第18話:奇襲

帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年5月20日・ロディー視点

ロディー15歳


「襲撃だ!

 エルフが襲ってきたぞ!」


 熟睡していたが、一瞬で目が覚めた。


「隠れろ、人間は地下室に隠れていろ!」


 前世から目覚めはよかったが、今日は特にいい。


「グオオオオオ、このブドウの木は絶対に傷つけさせん!」


 ドワーフ族の酒に対する執念には頭が下がる。

 三ノ丸にワインの原料になるブドウの木を大量に創り出した。

 そのブドウの木を護るために当番制で警備をしてくれている。

 そんなドワーフ族が、ブドウの木よりも先に人間に逃げるように言ってくれたのが妙にうれしい。


「エルフどもは素早い。

 しっかりと装備を整えて迎え討て!」


 ジェイミーが他のドワーフ族に注意しているようだ。

 ブドウの木が大事で、装備を疎かにして迎え討とうとした奴がいたのだろう。

 普段は鈍重と言えるような動きなのに、俺よりも早く飛び出すとはな。

 ジェイミーが俺用に造ってくれた甲冑はとんでもない逸品なのだが、長年使ってきた甲冑よりも装備するのに時間がかかってしまう。


「ブドウもリンゴもキュウイも、また創り出してやる!

 美味しい酒が飲みたいのなら、絶対に死ぬな。

 生き残ったらとびっきりの酒を飲ませてやる!」


 家の中から大声で言って聞かせてやった。


「「「「「ウォオオオオ」」」」」

「勝利の美酒は、とびっきりの酒だぞ!」

「勝ち戦の酒を浴びるほど飲めるぞ!」

「我らの酒造りの邪魔をしたエルフに目にもの見せてやれ」

「「「「「おう!」」」」」


 何とかジェイミー甲冑を装備した俺は、急いで家の外に出た。

 俺と同じように甲冑を装備したドワーフ族が続々と家から出てくる。

 面貌の奥に光る眼にはエルフに対する増悪と酒への欲望が満ちている。

 1番大きな家からアルフィンが顔を出している。


「アルフィン、騒ぎがおさまるまで地下室に隠れていろ。

 腐れ外道のエルフをぶち殺したら声を掛けてやる」


「はい、勝利をお祈りさせていただきます」


「ああ、俺たちの勝利を祈っていてくれ」


 俺はアルフィンが家の中に隠れるのを確かめて本丸城門に向かった。

 

「ヒィイイイイイン」


 城門を出て直ぐの所に愛馬アールヴァクが待ってくれていた。

 俺と一緒に戦う気満々である。

 普通の馬は臆病なのだが、愛馬はとても気が強くて獰猛だ。

 しかも俺と一緒に何かするのが大好きで、戦いも遊びだと思っている節がある。


「そうか、一緒に戦ってくれるのか、ありがとう」


 俺はそう愛馬に声をかけてヒラリと背に跨った。


「アールヴァク!」


 愛馬には拍車を入れて命じる必要などない。

 痛みなど与えなくても、脚と手綱で軽く指示してやれば全て分かってくれる。

 愛馬は俺の行きたいところに望んだ速さで向かってくれる。

 俺の愛馬は、大切な時に息が上がるような馬鹿な駆け方はしない。


「急げ、エルフに目にもの見せてやれ!」


 二ノ丸に新しく建てた酒蔵兼用の家からもドワーフ族が次々と出てくる。

 普通の甲冑は走るとガチャガチャと激しい音がする。

 だがドワーフ族が造った甲冑の音はすごく小さい。

 だが、わずかでも音がするようではまだまだ未熟なのだそうだ。

 ハイドワーフ以上が造った甲冑なら全く音がしないという。


「絶対に死ぬな!

 勝って生き残ったら、騎士殿が勝利の美酒を振舞ってくれるぞ!」


「「「「「ウォオオオオ」」」」」


 戦いの士気を上げるのが勝利後の酒と言うのは、ドワーフ族ならではだな。

 だが、それでかまわない。

 俺の大切な畑を荒らす腐れ外道のエルフをぶち殺してくれるのなら、浴びるほど酒を飲ませてやる!


