第27話:スローライフを楽しむ
帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年10月30日・ロディー視点
ロディー15歳
緑竜ジュダックと聳孤ハワードの回復はとても早かった。
30日ほどでほぼ元の身体に戻っていた。
ただ、魔力器官に蓄えられていた魔力は失われてしまっている。
完全に元の魔力量まで戻すには何十年も必要だそうだ。
人や亜人、妖精や魔族が相手ならそれでも十分勝てるのだが、エンシェントドラゴンや聖獣クラスが相手だと絶対に勝てないそうだ。
そこで2人には引き続き1の城を護ってもらう事にした。
ドワーフたちの半数にも1の城を護ってもらった。
俺の世界樹討伐に参加してもらうのは、残るドワーフたち半数にした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
もう絶対に逆らいません。
何があっても、誰に言われてもロディー様に逆らいません。
人間の領民も必ず護ります。
だからもう許してください!
お願いします」
俺に根の半分を耕され、このままでは倒れかねない世界樹が必死で謝っている。
以前は吾と尊大ない方をしていたのに、びっくりするくらい態度が違う。
「本当に悪いと思っているのなら、誠意を見せろ。
蓄えている魔力を使って、人間が住みやすい家を築け。
この前通告していたように、水分通導の半分を人間用の水道にしろ。
それに加えて、風呂とトイレも作れ。
お前の根茎や板根を使って、城壁だけでなく家も造るのだ!」
「はい、直ぐに造らせていただきます」
俺の注文通りに造らないと、即座に耕されると分かったのだろう。
失われた半数の根を急いで俺の命令通りに再生させていく。
新たに造られる世界樹城の本丸は巨大だ。
そもそも世界樹の幹の直径が200メートルもある。
世界樹を内包する本丸は1辺400メートルの正方形。
世界樹部分は使えないが、16町(16ヘクタール)もある。
その本丸を護る城壁は、高さ40メートルの板根でできている。
厚みは40メートルもあり、平坦な上部は強大な投石器が置けるほど幅広い。
そして本丸板根城壁の内壁は、人やドワーフが住むための木造住宅になっている。
早い話が地上40メートルのマンションになっている。
普通なら水や食糧を運ぶだけで大変なのだが、水は世界樹水道が完備されている。
食糧は、キノコならいくらでも壁や天井に生えている。
本丸の空き地は牧場や農園になっている。
俺に命令で地中深くにある根の上に肥沃な土が置かれているのだ。
その土の養分で穀物、野菜、果樹が育っている。
何年何十年籠城する事になっても食糧で困る事はない。
更に1辺800メートルの二ノ丸と城壁
1辺1600メートルの三ノ丸と城壁
三ノ丸の外には総構えと呼ばれる1辺は5キロメートルの果樹園と城壁
総構え内部の広さは25ヘーホーキロメートル(2500町)
江戸城の総構え1710町よりも遥かに広い。
そんな城を世界樹に命じて造らせた。
前代未聞の大城塞だが、俺の居城ではない。
俺が住むのはあくまでも1の城だ。
「褒美だ。
使った魔力と同じだけの肥料をくれてやる。
これからも俺の命令に従う限り肥料をくれてやる。
だが今度舐めた真似をしたら、交渉なしで耕すぞ!」
「はい、はい、はい、はい。
逆らいません、逆らいません、逆らいません」
「ジェイミー、もう気を抜いてもかまわないぞ」
世界樹を完全に支配下に置いたと確信できたので、ついて来てくれていたドワーフたちに酒を飲んでもいいという意味で言った。
「では、遠慮せずにやらせてもらおう。
戦勝祝いの酒は賜れないのかな?」
「今回は、俺1人で勝った戦いだからな……いや。
酒を振舞う気はなかったのだが、今ちょっとも思いついたから、造ってみよう。
ただし、初めて造るから美味いかどうか分からないぞ」
「酒が飲めるのなら何の文句もない。
それに、初めて造る酒が美味くないのは当然だ。
むしろ新しい酒の造り方を教えてもらえるだけでご褒美だ」
「そうか、だったら見ていてもらおうか。
ついて来てくれ」
俺はそう言って、世界樹討伐に参加してくれたドワーフたちを連れて、本丸城壁住宅から本丸広場に移動した。
そして広場に濃厚なメイプルシロップが大量の採れる樹と念じて魔力鍬を入れた。
見る見る多くの新芽が現われ、すくすくと育ち始めた。
そして魔力肥料の雨を降らせてサトウカエデの成長を助けた。
「世界樹!
