第30話 人工宝石はSF
「あれ?
今日は土曜日。昼間に学校の友達と遊びに出かけ、夕方になったので帰ってきた
「『今日は用があって2人とも出かけるから留守番お願いね』だってさ。夕食は冷蔵庫に入っているそうだよ」
竜也のスマホにあるSNSにメッセージが届いていた。それを聞いた竜一が冷蔵庫を開けると、スーパーの総菜コーナーで売っている寿司が2人分入っていた。
「……手抜きだなぁ」
「まぁ今日は6月17日だからなぁ。今日くらいは2人きりにさせた方がいいと思うよ」
「? 竜也、6月17日って何かあったのか?」
「ああ、そういえば言ってなかったね。教えるよ」
◇◇◇
神奈川県内でも上位に入る、しゃれた雰囲気を
どちらもレンタルではあるがドレスやスーツを借りてきて、準備に抜かりは無かった。
「今年でもう18年になるんだな。結婚記念日、おめでとう」
そう言って竜二は咲夜にプレゼントを渡す。なかなか大きいダイヤモンドがはめ込まれたプラチナの指輪だった。
「あら、高かったんじゃない?」
「お前、前に宝石屋によった時にずーっと見てただろ? だから思い切って買ってみたんだ」
「そうなんだ……ありがとう、竜二さん」
結婚してから既に18年は経つが、2人の関係は冷めてはいない。深い愛情で互いに結ばれていた夫婦だった。
◇◇◇
「へぇ、結婚記念日だから出かけていたのか。だったらしゃあないな」
「オヤジも母さんも仲がいいんだよな。俺の友達には家が荒れてて、顔を合わせるたびに飽きもせずによくそこまでケンカし続けることができるな? っていう親もいるそうだよ」
「ふーん。竜二の奴良い嫁さんもらったな」
竜一と竜也はお互い寿司を食い終わり、食後にそうやって話をしていたところ2人が帰ってきた。
「「ただいま」」
「おかえり、竜二」
「母さんおかえり」
2人が咲夜を見るなり目についたのは、なかなか大きいダイヤモンドがはめ込まれた指輪だ。
「へぇ、結構でかいダイヤモンドだな。かなりの値段したんじゃないのか?」
「ううん、大きいけどこれ合成ダイヤモンドだから、それほど高くはなかったそうよ」
「!? ええ!? い、今ではダイヤモンドが合成できるのか!?」
ダイヤモンドが合成できる。その凄まじい衝撃的な言葉に竜一は面食らう。
「ダイヤモンドだよ!? ダイヤモンドが合成できるのか!? ス、スゲェ! もうそんな時代になったのか! あれ、でもそうしたら本物と偽って合成ダイヤを売る連中も出てこないか?
ディストピアSFで『上級市民相手に偽のダイヤを売って
「その辺は天然のダイヤモンドを売ってる会社と協力して、シリアルナンバーを刻んだりして「合成ダイヤモンドですよ」っていうのを公表したうえで販売しているそうよ」
「そうそう。名画を真似して描いた絵でも「名画の真似をした偽物ですよ」と言って販売する分には問題ないのと一緒で、合成ダイヤモンドですよ。って言えば問題ないのさ」
「へー、そうなんだ。しかし合成ダイヤモンドとはねぇ。いやぁ時代は進んだなぁ、もうそんなものがあるなんて……」
竜一は人工宝石というとんでもないものが市場に出回っていることに科学の進歩を感じていた。その時、
「そういえばルビーやサファイアも人工宝石が作られているんだよ、知ってるか?」
竜二の何気ない一言に竜一が食いついてきた。
「な、何ぃ!? ルビーやサファイヤまで!? ス、スゲェ! って事はそれらも宝石として売られているわけか!?」
「いや、人工のルビーやサファイアはレーザーなんかの工業利用が主で宝石としての価値はあんまりないんだって。
それらは人工宝石の歴史が長いから鑑別法も確立されていて天然石と人工石の違いはつくんだとよ」
「そ、そうなんだ。へー人工宝石かー科学技術の進歩はそんなものまで作れるようになるのか!」
現在では研磨材やレーザー発振具の素材として工業的利用のために当たり前のように生産されている人工宝石だが、まさかダイヤモンドが作られるとは思ってもいなかった。
SFでも「人工宝石が当たり前のように売っている世界」というのはなかなかお目にかかれないモノだったと竜一は後で語ったそうだ。
【次回予告】
通販こと、通信販売。竜一の時代はマンガ雑誌の裏に広告として載っていたものにおっかなびっくり電話をかけていたものだが、
通販の世界的最大手であるMamazonが全てを変えてしまった。
第31話 「通販サイトはSF」
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