第2話
きっかけは些細な事だった。
———半年前、
地元の高校の大魔高校、一年二組、クラスのスクールカースト下位で隠キャの部類に入っていた俺だがいじめは受けておらず、静かに学校生活を送っていた。
——そんなとき同じクラスの友達でもあった同級生が金髪、ピアスの不良のような格好をした同級生に絡まれるようになった。きっかけはわからないがその友達はその行為をすごく嫌そうにしており、いじめといってもいいくらいのことをされていたと思う。。。俺はその光景をただ遠くで見ていることしかできなかった。———
そして友達へのいじめのような絡みはどんどんエスカレートしして行き、ついにはお金が絡むようになっていた。恐喝だ。
——それに気づいたのはトイレに行った時で、不良達がその友達を囲って友達は自分の財布から一万円札を出しているところだった。
俺はその光景を見た瞬間、自分でも驚くことにその不良の一人を殴っていた。今まで遠くで見ていた俺がしごく勝手な話で、多分自分の貧弱な正義感というやつが我慢ができなくなったんだと思うが、あまりその時のことは思い出したくない。。。。
当然その後は6年間文化部で過ごし、貧弱な身体をしていた俺がいかつい不良たちに勝てるわけもなく、二人まとめてボコボコにされたわけだが、———一緒にボコボコにされた友達とはなにか深い絆が生まれたような気がしていた。。。。
—————次の日、いつものように登校し一年二組の教室へ入ると—————俺の机が消えていた、、、
そして現在、
「ん?降魔様大丈夫ですか?」
「。。。」
「おーい」
は、いかんいかんあまりの光景に思考が停止してしまった。よくわからないがとりあえず頷いておこう。
「そうですか、よかったです。もう、この汚い環境のせいでおつむがダメになったのかと思いましたよ」
彼女は苦虫を嚙みつぶしたよう表情で言った。
なんだこの女はいきなり失礼ではないか!
まあ、ちょっとは散らかってはいる部分もあるが、頭がおかしくなるほどでは決してない。てか、頭がおかしくなる部屋ってなんだよ。
「そういえば、まだ名乗ってませんでしたね。
申し遅れましたが、私寿命取引課悪魔のリリアと申します。リリって呼んでくださいね」
苦虫を嚙みつぶしたよう顔が元に戻り、彼女ははっと今思い出したように手を合わせて自己紹介をした。
普通なら寿命取引課とはなんぞや、と問いたいところだが俺はコミュ障だ。もう少し仲が深まってからにしよう。
「・・・」
・・・五分経過
「ちょっとですね、そんなに黙られたんじゃ話ずらいんですけど・・・」
困った顔で睨んでくる彼女の表情も可愛かったが、流石にこれ以上黙っておくのもむりそうなのでコミュ障なりに頑張ることにする。
「あ、あの、えっと、・・・・」
いざ話そうとしたら気づいてしまった。今までは彼女の綺麗な顔が印象的で忘れていたが、彼女の服は刺激的すぎる。ほぼ裸じゃないか。女子と視線を合わせられない俺はどこを見ればいいと言うのか———
「リリアさんですね、、、な、なにか俺にご、御用ですか」
「あのー、、、、なんでそんなに私の身体をじろじろ見てるんですか」
目は見れないが気のせいか彼女の口調がイライラしているような気がした。だがしかたない。これが俺の今の精一杯だ。
眼球をあげしく動かしている俺を見て彼女ははぁと、呆れ顔でため息をつくと話を続けた。
「まあいいです。では契約の話をしましょうか」
「け、契約?なんの契約ですか?」
「言ったじゃないですかー、私は寿命取引課の悪魔ですって、
その契約といえば・・・」
「と言えば・・・」
「私と寿命の取引をしましょう!!」
またその笑顔か、、この子もしかしてわざとなのか?
———悪魔が寿命を奪いにくると言うのは聞いたことがあるが、それ以前に彼女が本当に悪魔なのかがいまだ信じられていない。確かに宙にぷかぷか浮いているが何かのトリックなのではと疑っている部分もある。
だが彼女は少し口が悪いところもあるが美人だ。男というのは元来美人に弱いもので、俺もその本能に従いとりあえず彼女の話を聞くことにしよう。
「それで、、、その取引というのはどういったい———」
「そうですね。簡単に説明しますと、この三つです。
まず一つ目——————《取引はあなたの寿命とその寿命に応じた報酬を支払うことで行われる》」
これは予想できた。取引なのだから報酬があって当然、ましてや寿命をかけろというのだから———
「二つ目——————《あなたが報酬を求め、それに合う支払い寿命を決めるのは契約している悪魔である》」
なるほど、彼女の手加減で支払う寿命は決まるのか。ということは彼女の機嫌さえ取れれば値切れるかもしれんということか。ふっ、ふっやはり俺は天才だな
「ちなみにこの二つ目は私が決めるというより、私の上司が決めることなので私の機嫌をとって値切ろうとしてもむだですからねー」
俺の考えは浅はかだったらしい
「そして三つ目———————《一度契約すると最低50年は使わないと契約の解除はできない》」
え?