これはメイプルシロップを出すサトウカエデの肥料だ。
肥料が欲しかったらお前もシロップを出してみろ!」
俺はこっそりと肥料を横取りしようとした世界樹を叱った。
だが、叱ると同時に、シロップを作るのなら肥料をやると謎かけもした。
俺が新たに創り出したサトウカエデは高さ50メートルの大木にまで育った。
サトウカエデに少し傷をつけて樹液を出させて集めた。
「世界樹、根を変化させてメイプルシロップを醸造させるための桶を作れ」
「はい!」
世界樹は直ぐに新しい根を地中からだして巨大な桶にした。
そこに大量のメイプルシロップを注ぎ、魔力櫂棒で混ぜた。
美味しい酒になれと念じながらよく混ぜた。
エンシェントエルフでも倒れるくらいの魔力量を使って酒にした。
「くっ、アルコール臭が強くて刺々している。
これは失敗だが、どうする?」
試飲して不味いと分かったので、返事は分かっているが、一応聞いてみた。
「数千年と生きてきたが、木の樹液で酒を造るなど始めて見たぞ!
このような酒を試飲しないドワーフはドワーフを名乗る資格がない!」
「試飲するというのなら、最初に樹液を舐めて原料を確認しろ」
「あ、そうだな、原料を確認しなければいけないな」
「あま?!」
「うおっ、何で木の樹液がこんなに甘いんだ?!」
「領主殿がメイプルシロップと言うのが不思議だったが、確かにシロップだ!」
ジェイミーがメイプルシロップを試飲する前に、他のドワーフたちが飲んでいた。
樹液を飲むようなマネは、これまで誰もしなかったのだろう。
あるいはこの世界に甘い樹液を出す樹木がなかったかだ。
「うむ、確かに刺々しいし匂いも悪い。
だがそれは、領主殿の酒を飲んだから言える事だ。
領主殿が造る酒を飲む前なら、この酒でも十分美味しい」
「おお、確かにそうだ」
「ああ、領主殿が造る酒を飲む前なら、これで十分満足していた」
「ああ、俺もその通りだと思う」
ドワーフたちが次々とジェイミーの言葉に賛同する。
「領主殿、この樹液を基に酒を造ってみてもいいか?」
「ああ、かまわないぞ。
ただ俺が手伝わないから、自分たちで醸造してもらう事になる。
醸造してから蒸留すれば、臭いや刺々しさがなくなるかもしれない。
蒸留では駄目でも、甕に入れて熟成させたら美味しくなるかもしれない」
「「「「「おおおお、醸造と熟成か?!」」」」」
ドワーフたちが初めて気付いたという表情を浮かべている。
「分かりました、醸造と熟成を試してみます」
ジェイミーも希望に満ちた表情を浮かべているが、他の果物で同じような挑戦をしているのだから、原材料が変わっただけだぞ。
少々不安を覚えたが、酒造りに関しては真面目なドワーフたちだから、世界樹城駐屯役に任せれば大丈夫だろう。
そう自分を納得させて1の城に戻った。
世界樹討伐に加わってくれたドワーフの半数が護衛についてくれた。
彼らがいてくれるから、魔力を使わずに1の城に戻れる。
今の俺なら誰が来ても負けないのだが、戦うとなると魔力を使ってしまう。
使うよりも溜まる方が遥かに多いとはいえ、魔力は無駄遣いしたくないのだ。
「よく戻られた、領主殿。
領主殿の留守に御用商人を名乗るサンマロと言う人間が来た。
事前に領主殿が言っていた通りの方法で交易をしたぞ」
緑竜ジュダックがにんまりと笑いながら報告してくれた。
意外と悪戯が好きなのか、あるいは人間を虐めるのが好きなのか?
まあ、俺にはどちらでもかまわない。
エンシェントドラゴンの姿でサンマロを脅かしてくれたのなら、サンマロが俺を裏切る事はなくなるだろう。
「用意しておいた砂糖と穀物、ドワーフワインとドワーフシールド、ドワーフ清酒とドワーフ火酒を定価で売ってくれたのだろう?
