第40話 USBメモリはSF

「……ふぅ」


 仕事に区切りがついた竜二りゅうじは裏面に「竜二:仕事資料」と書かれたテプラが貼られたUSBメモリをパソコンに差して、

 部下から送られてきた資料のデータをコピーしていた。


「竜二、こんな時間まで仕事か? よく働くなぁ、お疲れ様」


 そこへ、彼以外のほかの家族と一緒に先に夕食を済ませていた竜一りゅういちが夕食をもって弟の部屋までやって来る。


「おお、兄貴か。いやぁ助かるなぁ。最近は仕事にかかりっきりで申し訳ないと思ってるよ。今仕事が山場だからどうしても兄貴みたいな家族と一緒にいる時間が短くなってしまうんだ、済まないな」

「ふーん、仕事が佳境か。頑張ってるじゃないか、偉いなー」


 竜二は夕食を持ってきてくれることに感謝していた、と同時にUSBメモリの書き込みが終わった。




「竜二、何だそれ?」


 竜一は弟のパソコンに「見たことがない何か」がくっついてるのを見て、それに関して聞く。


「ああ、こいつか。こいつはUSBメモリって言ってパソコンのデータ記録用の周辺機器だよ」


 竜二は「USBメモリを安全に取り外せる」ように操作した後、取り出して兄に渡す。彼は興味津々という言葉がぴったり当てはまるように物珍しそうにそれを持って触っていた。


「へぇー、30年も経つとずいぶんと小型化するもんだなー。フロッピーディスクの親戚みたいなものか?」

「記憶メディアっていう点では一緒かもし得ないけど全く別の規格だよ? それに記憶量も桁違いだぜ? これは容量が16GBだからフロッピーディスクの軽く1万6千倍くらいはあるよ」

「!? い、1万6千倍!? スゲェ! そんなにも容量があるのか!? ドラゴンキューブも真っ青なパワーインフレだな!」


 強い敵を倒したら次はさらに強い敵が出てくる。それを繰り返すうちに「たった1人で惑星を破壊できるまでにパワーがインフレした」ドラゴンキューブもビックリだ。


「でも、パソコンがあるなら別にバックアップなんて取らなくてもいいと思うんだがなぁ」

「昔、コロナ流行前でまだ会社に出勤して仕事をしていた頃にパソコンがぶっ壊れて、それまで作ってた資料が全部ぶっ飛んだ事があったんだ。

 あの頃は納期に間に合わせるようにそれこそ会社で寝起きして最後は徹夜して何とか完成させたけど、もう2度とあんな体験はしたくないんでね」

「なるほどそういう事か……竜二、お前も苦労してるんだな」


 社会にもまれて苦労を重ねた弟の話を兄は親身になって聞く。


「ところで「USBメモリ」の「USB」って何だ?」

「それか。それは俺も詳しいわけじゃないがパソコンと何かしらの周辺機器をつなぐ際の規格だそうだ。その規格に合わせて作れば動くっていうわけさ。

 兄貴はスマホ持ってるからそれで調べたらどうだ? すぐ出てくると思うぜ」

「なるほどね。分かったそうするわ」

「そうしてくれ。う……痛てて」


 イスから立ち上がった竜二は腰に手を当てる。高校生になる1児の父で御年44歳、座りっぱなしの作業はだいぶ腰に来る年齢になった。


「竜二、大丈夫か?」

「ふう……年は取りたくないものだな。俺も立派な中年になっちまったなぁ、腰が年々きつくなってきてるよ。兄貴、大人になったら運動はしろよ。

 特にウォーキングは腰を守ってくれる。俺も1年前にポケクリGOで外に出るようになってからはだいぶマシになったからな。学生時代は体育で身体を動かすから分からないと思うがな。」

「ふーん、そういう事か」

「それと、厄年ってあるだろ? あれはあその位の年齢になると身体にガタが来る、っていうのを経験的に知ってたから出来たんだと思う。身体は大事にしろよ」


 先人の知恵は大事にすべき。SFで学んだことだが、実の弟の言う事は聞くことにした。




【次回予告】

「ネットを介して不特定多数の人間とメッセージの送りあいが出来る」

 それは30年前では手紙を介しなければできなかったことが今ではスマホ1つで出来るらしい。


 第41話 「SNSはSF」

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