第17話:武術系スキル

帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年5月20日・ロディー視点

ロディー15歳


 俺が目を背け続けていた現実が1つあった。

 それは、今までレベル9から上がらなかった武術系スキルだ。

 農民に武術系スキルは不要。

 なのに、剣鉈と戦斧のスキルがどんどん上昇していた。


 これまでは、戦術系スキルの剣と戦斧がレベル9のままなので気にしてなかった。

 農作業で必要だからあるだけで、対人戦には使えないと考えていた。

 それなのに、いきなり戦術系スキルの部分までレベルアップした。

 普通に考えれば『対人戦にも使用できるようにしてあげたよ』だからもっと御供えしてねと言う創造神からのメッセージだろう。


 そんな事をしてくれなくても、毎日タップリ御供えするよ!

 こんな事が公爵家に知られたら、家に戻されてしまう。

 無視する事も可能だが、無視したら弟妹たちの誰かに責任を押し付ける事になる。

 俺が堂々と当主に成る事ができたら、戦術系スキルを得られなかった弟妹を救う事ができると思うと、悩んでしまうのだ。


 まあ、その件についてはまだ考える時間がある。

 長弟のルキウスが神与の儀式を受けるのは来年の1月1日だ。

 それまで時間があるから、結論は先送りにしよう。

 日々増えて行くドワーフ族が戦力になるのなら、公爵家を継ぐことなくこの国の体制を変えられるかもしれない。


 それよりも早く確かめなければいけないのは、魔術スキルの方だ。

 これもとんでもない状況になっていた。

 今までは開拓の小項目だけに表示されていた魔力生産と魔力増幅が、何もなかった魔術系項目にも表示されるようになったのだ。


 それも、小項目だけに表示されたのではない。

 大項目のレベルにまで反映されているのだ。

 普通に考えれば、俺に魔術が使えるようになった証だろう。

 これも創造神からのもっと料理や酒を御供えしろというメッセージだろうが、嫌がらせとしか感じられない。


 武術系スキルと魔力スキルが対人戦にも使えるのか?

 それを確かめるには人間を傷つけないといけない。

 自分が危険にさらされているなら別だが、実験の為だけに誰かを傷つけるなんて、俺にはできない。

 どうせくれるのなら山賊と戦う前にくれ、創造神。


 まあ、絶対に相手が人間でなければいけない訳はないだろう。

 獣や魔獣が相手でも確認できるはずだ。

 剣や魔術が獣には使えても人間には使えないなんてことにはならないはずだ。

 農作業と醸造酒を休んで狩りに行くのもいいだろう。


「騎士殿、エールとワインについて確認しておきたいのだが、いいか?」


 ドワーフの中でも酒造りが上手い事で有名なショーンが話しかけてきた。


「なんだ、ショーン。

 酒造りに必要な事なら俺の許可なくやってもいいと言ったはずだが?」


「いや、いや、騎士殿に確認しないで勝手なことはできんよ。

 あれほど素晴らしい材料を無駄にする事は絶対に許されないからな」


 ショーンが厳しく酒造りを監視してくれているから、盗み飲みや原材料の浪費の心配が全くない。

 職人気質のドワーフ族は頑固だが、その道の名人にはとても敬意を払う。

 俺の酒造りは魔力やスキルを活用した物だが、それでも自分達が敵わない物を創る名人と敬意を払ってくれている。


「騎士殿が教えてくれた色々な酒造りなのだが、本当にドワーフ1人1人が自分の酒蔵を持って造っていいのか?」


「ああ、やれるのならかまわないぞ。

 それぞれが自分が美味いと思う味は違うだろう?

 だったら自分が1番美味しいと思う酒は自分で造るしかない」


「うむ、確かにその通りだな」


「ただ、あまりにも未熟な者に大切な原材料を使わせるのは問題だ。

 誰に許可を与えるかは、ドワーフ族で基準を決めてくれればいい。

 指導できる親方を決めて未熟な者を弟子にしてくれればいい」


「うむ、徒弟制で未熟者を鍛えるのが1番だな。

 ドワーフ族は鍛冶でも建築でも徒弟制でやってきた。

 それと、造った酒にそれぞれ名前を付けるというのはどういうことだ?」


「自分たちだけで飲むのなら別に名前などなくてもいい。

 だが酒は、この領地の大切な輸出品だ。

 出荷する樽ごとに味が違っては評判が悪くなってしまう。

 俺が造る大森林銘柄の清酒や火酒とは違う名前を付けてもらわないといけない。

 今ショーンが造っているワインにはショーンワインと名付けてくれると助かる」


「自分の名前を酒につけるだと?!

 恥ずかし過ぎるではないか!」


「恥ずかしいとは言うが、今ジェイミーが造っている火酒やナイルが造っている清酒にも名前を付けなければいけないのだぞ。

 いや、全員が色んな酒を造り始めるのだぞ。

 名前の候補などあっという間になくなるぞ。

 それに、鍛冶師は自分が打った剣に銘を入れるのではないか。

 それは自分の名前だろう?

 ドワーフ族の魂とも言うべき酒を造っておいて、自分の名を入れなくてどうする」


「……騎士殿の言う事は一理あるが……」


「それに、出来の悪い酒に自分の名をつけられないだろう?