サンマロは約束していた以上の家畜を運んできていたのか?」
「ああ、輓馬の約束は5頭と聞いていたが10頭いた。
牛は10頭の約束が20頭いた。
山羊は20頭の約束が40頭。
羊は5頭の約束が10頭いた。
豚は25頭の約束が50頭いた。
鶏は200羽の約束が600羽いた」
他の家畜はまだ出産していないが、豚だけは逸早く出産した。
多産の豚は一気に100頭の子供を産んだ。
まだまだ増やす気だから、1頭も食べずに繁殖に回す。
肉が食べたければ、大森林や近くの森でいくらでも野獣が狩れる。
「それと人間も運んできていたぞ。
領主殿が言っていたように、そっちはドワーフと人族にまかせた」
「人数は覚えているか?」
「ああ、覚えているぞ。
年老いた女が61人と幼い子供が73人だ。
ドワーフと人族が飯を食わせ風呂に入れていた」
俺が1の城を離れて5日も過ぎていない。
果物も肉も新鮮な物がたくさん残っているはずだ。
俺のやり方を知っているドワーフや先住の寡婦は、急に大量の御馳走を食べさせて、新たに来た寡婦や孤児の胃腸に負担をかけたりしないだろう。
「分かった、後の事はドワーフと人族に聞く。
ジュダックとハワードには留守を護りきった褒美を渡そう。
とっておきの30年エイジング清酒だ」
俺はそう言うと、執務室に褒美用として置いてある酒甕を持ってきた。
2石甕だから、360リットルくらいある。
元の姿に戻ったジュダックとハワードには少な過ぎる量だが、人間に変化している時なら身体の3倍くらいだろう。
2人とも人間なら美丈夫や偉丈夫と言っていい身体をしている。
「では部屋でゆっくり飲ませてもらおう」
聳孤のハワードがよだれを垂らさんばかりの表情で2石甕を抱える。
自分の身体の3倍以上もある甕なのに、軽々と抱え上げている。
「俺も部屋で飲ませてもらおう」
緑竜ジュダックは実際によだれを垂れ流している。
そのよだれを拭おうともせず、2石甕を片手で持って部屋を出て行った。
この1カ月の間にジュダックとハワードは俺の造る酒の虜になっていた。
魔力でエイジングさせる前、新酒の清酒やワインですら飲んだ事のない、とてつもなく美味しい酒だそうだ。
その2人が、魔力でエイジングした酒まで飲んだのだ。
酒に合う、この世界になかった初めての料理を食べたのだ。
この世界でも貴重な黒トリュフどころか白トリュフまで大量に食べられたのだ。
魅了されるのも当然と言えば当然だろう。
「1度成長させたらずっと収穫できる果物をもっと創り出す心算だったが、サトウカエデからメイプルシロップが採れるのなら、圧搾の手間がかかる砂糖黍や砂糖大根の栽培を止めた方がいいか?
安定して高値で売れる砂糖大根製の砂糖は作り続けた方がいいのか?」
「ご領主様、塩の在庫が少なくなっております。
サンマロ様は次の取引までには必ず大量の塩を用意すると申されていましたが、それまで塩がもつとは断言できません」
サンマロの糞野郎、塩止めして俺に圧力をかける心算だったな。
緑竜のジュダックを恐れて、急いで塩を確保する心算だろうが、1度敵対しようとした相手を許すほど、俺は甘くない。
何時でも独自に塩を確保できる所を見せつけておくべきだな。
どうせなら色々と実験してみるか。
『ロディー騎士領』
領主:ロディー
家臣:エンシェントドワーフ・38人(ジェイミー、ナイル・ショーンなど)
:ハイドワーフ ・74人
:エルダードワーフ ・116人
:ドワーフ ・519人
家臣:人間 ・1人(アルフィン)
小作:人間男 ・24人
:人間女 ・24人
:人間子供 ・35人
:人間寡婦 ・114人
:人間孤児 ・132人
馬 :軍馬 ・1頭
:輓馬 ・20頭
:牛 ・58頭
:山羊 ・75頭
:羊 ・24頭
:豚 ・175頭
:鶏 ・1200羽
:走鳥 ・500羽
『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民 ・レベル8765
:自作農民・レベル8673
:開拓農民・レベル89669
:地主農民・レベル9899
:武装農民・レベル8765
付属スキル:耕種農業レベル8765
耕作 レベル4928
種蒔き レベル2594
品種改良レベル2594
農薬生産レベル3867
農薬散布レベル3867
選定 レベル5324
収穫 レベル 896
剣鉈術 レベル8765
戦斧術 レベル8765
:工芸農業レベル212
木工 レベル212
紡績 レベル212
織物 レベル322
:自作 レベル8673
燻製 レベル68
酒造 レベル8673
発酵 レベル8673
陶芸 レベル225
料理 レベル2942
:開拓 レベル66397
伐採 レベル5327
建築 レベル1293
石工 レベル 21
魔力生産レベル89669
魔力増幅レベル89669
:地主農民レベル9899
領民指導レベル9899
:武装農民レベル8765
剣術 レベル8765
槍術 レベル96
戦斧術 レベル8765
弓術 レベル195
石弓術 レベル9
拳術 レベル9
脚術 レベル9
柔術 レベル9
戦術 レベル9
馬術 レベル706
調教術 レベル706
一般スキル:生産術レベル2942
木工 レベル1293
絵画 レベル9
習字 レベル9
算術 レベル9
料理 レベル2942
刺繍 レベル9
裁縫 レベル32
大工 レベル1293
石工 レベル21
「基本能力」
HP:28493385
魔力:26194546
命力:20016837
筋力:2137145
体力:1924053
知性:1816972
精神:1733449
速力:1685694
器用:1257710
運 :1257710
魅力:1257710
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