チュートリアルダンジョンの無限牢獄に閉じ込められた俺 〜今日から日常を送りたいと思っています〜

M.N

第一章 10年後の未来

プロローグ

「ハァハァ。───っ!?」


 迫り来るハイオークの巨腕。ただの一般人ならば即死である攻撃を、結城ゆきしろ光星こうせいは1本の剣で対峙していた。


 しかし、1匹のモンスターに集中力を割いていたら、後方からモンスターに襲われて終わりジ・エンドになってしまう。


 そう思った光星こうせいは、十数匹のモンスターから一旦距離を取り、またいつもの事を考えていた。



 ───俺が思う日常を送りたい、と。









 ☆ ☆ ☆


「しかし、今日の会議は本当に厄介だったな………」

「だね〜。もう、学校を爆破したい気分になっちゃったよ!」


 話の話題を出してきたのは、2人の少女であった。


 初めに話した少女は、生徒会会長にして人々から〝完全無欠の天才〟と言われる───九条くじょう詩音しおん


 その後に話をした少女は、生徒会副会長にして詩音しおんと同じく人々から〝勉学の天才〟と言われる───松本まつもとあかね



 しかし、そんな2人の天才達であれど毎度毎度のように愚痴を言いふらしていた。


「そうだねぇ〜。しかも、私の研究時間を削られたし〜………あかねの言う通り学校を爆破しちゃおっかなぁ〜?」


 詩音しおんあかねの話に乗ってきたのは、生徒会書記にして『サイエンス部』部長───加藤かとう志乃しのは、マジな表情で遅く言葉を話していたた。



 とそんな時、あかねはコチラに近づいて会話の矛先を俺に向けてきた。


「えへへー。ねぇ、こう! 私達と一緒に学校を爆破しちゃおっか!」

「……………………いやいや、そんな物騒な事は絶対にやらねぇよ!? ていうか、ちゃっかり詩音しおん先輩が入ってるじゃねぇか!」


 俺とあかね幼馴染おさななじみどうしの会話。

 物騒な話に強制的に出された詩音しおんは、額に手を当てため息。

 志乃しのは、マジな表情で学校爆破の計画を練っていた。




 それはいつもの日常であった。本当に何気もない学生生活だった。


 ───だが、それはただの偽物でしか無かった。



「まさか地震か? ───ッッッ!?」


 人が大きく揺れる地震。俺は体勢を立て直そうと片足で踏ん張ろうとした瞬間───地面が無くなっていた。











「っ、ここは?」


 意識が覚醒した俺は、ふと周りを見渡してみると先程とは全くの異なる世界であった。


 石で作り込まれた壁に掛けられたロウソク。そして、1番印象に残るのが広大な広さであった。


「本当にここは一体どこなんだ?」


『お前が知る必要はない』


 ただ意味もなく呟いた独り言であったが、コツコツ、という靴の音が鳴ってきたと共に前方から返答がきた。


「は? いや、お前は一体何を言って───」


『ひれ伏せ。身分を弁えろ』


「っ、グハッ!?」


 髪が朱色の少女に声を掛けようとした瞬間………つの間にか、地面に横たわっていた。


 決して自分から体勢を崩してはいない。───例えるなら、頭上から振り注ぐ重力・・所為せいで横たわっていた、と言った方が正しい。



『チッ、まぁいい。───お前には、今から地獄に行け』


「はっ、冗談………か?」


『どう思うかはお前次第だ』


 冷徹な目をコチラに向け、圧倒的な何か・・を身に纏いながら淡々と少女は話していた。


「…………もちろん、断る」


『いや、これは確定事項だ。…………が、これではめが悪い。───こっちに来い』


 またコツコツ、という靴の足音が鳴ってきていた。


 そして数秒。コチラに向かって来ていたのは、詩音しおんあかね志乃しのの3人であった。


「なっ!? ───くそっ。早く逃げ、ろ!」

「「「…………」」」


 俺の声に耳を貸さず3人は、少女の所へと近づいていた。…………そして、やっとコチラに向き話してきたのはあかねであった。


「逃げる? そんなバカな事をするわけないじゃん。

 ───そもそもの話、お前・・を嵌めるためにこんな状況を作ったんだよ?」

あかね、お前何を言って………」


 目の前に映っている『あかね』は、俺の知っているあかねとは全く違っていた。


「分かりやすく言うなら………私達・・に裏切られたと言った方がまだ分かるでしょ?」

「私……達?」

「そうだよ。ね、2人とも?」


 あかねの言葉に、横にいる2人は静かに頷いた。


『もういいか?』

「うん、もうスッキリしたから大丈夫だよ?」

『……………………そうか。なら、お前はこれから地獄に行け』














『グルオォォォォ!』


 いつの間にか暗闇の部屋に俺は居た。そして、大きく響き渡る不気味な声は、本当の地獄だった事をこの時の俺は一切知らなかった。

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