Post Credit 雷鳴の響くところ

 やかましい雷鳴を伴った雷光で照らされたのは一つの小屋だった。雨雲はまだ遠いらしく、雨は降っていない。人工の光がないこの場所で動く人間が五人いた。


 五人のその恰好はどこかの歩兵を思わせる。防弾のヘルメットを被り、その顔は見えない。

 

(A部隊。小屋を包囲)

 

 指示に従った五人が二手に分かれて展開する。小屋の正面に三人。裏側に二人。事前のシミュレーション通りの配置だった。

 

 移動時の音には誰も気を配らなかった。いや、ただ一人、裏側へ回った方の二人、その片割れだけが足音を極力殺していた。

 

「こちらメニとメマ。配置に着いた」

(了解、こちら三名は配置済み。合図を待て)

 

 無線でのやり取り。足音を殺していた男はメニと名乗った。


 この部隊の五人は小屋に何者が潜んでいるかを知らない。ただ一人だけだと聞いている。楽勝だろ、というムードが部隊には満ちていた。

 

 いつ命令が下ってもいいようにアサルトライフルを構える。あとは作戦開始の合図を待つだけだ。メニは一歩後ろに下がった。




 小屋の中には上半身が裸の男がいた。筋骨隆々という言葉が本当にしっくりくる肉体をしている。

 

 何もない小屋。キャンプ場のログハウスの方がもっとまともな住居に思える。カビが生え、壁を虫が這っていた。

 

 直立する男。その頭は天井の梁をかすめそうだ。飛び跳ねればすぐに頭を強打するだろう。この男が極端に大きいというわけではない。小屋が小さい。床から梁までは二メートルもないくらいだった。それでもこの男は常識の範囲内で大きい。


 首が動く。小屋が透けて見えているかのように、鋭い目つきで周りを見渡している。


 闇の中でその目が赤く光った。




 Next is ...... "Múspell" and ”Double Killers”

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不可解部の活動記録01 File02色戦争 ~悪魔やら謎の組織が出てきて夏休みは犠牲になりそうですが、仲間と共にこの街を救います~ 西東惟助 @NHS

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