第2話 尾行ではない、取材なのよ
ケイは、アポインとを取り、取材対象一人あたり30分時間を貰って話を聞く。
対面で取材が出来ていた頃が書きやすかった。
zoom画面越しで伝わる情報は、整理されてはいるが、意外だと感じることが減った。ビジネスとしては、それで良いのだが、物足りなさを感じる。
取材の準備は、ツールが何であれ変わらない。
マンションの場合は、売るためのポイントを先にGoogle MAPから確認しておいて、アピールポイントを聞き出す。
次に、ネガティブポイントを聞き出して、デメリットとして表現する。
ライターとして、長く仕事ができている理由はこれだと思っている。
物件が売れたとしても売れなかったとしても、ライターへの支払い代金は変わらない。
期待に客がお金を払うシステム。
期待代金の相場は知ってはいるが、給料に不満は無い。
そもそも、不動産売買に、作文の良し悪しがかかわるのか不明なのだ。
効果測定などしない。
会社も興味を示さない。
都内のマンションの売り物件の場合は、駅からの距離で価格が変わる。
後は、売り手の資産状況や健康問題で価格が大きく変わるのが現実。
ケイは長年、マーケッティングという名の何かを売るための文章を書いているのが、ケイは自分を広告することが出来ないでいる。
これといって、特徴がなく、おとなしく話題が乏しい。
実は、他人に興味が持てない。
ASDアスペルガー症候群ではないかと感じている。
同一ラインで作られたと思われる、麻のセーターを5枚持っている。
全部チャコル。
子供の頃の夢は、
「パリの石畳の路上にて、哲学的な思惟に耽るあまり、蹲っちゃう女」
になりたい。
そんな夢に共感してくれる人に出会ったことは無い。ケイはしかし、決して孤独ではなかった。
仕事が終われば、取材で訪れた店に、客として入り、自分の食べたいものを全て注文することを趣味にしているからだ。
デバイスには、その日の食欲に任せ好きなメニューを提供してくれそうな店のオリジナル編集(季節や体調や別のカテゴライズされている)済みのURL一覧。
時々店内で、取材相手に気づかれることがあるが、ほとんどの場合は、普通の客として店を出る。
都内に限り、ケイは、実際に取材をしてから文章を書く。
そうやって書いた、店の件数は1000軒を超えた。
食費が月に8万円を超えることと、体重が増えることについては、どうにかしなければと思うのだが、たちまち困る事態ではない。
この暮らしを続けて15年が過ぎようとしている。
今日は、下北沢にあるイタリアンカフェ。
ピザやパスタがメインだが、ロブスターでアヒージョみたいな料理が出る、ニンニクのパンチの後で、生胡椒が脳にアッパーかけてくる刺激に病みつき。
ここの皿は分厚くて割れにくそうだ。
カトラリーサイズが大きい輸入品。
ここでは、ロブスターを、鷲づかみしてほうばることが出来る。
ジャガイモは、ゆでて岩塩を振りかけただけのようなのだが、オリーブオイルを付けて半切りサイズを一口で。
ケイはかくして、
60キロの体重を維持している。
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