ようこそ!七加瀬特別事件相談事務所へ!

O県・某包丁の街の南部に、その事務所はあった。


外観は見るからに普通の事務所であるが、看板も立っていなければ、扉にその事務所の名前すら書かれていない。


そう、そこは先日私が私を捕まえてもらう為に、訪れた事務所であった。


結果的にはどうやらただの私の思い込みで、犯人は思いがけない人物であったわけだが。


・・・いや、思いがけないと言うのは嘘だ。


薄々は感じていた、彼が必要なのは私ではなく、価値のある私である事など。


それでも私にはただその人しかいなかったから、彼の思った通りにするのが一番だと、救われた分の働きをせねばと考えていた。


それが正解であったかは今でも分からない。

しかし、そんな私にもう一度差し伸べられた、ある軍人の手を私はまた握った。


その軍人は言った。君は恩人の親族だから僕は君の力になるよ、と。その言葉を聞いた時に、私の胸のわだかまりが晴れた。


とどのつまり私は、無能で救いようのない私が救われるだけの、何かしらの価値が欲しかったのだ。


それが、たとえ親による価値であったとしても。



時計を見ると時間は午前八時前を指していた。どうやら、ほぼ約束した時間通りにたどり着けた様だ。


きっちり午前八時。その時間に事務所の扉の横にあるチャイムを鳴らした。


すると待ち構えていたのかすぐに扉が開き、メイド服を着た、美しい女性が出てきた。


私はそのあまりにも整った顔に、相変わらず息を漏らしつつも、事前に用意しておいた言葉を話す。


「きょ、今日からここでお世話になります、斑井幸古です!こ、これからよろしくお願いします!」



「「ようこそ!七加瀬特別事件相談事務所へ!」」



さぁ、モチベーションを上げていこう。

何故なら私は、ずっと探していた自分の居場所をとうとう見つけたのだから。

私の物語は、ここから始まる。





File.0『八つ裂きジャックは誰だ』 end


Next   File.1『だから、誰もいなくなった』

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