 それは剣も同じなのではないか?」


「ああ、確かに、出来の悪い剣は叩き折ってしまうな。

 自分の名を刻んで世に出すなど恥さらしもいい所だ」


「だったら酒も同じでいいのではないか。

 自分で飲むだけでなく他人にも飲んでもらって自慢したいと思える酒だけを売る。

 それこそがドワーフの酒なのではないか」


「くっくっくっくっくっ、その通りだな。

 だが、そんな美味い酒を飲まずに売る事のできるドワーフがいるかどうか……

 売るとしたら出来の悪い酒になってしまうだろう」


「できの悪い酒を売るのなら、多くの酒をブレンドすればいい。

 その年にできた酒だという事を表示して、何か適当な名前を付ければいい。

 そうだな、まずい酒ならルイーズ火酒やルイーズ清酒と付ければいい」


「ギャッハハハハハ、それはいい、それは大賛成だ」


 普段マジメなショーンが大爆笑したのには驚いた。

 よほどルイーズの事が嫌いなのだろう。

 俺も嫌いだから気が合うな、ショーン。


「では騎士殿、自分たちが飲みたい酒以外は、ブレンドしてドワーフと関係ない名前を付けて売らせていただくのでいいか?」


「ああ、かまわないが、高く売れるようにしておいた方がいいぞ。

 俺の酒を飲みたいのなら、これからは全部買ってもらう事になるからな」


「……本当にもうこれまでのように飲ませていただけないのですか?」


「その条件で、多くの酒造りの方法を教えたはずだぞ」


「はい、確かにそう言う約束で教えていただきました。

 ですが、同じ原材料を使って味にこれだけ差が出るとは思ってもいませんでした」


 ショーンたちドワーフ族は、俺が作った穀物や果実を使えば、酒造りの技術に優れた自分たちならもっと美味しい酒を造れると思い込んでいた。

 少なくとも同等の美味しさの酒は造れると思っていた。

 だがドワーフ族の造った酒は、結局スキルと魔力で強引に創り出す俺の酒の足元にも及ばなかったのだ。


「今までとは違って、お前たちがとんでもない高値を付けた穀物や果物を大量に使って、自分たちで酒を造っているんだぞ。

 その代金はもちろん、酒造りのために使っている時間も俺に返していない。

 利子をつけろとは言わないが、全部払うのが当然ではないか?」


「騎士殿の申される通りです」


「だったら、今まで武具を売って俺の酒を買っていたように、自分たちで作った酒を売って借りを支払うだけでなく、酒も買うのが当然だろう。

 できるだけ高く売らないと借金が積み重なっていくぞ」


「結局、自分たちの名前を酒につけるしかないという事ですか?」


「ああ、どんな技術も、恥をかく事で奮起して上達すると俺は思っている」


「……今まで通り得意な物を作って売って騎士殿に酒を売ってもらうか、恥を重ねて技を磨き、騎士殿以上の酒を造れるようになるかですか?」


「ああ、そう言う事だな」


「皆に話して、それぞれどの道を選ぶか決めさせます」


「俺としては、俺を超える酒を造れる者が現れる事を期待している」


「皆にそう伝えます」


 ドワーフ族は頑固だから、これでドワーフ酒が大量に生産されるだろう。

 俺が造らなければいけない酒の量が格段に少なくなるはずだ。

 これで魔力を料理と酒にだけ使うだけの人生を選ばなくてすむ。


 城造りや農作業に追いまくられるのも直ぐ終わるはずだ。

 三ノ丸を囲む空堀と土塁と城壁を完成させさえすれば、中の広大な農地は獣や魔獣から護られた楽園になるはずだ。


 果樹や作物を魔力で無理矢理1日で収穫できるようにする必要もなくなる。

 それなりの肥料をやって、1年に1度収穫できるようになれば十分だ。

 創造神、これは振りじゃないからな!

 絶対に余計な事をするんじゃないぞ!


『ロディー騎士領』

領主:ロディー

家臣:エンシェントドワーフ・33人(ジェイミー、ナイル・ショーンなど)

  :ハイドワーフ    ・46人

  :エルダードワーフ  ・79人

  :ドワーフ      ・324人

家臣:人間        ・1人(アルフィン)

小作:人間        ・83人


『ロディー』

種族:ホモサピエンス

神与スキル:農民  ・レベル2120

     :自作農民・レベル1956

     :開拓農民・レベル4223

     :地主農民・レベル621

 付属スキル:耕種農業レベル2120

        耕作  レベル1161

        種蒔き レベル1088

        品種改良レベル1088

        農薬生産レベル889

        農薬散布レベル889

        選定  レベル1835

        収穫  レベル841

        剣鉈術 レベル2120

        戦斧術 レベル2120

      :工芸農業レベル212

        木工  レベル212

        紡績  レベル212

        織物  レベル212

      :開拓  レベル4223

        伐採  レベル1854

        建築  レベル852

        石工  レベル 21

        魔力生産レベル4223

        魔力増幅レベル4223

      :自作  レベル1956

        燻製  レベル 68

        酒造  レベル1956

        発酵  レベル1956

        陶芸  レベル225

        料理  レベル658

      :地主農民レベル621

        領民指導レベル621

 一般スキル:戦闘術レベル1295

        剣術 レベル1295

        槍術 レベル9

        戦斧術レベル1295

        弓術 レベル9

        石弓術レベル9

        拳術 レベル9

        脚術 レベル9

        柔術 レベル9

        戦術 レベル9

        馬術 レベル9

        調教術レベル9

      :魔術レベル4223

        魔力生産レベル4223

        魔力増幅レベル4223

      :生産術レベル9

        木工 レベル852

        絵画 レベル9

        習字 レベル9

        算術 レベル9

        料理 レベル658

        刺繍 レベル9

        裁縫 レベル9

        大工 レベル852

        石工 レベル 21


「基本能力」

HP: 257468

魔力:4681072

命力:2992451

筋力:  97523  

体力:  99375

知性:  97416 

精神:  93188

速力:  89200

器用:  89200

運 :  89200

魅力:  89200

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