第4話 ハーレムっていいな
宿に着くと受付に誰もいない?
「すみません、誰かいらっしゃいますか?」
しばらくすると奥から中年の女性が出てきた。
「はいはーい……大丈夫かしら?かなりボロボロですよ!」
ロックドラゴンによって破壊された装備のことか。
「大丈夫です。」
私は笑顔で答えたが女性は心配した目でこちらを見ている。
「そうかい、ならいいんだけどね。それで宿泊だっけ?お名前は?」
「ガイナスです。とりあえず一泊お願いします」
私がそういいガイナス本人の所持金から宿泊料を支払うと女性は鍵を渡してくれた。
「二階の奥の部屋だよ。朝晩は食堂にご飯を用意してるからね。あと、お風呂に入りたいなら大銅貨5枚で入れるよ」
「わかりました、ありがとうございます」
部屋に入るとベッドがあり、荷物を置いて見回す。
スペースも少し狭いが寝るだけなら十分な広さがあった。
ただ、木が窓の外の景色を遮ってることは唯一の不満、概ねいいところだ。
そう思っていたときが私にもありました。
宿屋の夕飯のあと湯に入る時、疑問に思った。
「ガイナスのやつドラゴンに敗北したあとなんか酒場に行きやけ酒で泥酔してたよな……」
髪と体を洗い湯船に浸かる。
ロックドラゴンから受けた傷がまだ完全に癒えてないのか少々響くが湯のおかげでとてもいい気分だ。
自分以外の客も最後の一人が入れ違いになったので誰にも邪魔されない。
「出たくないくらいには心地いいー」
こんなバカみたいな独り言だって恥ずかしくない。
「ハイン追い出して早速出鼻をくじいてやけ酒とかよー!いったん風呂入って落ち着けばよかったのになー」
フレンズコレクションでもフレンズが喧嘩したときは片方にお風呂セット渡したら風呂入って落ち着くし。
「さては風呂嫌いだな。せめて一週間に一回くらい入っとけばそもそもパーティー追放なんてバカなこと考えなかったんじゃないか?……いや、そもそも自分で『お前のせいで俺たちは上に行けない』的なこと言い出してを追い出したんだよなーテンプレブーメランがものの見事に刺さってやんの」
物語を知ってる誰もがガイナス自身が追放されたほうがマシと評価してる。
「なんにせよ、もうちょっとマシな人生送れたんじゃねぇか?まぁ今更だけど」
もっとも今の自分は一人風呂、主人公のハインは後にハーレム混浴をこれでもかとカマしてくる。
描写が雑だしアウトだし妙に長いし読むの飛ばしてたけど今考えたら羨ましい。
「ガ……ガイナスくん?」
「はいはいメンバー勝手に追い出して出鼻挫いたガイナスさんですよー」
タイトル忘れたけどガイナスが出てくる物語、ラノベではドラマCDとかついてたな。
購入してないけどコマーシャルで確か主人公はこんな声だった気がする。
……待て、人いる。
この声は私の妄想じゃない!
「なぁ!?」
ヤツがいた。
あんまし関わらないって決めたのに。
ハイン!!!
よりにもよって風呂場で遭遇してしまった。
「え?えぇ……?」
ハインも混乱してるが私も困惑している。
追放して早めの再開に涙なしで語れもしない。
「うそぉ……」
「あぁ……」
うわっ、ハインのイチモツマンでかっ。
身長ではガイナスのほうが高いが……
こっちでは負けてるぅ……
でかっ!(2回目)
ハーレム制作の都合なのか……
でかぁ……(3回目)
「あ、あのー……」
「あ、はい」
「わた、俺、先に上がりますね……」
「あ、どうぞ」
「……ロックドラゴン討伐おめでとう」
「っ!?」
急いで撤収する。
「ふぅ……どうしたんだろうガイナスくん……」
__________
ロックドラゴン討伐はガイナス達が敗北したその後にハインがメインヒロインと来て倒したはず。
だから間違いはない。
……いかんいかん、ついつい見てしまった。
というか向こうもジロジロ見てた気がする。
「にしても、でかかったなぁ……」
「何が?」
「え?」
後ろを振り返るとリリィがいた。
「いや、なんでもないよ。」
「そう?それよりお風呂は気持ち良かった?」
「あぁ」
「よかったよかった、それじゃ明日に備えて早く寝ようか」
「……ところで、ナンデココニイルンダ?」
「ガイナスがドラゴン倒せなくて落ち込んでないか見に来たの。大丈夫みたいね」
「そうか……ありがとう、お休み」
「うん、お休み」
リリィは去って行く。
こうして激動の一日を終え私は眠りについた。
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翌日、宿の延長をしてからリリィとともに冒険者ギルドに向かう。
ギルド内では案の定ロックドラゴン討伐話題でもちきり状態だった。
倒したのは勿論__パーティーから追放したハインと彼に着いていったメインヒロイン。
ガイナス一行へのざまぁの第一段階がスタートしたのだ。
ハイン達が倒したあのドラゴンはギルドの外に置かれていてそこで解体しているので外でも大騒ぎ状態になっている。
先に来ていたメルシーとシルヴィアも驚いていた。
「ちょっとガイナス!すごいことになってるわよ!」
「俺も聞いたよ。ハインがロックドラゴンを討伐したらしいな」
「えぇそうよ!」
どうしよう、ここからガイナスは受付に突っ込んで受付の人に怒鳴り状況説明をさせたが……
流石にそんなことしたくないしやる勇気もない。
冒険者たるもの素直に称賛するのが筋だし。
よし、お祝いでもしよう。
「すげーなあいつ。何かお祝いにプレゼントを用意したほうがいいと俺は思うがみんなはどうだ?」
「……」
「……」
「えっ!?どうしたのですか二人とも!?」
リリィとメルシーはまじかよ、と軽く引いてる様子。
なぜだ?
彼女達は別にハインを嫌っちゃいない。
「……おねーさんにプレート渡しなさい」
リリィが冒険者用のプレートを要求してきた。
お姉さん感あんまりないけど。
「ふむふむ……状態異常は特にないね。精神力も変わってないし……シルヴィーちゃん、一発『スイーパ』かけとく?」
「だ、だめですよリリィさん!流石に失礼ですよ!?」
状態異常解除魔法なんて必要ないよ?
……あこれ貶されてるのね。
まぁいいや、それよりプレゼントを考えないといけないじゃないか。
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