姫様の欲望のままに

棺桶屍乃

第1話

1


この世は奇病が流行ってしまった時代だ。

男の人がおとぎ話にあるまさに吸血鬼になってしまうという病気。ただそれに耐えられないと死に、それの病気に耐えられると吸血鬼の特徴を得る。そんなホラー映画のような現象が現実世界で起きてしまったのだ。


そして私たち女性は困っている。


『このままじゃ私は独り身だわ!』

『子供欲しいのに男性がいない…』

『力仕事誰がするの!?』


男性の人口が一気に減ったことで社会全体でとても混乱しているし、経済的にも困ることが増えてきた。

男性が減ったことにより女性の顔面偏差値も一気にあげられてしまったため芋女な私には人権がない。生きるための居場所がない。父親も奇病で死んでしまったし、それによって

母親は鬱病になった。私はどうすればいいのか。私も日に日に病んで言った。


私にも母の鬱病がうつったみたいで、無気力な日々が続いた。自暴自棄にもなり自殺未遂も起こすようになった。


なんか今日はやけに自暴自棄だなぁ。


私、琴音(ことね)はベッドでひたすらに考えていた。このままここにいてはただ野垂れ死にしそうな気がする。


なんかもういいや希望もくそもないから一旦家出よ。


そんな軽はずみな考えで家を出る。


路地裏の向こうへとフラフラ歩いていく。

まあ、こんなご時世変なおじさんなんていないだろうし。まあ別に今更奇病に耐え、吸血鬼のようになった人々に食われようとなにされようとどうでもいい。


そんなことを考えていたら目の前に人影が見える。こっちに向かってきている。


こんな暗いところに誰がいるの。


そう思いながら息を潜めたが


「病めるお嬢さん少し話さないかい」


と話しかけられた。

え?この人は一体…そう思っていたらひとつの紙を渡される。


『月光公園の噴水、月が見える方向を北にして東南へそこにある紅の館に行きなさい』


「…????」


「とくにやることも無いでしょうそこへ行きなさい。病めるお嬢さん。」


このお婆さんはなんで私が病んでいることを知っているんだ?そう思ってもう一度紙を見てお婆さんに聞こうとしたらいなくなっていた。


怖すぎる。夜だからというのもあるけど普通に怖い。


「行く宛てもないし暇だし行くかなぁ。」


やけになっているからか足が公園へと進んだ。


あまりここには来ない。公園は廃れ誰も行きたいとは思わない景色が拡がっていた。

草はぼうぼうに生え、虫や小動物がいる。


嫌だなと思いながら空を見上げる。月をみつけその方向から東南の位置を調べる。


こっちかなー。よく分からないけど


公園の近くにある森へと入っていく。暗すぎて見えなかったから懐中電灯で照らしながら歩く。


本当に赤と言うより紅の建物があった。

本当に日本の建物か?というような建築物で洋風だった。


ドアを叩こうとしたら勝手に開いた。


え。怖い。


1人だから無性に怖かった。


「いらっしゃい病める姫様。僕は案内役のクレイン。よくこちらへ辿り着きました!その聡明な貴女を此方は歓迎致します。」


え?誰?男の人の声?そして私を姫様…?


「?蝙蝠のお婆に会ったでしょう。だから此方へ辿り着いたんだと思いますが?心当たりないですか?」


「あお婆さんなら会ったかもしれない…?」


「それが蝙蝠のお婆ですよ!僕達も夜以外で会ったことはありませんしすぐ消えるから未知な存在ですねぇ。ところで姫様此方の説明は聞いてますか?」


説明?なんの事だろうか。


「聞いてないですよ?」

驚いた顔をされたがふふっと笑われ、

「じゃあ話しながら奥へ向かいましょう。他の方も待ってますよ。」


謎なことが多すぎる。この館に奥があるのも凄いことだし、他の人とは誰なんだろう。


とりあえず私はついていった。

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