成り上がりの名家の令嬢リラは毎日忙しい。アイスブルーの瞳をもつ男レフィに山のような課題を押しつけられるのだ。読み書き、計算、音楽、礼儀作法、政治経済、乗馬、護身術……リラの腹筋は見事に割れた。それもこれも、執事兼家庭教師であるレフィの教育のなせるわざである。
さて、名家の令嬢の腹筋を割る必要がどこにあるだろうか。ましてや、小さな娘に小難しい政治の話をする必要がどこにある? どうやら彼は、リラだけでなく、彼女の父親にさえ助言を施しているらしい。レフィとは、実際のところ何者なのだろうか。
それが明らかになるとき、リラは普通の令嬢では経験しないような危険な事態に直面することとなる。これを打開するには、彼女に与えられた経験の全てが必要とされることだろう。それはすなわち、自分に寄せられた愛の大きさを実感することでもある。
悪魔のように怜悧。レフィ。その深い愛には、溺れざるを得まい。一方で、そのレフィ自身もまた、月の美しさに魅入られているのだ。
夢と策謀と愛と波乱に満ちた日々が、ここに。