「ここから先にはいかせんぞ、ルイーズ!」


 西の方から敵を咎めるドワーフの声が聞こえてきた。

 襲ってきたのは、あの傲慢エンシェントエルフ、ルイーズか!

 逆恨みで俺の命でも狙ってきたのだろう。


 だが、ドワーフ族が援軍に行こうとした東ではなく西にいるのか。

 どうやら単独攻撃ではなくエルフ族全体が襲ってきたようだな。

 いいだろ、エルフ族を皆殺しにしてやろうじゃないか。


「アールヴァク!」


 俺は愛馬に西の二ノ丸城門に向かうように指示した。

 東の二ノ丸城門に向かう前でよかった。

 戦いの雄叫びから判断すると、エルフの数が多いのは東側だろう。

 二ノ丸内には無力な人間たちが地下室に隠れている。

 西も東の手を抜く事はできない。


「お前たちはそのまま東門から三ノ丸に行け」


 俺はルイーズを詰問する声を聞いて東から西に向かい直そうとした者達に命じた。


「お前たちは三ノ丸に行かずに二ノ丸西城門を護れ。

 エルフは身が軽いのだろう?

 二ノ丸に入り込んだエルフを確実にぶち殺せ!」


「「「「「おう!」」」」」


 誰かの生命と財産を背負うのは俺には重すぎる。

 だから本当は小作人など受け入れたくはなかったが、俺が受け入れなければ、アズナブル商会の隠れ奴隷にされるか、国に差し出されて奴隷にされていた。

『窮鳥懐に入る時狩人も殺さず』ではないが、俺の家に助けを求めてやってきた者を見殺しにする強さは、俺にはない。


「アールヴァク」


 城門を出る時が1番危険だ。

 左右の死角から奇襲される可能性が高い。

 特にエルフ族が相手なら、弓射や風魔術の遠距離攻撃を警戒しなければいけない。

 なんと言っても、今回は奇襲を受けて愛馬に馬装をつけてやれていないのだ。


「ヒィイイイイイン」


 愛馬は危険を知らせてくれるが、俺は教えてもらう前に気がついていた。

 すでに敵が隠れている場所の特定も終わっている。

 問題は剣鉈術と戦斧術がエルフ族相手で使えるかだ。


「薄汚く下賤な人間、誇り高く高貴なエルフを愚弄した罰を受けよ!」


 黙って奇襲すればいいモノを、虚栄心が強すぎるのだろう。

 わざわざ姿を現した上に、口上までしてくれた。

 そんな無駄な時間を使っているから、馬鹿にしている人間の攻撃を喰らうのだよ!


 ギャッシュ!


 エンシェントエルフ、ルイーズの首が斬り飛ばされた音がする。

 いや、回転する戦斧に首が斬り飛ばされる音だけではない。

 他にも2本の戦斧と3本の剣鉈がルイーズの身体に突き刺さる。

 突き刺さっただけでなく、身体を貫き引き裂きズタボロにしていく。

 武術系レベルが2000を軽く超えているのは伊達ではない。


「エンシェントエルフのルイーズを討ち取ったぞ!」


 俺は素早く愛馬を駆って斬り飛ばされたルイーズの首を確保した。

 自分でも野蛮な行動だとは思うが、敵の首を確保するのが勝利の証だ。

 この点に関しては前世もこの世界も同じだ。


「「「「「ウォオオオオ」」」」」

「騎士殿!」

「勝ったぞ、勝利の美酒だぞ!」

「酒だ、酒だ、酒だ、酒を持ってこい!」


 ドワーフたちの意識が戦いから酒に移ってしまった。


「まだだ、まだエルフを皆殺しにしていない!

