頼まれて魔法少女になったら中央線沿線で戦う羽目になりました

谷島修一

第1話:魔法少女登場

■場所:夕暮れの井の頭公園■


(SE:駆ける足音)


祐子「陸上部の部活で、遅くなっちゃったなぁ。近道で公園を横切ろう」


(SE:駆ける足音)


(SE:茂みから何かが這い出る音)


ミリュー「ううう…」


祐子「えっ?! 女の人が倒れている」


ミリュー「ううう…、助けて」


祐子「大丈夫ですか?! 気分が悪いんですか? 救急車、呼びますか?」


ミリュー「何か…食べるものと、水…、水をください」


祐子「お菓子と、ペットボトルのお茶しかないけど」


ミリュー「ありがとう。パクパク、ゴクゴク…。プハー。生き返りました」


祐子「一体どうしたんですか? こんなところで倒れているなんて」


ミリュー「実は、私は異世界から来た魔法少女ミリュー」


祐子「は?」


ミリュー「魔法少女ミリュー」


祐子「やっぱり救急車呼ぶ?」


ミリュー「待ってください! 私は本当に魔法少女で、異世界から来たのです!」


祐子「はあ…。じゃあ、なぜ、ここで倒れていたの?」


ミリュー「実は…、私の住む世界で私たちと魔王軍が戦ってたんです。もう少しで私たちの勝利というところで魔王たちに逃げられてしまい、それで、奴らを追っていたのです。魔王たちが、この世界へ逃げこんだところで見失ってしまいました。そして、私はこの世界には疎くて、恥ずかしながら行き倒れる羽目に」


祐子「えー? それ、本当の話? ラノベの読みすぎじゃなくて?」


ミリュー「本当です!」


祐子「ふーん…。確かにその服も、ちょっと変だよね。何かのコスプレかと思った」


ミリュー「これは魔法少女の正装です」


祐子「はあ…。それで、一人で魔王を追ってきたの?」


ミリュー「他に仲間が2人居たんですが、私たちの世界とこの世界を繋ぐ“時空回廊”の途中で、はぐれてしまって。この世界にたどり着けたのは私一人のようなのです」


祐子「ふーん…」


ミリュー「今、魔王は潜伏しているようですが、いつまでも大人しくしているはずがありません。近いうちに、この世界を征服しようとするに違いありません」


祐子「ふーん…」


ミリュー「その眼は信じていませんね?」


祐子「それが本当なら、まず警察とかに相談したらいいのでは?」


ミリュー「実は、この世界の偉い人に助けを求めて、会おうとしたのですが、全く取り合ってもらえず…」


祐子「そうなんだ。まあ、こんな話を信じろと言われても無理だよね。ちなみに誰に会おうとしたの?」


ミリュー「確か、ソーリ? と呼ばれる、この国のトップの人に」


祐子「総理大臣に会おうとしたんだ」


ミリュー「でも、門前払いで…」


祐子「まあ、無理もないわね」


ミリュー「しかーし! この世界と私の世界のためにも魔王を倒さなければなりません! でも、一人では魔王を倒せません! 魔王を倒すには仲間が後、最低二人必要なのです。なので、まず、あなたに仲間になってほしいのです!」


祐子「はあ? 仲間?」


ミリュー「あなたには魔法少女になる素質があります! 私にはわかるのです!」


祐子「素質って…?」


ミリュー「この魔法少女に変身できるブレスレッドをあげます。これを付けると魔法少女に変身できるようになります。」


祐子「私が魔法少女?!」


ミリュー「そうです! これは本当は私の相方の一人、魔法少女ドロワテの物なんですが。大丈夫! ブレスレッドをつけてみてください!」


祐子「しょうがないなあ」


(SE:ブレスレッドを付ける音)


ミリュー「そして、変身の呪文、“パトピラプンペフォポムール”と唱えるのです」


祐子「パト…、何?」


ミリュー「“パトピラプンペフォポムール”です!」


祐子「長いよ」


ミリュー「頑張って唱えるのです!」


祐子「あー、はいはい…。コホン、では行きます! “パトピラプンペフォポムール”!」


(SE:それっぽい変身SE)


ミリュー「できましたね!」


祐子「今、一瞬、裸になったけど?!」


ミリュー「それは、魔法少女変身時のお約束です」


祐子「えーっ! 誰にも見られてないよね?!」


ミリュー「今は大丈夫」


祐子「“今は”、って」


ミリュー「それに、これはドラマCDだから」


祐子「えっ?」


ミリュー「ああ、独り言です。それで、衣装も私とお揃いですね」


祐子「色違いですね」


ミリュー「私は火の魔法を使うから赤、あなたは氷の魔法を使うから青」


祐子「氷の魔法?」


ミリュー「この魔法のスティックもあげます。これを構えて念じるとスティックの先から氷の塊が放たれます。やってみてください」


祐子「呪文は、いらないの?」


ミリュー「念じるだけで大丈夫です。でも、どうしても呪文を唱えたいというなら、何を言っても大丈夫です」


祐子「なんか、適当だなあ」


ミリュー「いいから、やってみてください」


祐子「コホン…。じゃあ、行きます。“エクスペクト・パトローナム”!」


(SE:氷がぶつかって、木の倒れる音)


祐子「すごい!」


ミリュー「できましたね」


祐子「でも公園の木を倒しちゃった。怒られるかも」


ミリュー「じゃあ、誰か来る前に逃げましょう」


祐子「いいのかな…?」


(SE:駆ける足音)

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