東堂兄弟の5分で解決録3〜兄の秘密〜

涼森巳王(東堂薫)

絶対、あばく!



 僕の兄には秘密がある。

 それは念写だ。

 兄は生まれつき、念じたことを写真に撮れる。現在、過去、未来のすべてにおいて。


 便利。超便利。

 よく考えれば、あさって発売のロト7の当選番号とか撮れたら、その一枚で億万長者に……。


 ……ハッ! ダメ。ダメ。

 かーくん、それはいけない考えだよと、僕は自分を戒める。

 兄の能力は世の中を救うためにあるんだ。きっと、うん。


 さて、亡き祖父が使ってた部屋を最近、猛が使いだした。

 八畳の和室。

 家具は全部、古風な和調だ。


 僕は今、ここを掃除しようとしてる。なぜか?

 それは……兄のようすが変だからだ。前に使ってた部屋から、こっちに移るとき。


「手伝おうか? 押入れのなか」


 とか言って、ふすまをあけようとすると、猛がうろたえた。

 おかしい。これまで猛があせってるとこ見たことない。猛はいつでも、ドンとかまえてる男だ。


 その猛が妙にあわてて、ふすまをあけようとする僕の手を片手で押さえた。

 スゴイね。

 ダンボール二箱、片手で持ってるよ。こいつ。


「おれの荷物は少ないから。大丈夫」


 ……怪しい。何か隠してる。

 僕の直感が、これでもかってほど自己主張する。


「わかった」


 そのときはおとなしくひきさがった。どうせ、素直に見せてくれるわけがない。


 はて?

 これまで二十二年の人生で、兄が僕に隠しごとしたことがあっただろうか?


 僕はあるよ。

 兄ちゃんに見せられない点数のテストの答案とか。

 図画工作の時間に、家族の似顔絵を描いてくださいと言われて、なんか子牛が人間を襲ってるみたいになってしまった絵とか。昔うちにいた、ぶちもようの飼い猫が、猛の背中にぶらさがってるとこ描こうとしたんだけど……。


 しかし、兄は子どものころから完璧だった。

 テストは百点。悪くて九十点。

 スポーツ万能。

 超イケメンだし。


 この兄が僕に何かを隠している……。


 なんだろ? じつは隠し子でもいるんだろうか?


 まあ、それはないか。いつもブラコンすぎてふられてるもんな。

 猛のブラコンはただのブラコンじゃない。異常愛の域だ。僕に好きな子できただけでジャマしてくるんだから。

 弟が僕でなきゃ、とっくに愛想をつかしてたことだろう。


 その兄が……その兄が、僕に隠しごと——


 絶対にあばいてやるっ!

 ゆるさないんだもんね。

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