元傭兵団長は、英雄の遺物を求めて旅をする。
ぽぽぽぽーん
第1話 傭兵団長と英雄
昔、アグネシア大陸は統一国家であった。
統一国の名はアグネシア大帝国。その統一国家は英雄が王となり平和に治めていた。
アグネシア大陸はとても広大で過酷な場所もあり、アグネシアを治めることはとても容易なものではなかった。英雄王は全能であり偉大であったと言われている。
この偉大な英雄王のサーガは多く残されている。
曰く、彼が剣を振れば海を割り、曰く、彼が魔法を使えば大地を燃やし、曰く、彼が治癒を行えば死者さえも蘇る。
ほかにも彼の言い伝えは残っている。
人類みな平等を謳い、亜人や人間どちらにも分け隔てなく接し、悪人すらも彼を敬ってしまうとか。
そして、小さな困りごとから、国の存亡に関わる厄災どんなことでも引き受けて彼は解決する。
強さと優しさを掛け合わせた存在であったと。まさに誰も思い描く英雄であった。
しかし、この統一国家は英雄王の一代限りしか続くことがなかった。
やはり彼にしかこのアグネシア大陸を統治することができなかった。
アグネシア大帝国は200年という時が経ってなお、再び一つになることはなかった。
しかし、国はなくなれど英雄王は遺物を残していた。どれも強力かつ唯一無二の遺物たちはそれはどれも神器と呼ばれるものだ。
万人を切っても刃こぼさせぬ剣、無尽蔵の魔力を持つことができる指輪、どんな病も治し死者さえも蘇らせる杖など。
この広い大陸の各地のどこかに英雄王は遺物を残した。
200年経った今でなお英雄王の遺物はすべて見つかってはおらず今もまだどこかに眠っていると言われている。
この物語は偉大な英雄王の遺物を探す1人の少年のサーガである。
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ある一つの小さな国で革命が起こった。
その国の名はハナバスト王国。アグネシア大陸の南にあるこの国には、他国に比べて非常に穏やかで戦争とは無縁の国ではあった。
その国は雄大で豊かな大地が広がっており、長い歴史のある国だった。
しかし、いまから8年前に民に優しく平等である賢王フェルリナ・ハナバスト王が崩御された。
その後、玉座についた王は甥にあたるサルリナ・ハナバストであった。
彼は、暗君であり暴君であった。
小国でありながらも穏やかで歴史ある故国の良さが彼には理解ができなかった。
暗愚の王は、英雄王を夢に見て、この平穏なハナバストから大陸統一を目指した。
その夢のために多くの変革をこの国にもたらした。無謀な増税に徴兵、娯楽の制限に、亜人の奴隷化、王権集中化など。
しかし、あまりにも無謀で無策なそれはどれも成果は出るはずもなかった。
嘆かわしいことにその負担の多くは民が犠牲を払うしかなかったのだ。
飢餓者など豊かな大地であるハナバストでは今まで出たことがなかったが、新王となってからは多くの飢餓者が出た。
また、今まで争いとなは無縁であったこの麗しい大地が、無謀な隣国との戦争で疲弊していき、多くの民が死んでいった。
この愚かな王の統治は8年間続いていく。
ハナバストの民、皆が賢王の時代に戻ることを心から願った。
サルリナ王は英雄王を目指しながらも器量が狭く、自信がなかった。そのため、彼に少しでも反抗の意思を見せれば処刑された。
皆が苦しみ耐え凌ぎいつかまた、あの平和の国をと願っていた。
そして民の声が届いたように、ついにこの国にも英雄が生まれた。
昨年、サルリナ・ハナバストの治世に終止符が打たれたのであった。
革命が起きたのだ。
革命をおこした主犯はハナバスト付近の国は知らぬものはいない傭兵団であった。
驚くべきことにこの傭兵団のリーダーはまだ17歳の少年である。その少年はこの国で英雄となったのであった。
その後、革命が起きたハナバストは国名を変えず、穏健派代表であった公爵家の者が王となり、また平和の国となった。
この8年間で疲弊し敵国も多くなってしまったが、彼らはまた平和な国を目指し今度は明るい未来のために耐え凌ぐのだった。
そして、革命をもたらした英雄の少年は、ハナバストの表舞台からは消えた。
革命が終わると彼はこの国からいなくなったのであった。
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