回、近いのに一体どうなるんだろな!?」
アニメの話だろうか?男の子たちが
「つっ!」
「
「痛みで上手く歩けないよ……
ゴメンね、ゆっくりで。家に着くの遅くなっちゃうね」
「いいよー、全然急いでないから。それよりも智優ちゃんがちゃんと家に帰ることの方が大事!」
横を歩く黒猫のロムも同意しているのか、
「足の
その時は
「うん、分かったよ。だから心配しないで、智優ちゃん」
私を支える手に力が入り、笑顔で答えてくれる。
友だちに
まるで映画のワンシーンのような光景ってあるもんだな〜。あんな大きな車に
そんなヒーローはいない!!
気付くと私は道路に飛び出し、男の子の
そしてカッコよく歩道に戻るはずが足の痛みで転び、そのまま私は……
空は青く、地面は赤く、私は体温を失いつつあった。
本当は叫びたくなるくらい
男の子の無事を確かめようと視線を水平にしようとしたら私の足のつま先と目があった。今朝、
呼吸をしようとするとプールで
がっ、はっ!げぼっ!はっ、はっ、はっ!
それでも最後の力を振り
「ああ。私の、人生、って、何、だっ、た、んだ、ろう……」
去年、亡くなったおじいちゃんの顔を思い出した。いつも笑って遊んでくれたおじいちゃん。最後は眠るように死んでいった。私は今、おじいちゃんを心底、
空は綺麗だった。
今日は雲ひとつない晴れ。
透き通るような水色が果てなく続いている。
今日が晴れた日で良かった。
視界の端に泣きわめく男の子と詩芙音ちゃんの冷静な顔が見えた。男の子の無事が確認できると自分の状況には構わず、本当に良かったと思った。でも……
「し、ふ、ぉ、ん、ちゃん、よか、った……
で、も、私、死に、た、く、ない、ょ……」
そう云い終える前に目の前に光のカケラが降り始め、急速に意識は
私の手を握り締めて詩芙音ちゃんは云う。
「分かったわ。先ずはあなたの……が……を離れる前に……から分離して『
智優ちゃん、良い?気を確かに持って!
『緑の光』を見つけたら意識を集中して来て。絶対に『あちら』を
私は詩芙音ちゃんが何を云っているか分からず腹を立てたけど伝わったかな?
ああ、詩芙音ちゃんの手、温かいな……
「詩芙音、すぐに『変数』の準備をするぞ!」
「分かったわ。頼んだよ、ロム」
あれ?おかしいな。猫なのにロムがしゃべっている気がするぞ。
そしてブツンという静かな音を最後に完全に意識を失った。
――まだ私が低学年の頃っぽい風景
「……ちーちゃん、おかえりー」
小学校から帰ると、おじいちゃんがおかえりなさいと云ってくれる。用意されたおやつを食べながら、おじいちゃんと一緒に時代劇を観るのが日課だった
「おじいちゃん。ただいまー。
今日ねー、新しい友だちができたんだよ」
「ほー、そりゃ良かったね。仲良くできそうかい?」
「うーん。見た目は変わってるけど話しやすいから仲良くできるかな」
「うんうん。ちーちゃんは優しいからきっと好きになるよ」
「えへへ」
おじいちゃんの笑顔は優しく、そんな笑顔に
「ねー、じいちゃん。ちゆね。ラブレターをもらったの」
「そりゃめでたい!良かったじゃないか!」
「うん。でもね、ちゆ、どーしていいか分からないんだ〜」
「お返事のことかな?」
「うん」
「ラブレターをくれた子のこと、好きなのかな?」
「ちゆ、まだそーゆーの分からなくて」
「じゃあ、分からないって答えなくちゃイケナイよ」
「それで良いのかな〜」
「少なくともラブレターを送った子はちーちゃんの返事を待っていると思うよ。だからちーちゃんは
「じいちゃん、ぎむって何?」
「ははは、すまんすまん。とにかくちーちゃんの素直な気持ちを伝えなさい」
「分かった!」
「おじいちゃん、私どうなるんだろ?やっぱり死ぬのかな?」
――気付くと6年生の私に変わっている。
「智優ちゃん、セカイは表と裏が在って
「表と裏?繋がっている?」
「表のセカイに在る存在が消えたとしても、完全に消えてしまうことは無くて裏のセカイでは存在し続けていると云えば分かるかな?」
「うーん、分かりづらいけど……」
おじいちゃんは理解に困っている私にニコニコ笑いながら優しく説明してくれる。
「死ぬという
「だとしても表のセカイからは消えるんだよね?」
「そうだね。でもまた機会を得て裏のセカイから表のセカイに移ったりするよ。それがセカイの本質さ」
「ふーん。話は難しいけど今のセカイから死んでしまうことは変わりなさそうだね……」
おじいちゃんはお茶を飲みながら
「……智優ちゃん、お友達が待ってるよ」
「え?おじいちゃん、なんて云ったの?」
「さあ、『緑の光』が見えてくるよ」
気付くと私とおじいちゃんの前に大きなトビラが立っていた。木製で鉄線が
それはいつもおじいちゃんと時代劇を観ていたリビングのトビラでは無いものだった。
「そのトビラを開けたら外に飛び出しなさい。しばらく空間を泳げばお友達のところに
「うん」
「じいちゃんは当分、こっちにいるから困ったらまた遊びに来なさい」
私は
「ありがとう、じいちゃん!またね!」
「ああ、困ったらまたおいで。ばあちゃんによろしくな」
おじいちゃんに背を向けトビラのノブを回すと吸い込まれるように
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます