十一話
「? どうかしましたか?」
「え、ああ、何でもねぇよ。……おい、ブレット。機体から降りろ。アイツと話をしてみるぞ」
森の奥から現れた仮面の男が首を傾げて言うと、ダンは機体の外部音声で仮面の男にそう答え、通信装置でブレットにロボットから降りるように言った。
「ダ、ダンさん!? 本当に行くんですか?」
「しょうがねぇだろ? ここが何処だか分からねぇんだし。帰るにしてもカノンの奴を探すにしても、ここの事を知っている奴に聞かないと始まらねぇよ」
「……分かりました」
怪しい仮面の男と話すと言ったダンに驚くブレットだったが、ダンの言葉に納得すると二人ともそれぞれ自分の機体から降りた。それを見て仮面の男が笑みを浮かべる。
「フフフ……。降りてきてくれたんですね。やっぱり話をするなら、お互い顔を合わせてするのが一番ですよね」
笑みを浮かべながら言う仮面の男からはどうしようもない胡散臭さが感じられ、ダンとブレットは揃って口元を引きつらせる。
(おいおい……。ヤベーよ、本当にヤベーって。あの笑み、知り合いの傭兵やら武装難民やらテロリストやら武器商人やらが、ダンさんをいいように利用しようと企んでいる時の笑みにそっくりだよ……!)
仮面の男と話すと決めたことを早速後悔したダンだったが、それでもこの辺りにいる現地人は仮面の男しかいないので意を決して話しかけることにした。
「あ、あの〜? すみません、ここが何処だか分かります? 俺達、気がついたらいつに間にかここにいたんですけど……?」
「ええ、分かっていますよ。お二人は百機鵺光でやって来た異世界人の方々なのでしょう?」
ダンの言葉に仮面の男は一つ頷いてから言うのだが、仮面の男の言葉はダンとブレットの予想を遥かに超えたものだった。
「ひゃ、百機鵺光? 異世界人? 一体何を言っているんですか?」
「ああ、説明不足でしたね。これは申し訳ありません。この世界ではこことは別の世界、異世界からロボットと呼ばれるからくり仕掛けの巨人と、それを操る操縦士の方がやって来ることがあるのです。その現象を私達は百機鵺光と呼んでいます」
困惑するブレットに仮面の男は百機鵺光について説明するのだが、ダンとブレットは自分達に起こった出来事に驚愕の表情を表情を浮かべる。
「ここが僕達がいた世界とは違う異世界? それって別の遠い星に来たってことですか?」
「マジかよ……? こんな緑豊かな惑星なんて俺達の星の近くにはねぇし、そんな遠くまでワープするなんて大型のワープゲートを使わないと無理だぞ? それを俺達は単独でやったってことか?」
どうやらダンとブレットのいた世界では遠くに離れた場所へ一瞬で移動する手段があるらしく、二人はまだ半信半疑ではあるが仮面の男の話を自分達なりに理解しようとしていた。
「あっ、そうだ。忘れるところだった。なぁ? 話は変わるが、この辺りで俺達が乗っていたのと似たような機体か、十代の女のガキを見なかったか? カノンっていう俺達の仲間で、赤い髪をしていて黄色の服を着ているから見たらすぐに分かると思うんだが?」
自分達が異世界に転移したという話に驚いていたダンは、自分の仲間の一人が行方不明であることを思い出して仮面の男に聞くが、仮面の男は少し考えてから首を横に振った。
「……いいえ。すみませんがそのようなロボットも女性も見ていませんね。……しかしそうですか。仲間の方が一人見当たらない。……これはマズいことが起こるかもしれませんね?」
仮面の男の小さく呟くと、鳥のような仮面の下で真剣な表情を浮かべてダンとブレットを見る。
「お二人はそのカノンさんって女性を探しているのですよね? もしよろしければ私もカノンさんを探すのを手伝わせてもらえませんか?」
「え? ……まあ、手伝ってくれるのだったら助かるな。そう言えばまだ名乗っていなかったな? 俺はダンだ」
「僕はブレット・ニューエイトです。ブレットって呼んでください。よろしくお願いします」
「はい、お任せください。私は足利ハヤテ。ハヤテとお呼びください」
突然の仮面の男の申し出にダンとブレットは了承してから名乗ると仮面の男、足利ハヤテも自分の名を名乗るのであった。
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