第34話 映画はSF
「
「今度の土曜って事は、7月1日か? 別に予定はないから付き合ってもいいけど。
近くに映画館が出来たのか。昔は映画見るには電車に乗る必要があったんだよなぁ、発展してるんだなぁこの辺は」
竜一たち
少子化が叫ばれている現代日本においても人口が増加し続けており、国勢調査によると47都道府県の中で唯一100年もの間、人口が増え続けている県と言われている。
そのため30年も経てば映画館の1つや2つ、新たに建設されているものだ。竜一の記憶にない映画館が出来るのも当然と言える。
「俺としてはこれが見たいんだけどいいかな? SFじゃないけどいいかな?」
「まぁたまにはいいかな。SFばかりだとクラスメートと話が合わないし」
竜也がスマホの画面に映した見たい映画は「アメコミ」要は
竜一からの了承を得ると彼はすぐにアプリを開き、2席分の予約を取った。
「週末ってなると混むだろうから席取れるかなぁ?」
「ああ、それは大丈夫。もう席の予約を取ったところだから」
「!? え!? もう!? お前、映画館に電話もしてなかったじゃないか!? いつ予約取ったんだ!?」
「映画館のアプリがあってスマホですぐに席を押さえる事が出来るんだよ」
「!? ええ!? スマホで予約が取れるのか!? スゲェ! もういちいち映画館に電話してスタッフとやり取りする必要はないのか! へー進んでるなぁ!」
さすが令和の映画館事情。スマホさえあれば思い立った日にすぐに予約が取れるようになるまで進歩しているとは! 竜一はひたすら感心していた。
迎えた7月1日。竜一と竜也の2人は自宅から自転車で20分ほどかけて目的の映画館へとたどり着いた。
まだ梅雨が明けてないためか天気予報では雨の心配こそないと言っていたが曇り空。しかしもう季節は夏までもう少しというところまで来ていて、半袖でないと少し蒸し暑い位だ。
冷房の効いた映画館の入り口近くに置かれた端末を操作し、竜也はチケットを発券する。それを受付に持って行って清算することにした。
「ではお会計がチケット2枚に塩味のポップコーンがついて2300円になりますね」
「あれ? 妙に安いな。俺の記憶が確かだったら、映画のチケットって1人2000円くらいはしたはずなんだけど」
「それは大人の料金だよ。俺達高校生は1人1000円で見れるんだ」
「へー。そうなんだ」
そんなものがあったとは。竜一は感心しながらも1000円を、竜也はチケットとポップコーン代を合わせた1300円を支払った。
いわゆる「学割」以外にも水曜日によく行われる「サービスデイ」や、高校生である竜一や竜也は使えないが20時以降の上映がお得になる「レイトショー」など、
いわゆる「定価」である1900円よりも安く映画を見れる方法はいくらでもあるのだ。
チケット代を払って2人は上映されるスクリーンに向かっていた。
「竜也。そのポップコーン、300円のSサイズにしてはやけに量が多い気がするんだが。とてもSサイズには見えないぞ」
「実は映画館のキャンペーンで、友達を連れてくるとポップコーンがSサイズの値段でLサイズになるんだ」
「何!? 竜也! って事はお前それが目的で俺を連れてきたのか!?」
「ハハッ、バレちゃったか。少しは伯父さんにも分けるからそれで勘弁してくれ。それと映画館内では騒ぐのは辞めてくれよ。いつもみたいに「スゲェ!」とか言わないで静かにしててよ」
「それくらいは分かっているさ。じゃ、行こうぜ」
2人は席に座って上映の時を待った。
◇◇◇
「いやーCG技術が凄いことになってるな。もう実写と大して変わらないレベルにまで上がってるよ。30年前とはえらい違いだぜ」
映画の鑑賞を終えて竜一はそんな感想を漏らす。
画像の合成は昔から「特撮」という形で使われてはいたのだが、明らかに画像を重ねているのがばれているような物。
今回の映画では「実写と見間違うほどリアル」なCGによる迫力の映像が目白押しだった。
「やっぱり30年前の映画とは比べ物にならないほど違ってたりする?」
「まぁな。SF映画が無いってのは気になるけど、今のところは満足かな」
「ならよかった。週明けに映画の話題を振られても大丈夫だろうね」
そんな話をしながら2人は自転車をこいで自宅へと向かっていった。
【次回予告】
今年の4月に買ってもらってから3ヶ月。竜一にとってはスマホはいまだに「30年前のSF作家ですら想像もできなかったハイテク機器」だった。
スマホを構成する要素の1つ1つが彼の常識を塗り替えていた。
第35話 「改めて見るとスマホってスゲェよ」
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