断(章)/jack

夜の街を走る、走る、走る。


出来るだけ遠くへ、関係のない場所へ。


自分は何もしていないのだと、全力で逃げる。


全ては上手くいった。後は描いたストーリーの様に、物事が運ぶだろう。


息を切らしつつも、足取りは軽い。

このまま意味もなく走って、どこにでも行けてしまうのでは無いだろうかという全能感を味わいながら、ひた走る。


とうとう街を抜け、都市部から少し離れた林道に入る。


警察にさえ気をつければ深夜のこんな寂れた場所だ、誰もいるはずがない。

いるはずがないのだが。


「こんばんわ。今夜も月が醜いな」


前方から声をかけられる。


まるで逃げている事を先読みされていたかの様に、男女一組が並んでこちらを見ていた。


「・・・こんばんわ」


挨拶を返しつつ、頭をフル回転させる。


何故こんな時間にここに?

何者だ?

ただの通りすがり?


否、寂れた場所というのもあるが、事件で深夜に一般人は出歩かない。


「何故こんなところに人が?って顔してるな。それは簡単な話だ。あんたが斑井幸古とフードの人物が戦い始めた場所から、走り去ったのを見てたからな。簡単に先回りできたよ」


「何の事でしょうか。分かりかねますな」


「惚けるなよ。あんたの描いた、寒いストーリーはもう暴いてるんだ。八つ裂きジャック、いやこう呼んだ方が観念してくれるか?連続殺人鬼、津代中尉」

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