awake

ムクリ。


俺は、寝ている状態から起き上がった。


「あら、割とすぐに入れ替わるのね。聞いてたのとちょっと違うわ」


知らない部屋に、知らない女。


どうやら、いつものアレの様だ。


「ここは、何処だぁ?」


「ここは、美術島のオーナーの館の一室。別に幽閉されてるとかじゃないから、リラックスして良いわよ」


「あぁ。そういえば、にぃやんがちょっと前に何か言ってたなぁ。新しい仕事とかなんやら」


「・・・にぃやん?」


「七加瀬にぃやんの事に決まってるだろ」


「呼び名ね。理解したわ。仲が良さそうで何よりだわ。で、貴方は私を殺すの?」


「ハハハ。何言ってんだ、ねぇちゃん。殺すわけないだろ?まぁ俺を殺そうとするなら、別だけどなぁ」


「貴方を殺そうとしたら、貴方は私を殺すの?」


「なんだぁ?俺の事試してんのかぁ?・・・安心しな、殺さねぇよ。にぃやんと約束したからな。人は殺さないって」


「約束は破るためにあるとか言わない?」


「ヒヒヒ、勿論言わないさぁ。そもそも、人を殺しちゃいけないなんてルールがあるの自体知らなかったしなぁ。俺が昔いた所じゃ、それが日常過ぎて、むしろ防衛行動でしか殺さない俺は異端だったんだぜぇ」


「貴方、昔の記憶あるの?」


「ほぼ覚えてないが、うっすらとだけあるなぁ。ろくな記憶じゃ無いだろうから、忘れてて正解だけどなぁ」


「それは、斑井幸子より前の体でのことよね?」


「あぁ、そうだ。ってか斑井幸子って呼ぶな。そう呼ばれると、気分が悪くなる。うぇっぷ。吐きそう」


「じゃあ何で呼べば良いの?」


「にぃやんは、裏井って呼んでる。まあ身体は斑井のだからなぁ。裏って呼ばれても仕方ねぇよなぁ。まあ、割と気に入ってるし良いけどなぁ」


「成る程ね。じゃあ話を戻すけど、貴方は人を、そして七加瀬くんを襲わないのね?」


「人は色んなやつがいるから分かんねぇよ。でも、にぃやんは襲わねぇ。にぃやんは、俺の生き甲斐だからなぁ」


「生き甲斐?どういう意味よ?」


「あんた、迫間蕗って奴だろ?にぃやんから聞いてるぜぇ。んじゃあ聞くけど、ハザッキーは目覚めたら知らない場所に居て、話し相手も居ない完全孤独ってどぉー思うよ」


「は、ハザッキー・・・?まぁいいわ。そんな状況になったら、心細いでしょうね」


「そうさ、心細い。まぁ、でも折り合いつけて楽しんでたんだよ、女の身体ってのもあって実際楽しかった。もぅちょい胸はあって欲しかったがなぁ。でも、環境が悪かった。これは斑井のせいなんだろうがなぁ。喧嘩売られることがあまりにも多かったんだよなぁ」


「あの陰気な性格もあるけど、その割には軍部での成績はトップなのだから、周りからしたら好ましくはないでしょうね」


「だろぉ?しかも、軍部から出ても何か知らん奴に襲われたりするし、散々だ。だけどなぁ、事務所に入ってからは、最高だ。俺の事を分かってくれる、にぃやんとネェやんがいるし、一緒にゲームもしてくれる。正直、にぃやんとゲームする為に生きてるっていっても過言じゃないなぁ」


「成る程、それで生き甲斐ね」


「そうだ。俺の居場所が見つかったって所だなぁ」


「それは良かったわ」


「なんだぁ?もしかして、ただその話をする為だけにこの状況作ったのか?ヒヒヒ。相変わらず、罪な男だねぇ、にぃやんは」


「どう考えてくれても結構。もう要はないわ、好きにしなさい。ただ、この部屋から外には出ない方がいいと忠告しておくわ」


「それじゃぁ、明日の斑井のコンディションの為にも忠告通り、何もせずにそのまま寝ますかねぇ。斑井が不安にならない様に、俺が居る事をバレずに立ち回れとも、にぃやんに言われてるしなぁ」


「ええ、そうしなさい」


「ほんじゃぁ、お休み」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る