 攻撃してきたエルフを皆殺しにしろ。

 皆殺しにしたら好きなだけ浴びるほど酒を飲ませてやる!」


「殺せ、エルフを殺せ、皆殺しにしろ!」

「逃がすな、エルフを逃がすんじゃない!」

「やれ、やっちまえ、エルフは皆殺しだ!」

「「「「「ウォオオオオ」」」」」


 酒を褒美にしたら、近くにいたドワーフ族の目の色が変わった。

 さっき俺が酒で煽った時には近くにいなかったのだろう。

 夜警として三ノ丸を護っていてくれたドワーフか、逸早く援軍に駆けつけてくれたドワーフなのだろう。

 甲冑を装備していないドワーフもいるから間違いないだろう。


 ギャッシュ!


 俺はドワーフを煽りながら周囲の気配を探り続けていた。

 神与レベルが4000を軽く超えているからだろう。

 基本が農民系なのにもかかわらず、エルフ族が隠れている所が分かる。

 そこに向けて魔力で創った剣鉈と戦斧を叩き込む。

 投げつける必要などなく、その場にいきなり出現するのだ。


「この場は任せた。

 俺は他の場所を見てくる」


 この場で察知できたエルフ族37人を皆殺しにした。

 後は多くのエルフが陽動に攻め込んで来た東側の掃討だ。

 1番の強敵であるエンシェントエルフのルイーズは殺した。

 この場で殺した他のエルフの大半が普通種エルフだった。

 どうやらルイーズは大森林以外のエルフを集めてきたようだ。


「はい、この場の護りはお任せください」


 ここにいるドワーフ族の中で1番上位種なのだろう。

 甲冑を装備していないドワーフが自信に満ち顔で答えてくれた。

 こいつに任せておけば大丈夫だろう。


「アールヴァク」


 声をかけただけで愛馬が東に向かってくれる。

 少し進むだけで隠れているエルフの気配が感じられた。

 その場に剣鉈と戦斧を発現させてエルフ族をぶち殺した。

 とても嫌な予感がしたので、ステータスを確認してみた。


 またスキル表を大幅にいじってやがった!

 行き当たりばったりの出たとこ勝負でスキルをいじるんじゃない。

 上位職なんて最初は全然考えていなかっただろう。

 お前には誇りも矜持もないのか、創造神!


『ロディー騎士領』

領主:ロディー

家臣:エンシェントドワーフ・36人(ジェイミー、ナイル・ショーンなど)

  :ハイドワーフ    ・65人

  :エルダードワーフ  ・90人

  :ドワーフ      ・382人

家臣:人間        ・1人(アルフィン)

小作:人間        ・83人


『ロディー』

種族:ホモサピエンス

神与スキル:農民  ・レベル3212

     :自作農民・レベル1956

     :開拓農民・レベル7422

     :地主農民・レベル1219

     :武装農民・レベル3212

 付属スキル:耕種農業レベル2120

        耕作  レベル1463

        種蒔き レベル1384

        品種改良レベル1384

        農薬生産レベル899

        農薬散布レベル899

        選定  レベル2823

        収穫  レベル863

        剣鉈術 レベル3212

        戦斧術 レベル3212

      :工芸農業レベル212

        木工  レベル212

        紡績  レベル212

        織物  レベル212

      :開拓  レベル4223

        伐採  レベル2846

        建築  レベル1055

        石工  レベル 21

        魔力生産レベル7422

        魔力増幅レベル7422

      :自作  レベル2567

        燻製  レベル 68

        酒造  レベル2567

        発酵  レベル2567

        陶芸  レベル225

        料理  レベル796

      :地主農民レベル1219

        領民指導レベル1219

      :武装農民レベル3212

        剣術  レベル3212

        槍術  レベル9

        戦斧術 レベル3212

        弓術  レベル9

        石弓術 レベル9

        拳術  レベル9

        脚術  レベル9

        柔術  レベル9

        戦術  レベル9

        馬術  レベル95

        調教術 レベル95

 一般スキル:生産術レベル1055

        木工 レベル1055

        絵画 レベル9

        習字 レベル9

        算術 レベル9

        料理 レベル796

        刺繍 レベル9

        裁縫 レベル9

        大工 レベル1055

        石工 レベル 21


「基本能力」

HP: 574686

魔力:6817294

命力:3592517

筋力: 237525  

体力: 229372

知性: 197413 

精神: 193189

速力: 170210

器用: 170210

運 : 170210

魅力: 170210

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