「以上です。
どうですか?契約しますよね?しましょうか。さっそくこの契約書に・・・」
「ちょ、ちょっとまってくれ、いや、待ってください」
「なんですか〜」
「いや、その50年って・・・」
「そりゃ〜、こちらも商売ですからね。数ヶ月数年程度使われていきなり契約解除されたんじゃ赤字ですから」
なるほど。悪魔にとってなにが赤字になるのかは知らないが、確かに契約には最低契約期間というものが設けられていてもおかしくない。
仮に彼女の話が本当だとすれば、悪魔は悪魔で使い魔ではないのだ。好きに呼び出されて好きに追い返されたらたまったものではないということなのだろう———
「あー、話はわかったけど。その、50年っていうのはいささか多すぎる気が・・・。それとー、まずきみが本物の悪魔っていうのも今のところ・・・」
「まあ、最初はみなさんそうなりますよね。でも考えてみてください。私が悪魔かどうかなんて正直どうでもいいんです。要はあなたの人生がこのままで良いのかって話なんですよ!」
彼女は子供を叱りつけるように前で指を一本立て、俺の側頭部に向かって言う。
いや、悪魔かどうかは俺が知りたいことなんだけど、、、と内心思ったがまだ彼女の話は終わっていないようでお叱りは続く
「いいですか、あなたのこの引きこもりニート人生が続くとあなたはどうなると思っていますか?」
クッ、俺は50のダメージを受けた(俺の心HPは9999999だ)
「そ、そりゃぁ、俺だってダメだと思ってるしー、きっかけがあれば変えようかなと・・・」
「まず言っときますね」
俺にしては流暢に言い訳を並べると彼女は呆れた表情をし、前置きをするとごほんっと一つ咳払いをする。そして彼女の悪魔らしい黒く長い爪と細い人差し指で俺を指した。
「思っているだけじゃ何も起きません。あなたはなにもしません。きっかけなんてありません。頼れる友達もいません。ドラ●もんも来ません。奇跡も起こりません。あなたの周りにいるのはあなたに何も期待していない母親とあなたの存在を無かったことにしようとしている父親のみです。———そんな環境因子と個人因子が生む、あなたの残されたちょうど100年ある人生は真っ暗だと言うことを自覚してください。彼女もいない、子孫も残せない、誰にも認められず、孤独に死んでいく未来が待っているだけです。
それだったら、私と契約して残りの寿命を使って面白おかしく生きてみませんか?」
心が砕け散る音がしたような気がした。痛い、心が痛いよー。
この悪魔女、さっきから思っていたが口が悪くないか。さすが悪魔といったところなのか・・・
それはそうと、他全ては俺の生活から見て予想できることなのだろうが一つだけおかしなこと言った。なんなんだ、俺の残された人生がちょうど100年っていうのは、、、
「あ、あの、もしかしてなんだけど、俺の寿命とかわかったりするのか?」
「あ、はい。悪魔ですから」
「てことは・・・俺117歳で死ぬ?」
「そうですよー」
うゎー、俺めっちゃ長生きじゃん。まあ確かに健康には自信がある。毎日青汁飲んでるし、節分の豆ですら年の数食べているからな。
「それって誰のでも見ることができるけい?」
「まあ、そうですね」
悪魔というのは人の寿命が見れるのか。
は、ということは葬式屋を開けば・・・儲かるかもしれん!やっぱ俺天才———というかやっぱり本物の悪魔なんだな。
「で、どうするんですか。無駄に長ーい人生を送るか、私と契約して短期の一発逆転ホームラン王になるか」
「あ、あの・・・俺と葬式屋を開きませんか」
「はい?なにを言っているんですかあなたは、、、」
彼女はゴミを見るような目で俺をじっと見る。
なんか変なものに目覚めそうなので冗談は置いておくとして、本題の契約はどうしたものか・・・
「な、なぁリリアさん、契約したとして寿命の変わりの報酬ってどういうのなんだ」
「そうですね〜。基本的に報酬に際限はありません。ポテチ食べたいとか、ランニングマシンとか、大金が欲しいとかでも良いですしー、あと勉強ができるようになりたいとかでもいいですよ。」
まじか、なかなかの好条件。
確かに無駄に長く哀れな人生を送るよりかは彼女と契約して短期間の勝ち組人生も悪くないかもしれない。
ただ上手い話には必ず裏があるという、、、
「あのー、それってなにか注意事項的なものって、、、あります?」
「まあ強いていうならー、大きい報酬を望むほど引き換える寿命が多くなるってことですかね。例えばあなたが一国の王になりたいと言ったとします」
一国の王!いいじゃないか。豪邸に侍女に美味い飯。全て手に入るのだから
とりあえず肯定的に王っぽく頷いておこう。
フムフム(よいではないか)
「この報酬は今のあなたの現実からアホみたいに遠く離れていますよね。そうなると、かかる寿命の年月はざっと———『150年』ってとこですね」
ちょっとオーバーキルしちゃったよ!
なんだ俺の人生賭けても王様にはなれないってことなのか———まあ事実っちゃ事実か
「その場合どうなるんだ?」
「そうですね、いざ実行した場合は報酬を受け取った瞬間死にます。50年の足りない分はまあ・・・サービスですね」
なんか最後の部分の声が小さかったような気がしたが、気にしないでおこう。
「あと今の話で言うと、あなたみたいな引きこもりニートが全てを賭けても一国の王になれないのは当然なんですが、例えば王家の次男が王になりたいと願ったとします。それだとせいぜいかかる寿命は数年ってところで———
何が言いたいかと言うと、いくら悪魔でもその人の器を超える願いは叶えられないと言うことなんですよ。」
「へ、へぇ〜、そうなんだー、俺は別にそんな無理なこと望まないから、、、」
———あぶねぇー、これ聞かなかったら絶対頼んでたよ。てかめっちゃ大事なこと言ってないじゃんか。もし知らずに頼んでたら王様になった瞬間即死ですか、それじゃなんの意味もないじゃないですか。
要は次男と俺じゃあスタート地点とゴールまでの距離が違うってことですね。はいはい、身分格差おつ
「良い加減決めてくださいよ。こっちも忙しいんですから。契約しないなら帰りますからね」
それもうそうだ。
いい加減答えを出さねばならない。このまま先が見えないヒッキーでいるか、それとも短期間の俺なりの勝ち組になるかの二択、、、、
寿命・・・・・・・・・・・・・・残り100年
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