アプリで出会った不倫相手は息子の担任
羽音衣織
第1話私の至福
大好きな花の香りが私の心を癒していく。
このパートの時間だけが、私の唯一の自分らしく居られる時間だ。
時刻は午後3時になろうとしていた。
ここのパート時間は朝9時から午後3時までしか働けない。
旦那の扶養家族に入っているから、収入の規定が厳しい。
「三上さん、お疲れ様」
店長が午後3時ちょうどになるとそう告げる。
至福の時の終わりを言い渡されるこの瞬間が一番嫌いだ。
「お疲れ様でした」
一つため息をつく。
でも、今日は今からもう一つの楽しみがあった。
マッチングアプリを開くと、待っていた彼からのメッセージが入っていた。
『お疲れ様、ユリさん。この前と同じホテルで待ってます』
ユリは私のアプリネーム。
本名も明かさず、アプリ内で連絡取り合えて、最近のシステムは私みたいな、浅はかな関係を好む人にはちょうどいい。
三上萌香40歳になり、息子は中2。
旦那は中小企業のごく普通のサラリーマン。
ちゃんと交際三年を経て結婚したのに、彼への愛情が冷めきったのはいつからだろう。
旦那だってもう、私に興味なんてない。
セックスだって、最後にしたのはいつなんだろう?
今から会う彼は、二週間前に初めて会った。アプリ内では1ヶ月前くらいからマッチングして、連絡取り合うようになった。
30歳で私の10コ年下。
このアプリは遊びも多いと、聞いたから始めたら、ちょうどよく彼を見つけて、私からハートのボタンを押したのだ。
顔はマッチングした後に送りますという言葉と、上手く撮れたクチモトの写真が私だ。
知ってる人に見られても分からないように、一応気にしていた。
初めて会った時の、トークの軽快さや私に対しての本気度の無さがよくて、私たちは後腐れない関係を始めた。
偽り、泡沫、恋人ごっこ。
私にとって至福な時間は一瞬でもあればいい。
ホテルに着くと、ロビーに彼の姿を見つけた。
スーツに身を纏い、どこからみても営業マン。
周りも仕事の商談できているとしか思わないだろう。
「ユリさん」
私を見つけて、爽やかに手を振る彼に、私も軽く手を振る。
そして、私たちは彼が予約した客室へ向かった。
営業マンで、彼は会社から支給されているホテルで今暮らしているのだ。
いつもは隣の県の支店にいるのだが、3ヶ月本社に研修で勉強しにきている。
「ユリさんも仕事終わり?」
「そうよ、マーくんは今日休み?」
軽いキスを交わしながら私たちは、なにげない会話をした。
余分な会話は必要なかった。
ただ、お互いに快楽に溺れればいい。
欲望を満たせるだけの関係。
「ユリさん、本当綺麗。人妻だから余計にもえる」
その泡沫な時間でも、自分を褒めてくれる彼のお陰で、私は美意識を高く保てるのだ。
「それはありがとう、でも、今は人妻なんて言わないで」
私はせがむように彼の口を自分の口で封じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます