第8話 第六章 紙の本のほうが格好いい?
電子出版は知っているが、やっぱり(質量のある)紙の本で出版したい
これら時代の波ともいえる電子書籍と紙の本を同時に、しかもアマゾンという巨大なブックストアで、お互いをネットのページでリンクさせながら販売を行うのが
【kindle + POD】
という出版方法です。
PODはプリント・オン・ディマンドと呼ばれる出版方法です。出版社の力を借りずに、ほとんど費用を発生させることなく紙の本を出版することが出来ます。
前述したように従来の出版社は初版に2,000部~5,000部を印刷し、取次を通じて全国の書店に送ります。
PODはその名の通り、注文の一冊ごとに印刷を行い、これを直接ネットで注文した客にアマゾンの流通システムを使って配送します。
その結果、従来の出版社のように在庫を抱える必要がありません。実は従来の出版社による出版でも、出版社は作家に、特に初版は50部~100部といった数量で買取を要求することがあります。実質的に作家が抱える在庫です。
必ずではないのですが、多くの初体験出版でこのように要求された…という話をよく聞きます。割引価格などで、買取要求されるわけですが、同時に作家は初版本を手元にまとまった数量を持つのが普通です。作家も在庫を抱えるのです。
親しい人にプレゼントしたり、書評を書いてもらうために献本したりと用途は様々です。これは昔から存在する出版界の慣習なのです。
PODでは、こういったことは全く発生しません。出来上がりの確認のために見本刷りを一冊だけ割引価格で買う程度です。
一方で装丁に関しては帯をつけることが出来ないなど、若干の不自由はあります。また、電子書籍と同じように表紙は作家自身が準備しなければなりません。校正や校閲などの編集作業も自分で行い、完了する必要があります。
しかしこれらをクリアすれば、あとは原稿をpdfファイルに変換して、自宅のパソコンからアップロードするだけです。本の形もA4版から文庫本サイズまで指定することができ、原稿のヴォリュームを考慮して最適なサイズを設定することが出来ます。
そしてこれが最も魅力的な点です。アマゾンの電子書籍とPOD出版は、書籍化作業に全く費用が掛かりません。驚かれるかもしれませんが、本当です。
デメリットははっきりしています。どちらもアマゾンのページでしか販売されません。PODは紙の本ですが、書店には置かれません。
また宣伝広告もすべて自分でしなければなりません。内容に関する責任は、従来の出版社ならば、出版社に負って貰えますが、アマゾンの電子書籍とPOD出版の内容についての責任は全て著作者であるあなたが負わなければなりません。自己責任の世界なのです。
商品販売ビジネスとしての報酬はどうでしょう。従来の出版社では作家の報酬は本の価格の10%が相場です。\1,000.- の本なら一冊につき\100.- の印税です。多くはこれを印刷時、つまり初版の発売時と増刷のたびに出版社から支払われます。\1,000.- の本で初版の冊数が5,000部なら印税は \500,000.- です。
しかしこれは実力が認められているプロ作家の相場です。コンクールの新人賞でも受賞しない限り、新人作家の初版印税率(本の価格に対する率)は7%の場合もあります。また印刷部数も初版は2,000部だったりします。
つまり、出版社は出してみようというリスクは取るのですが、実績がない作家に高額印税を払うリスクは取らないというわけです。しかも本の価格を決めるのは出版社です。駆け出しの新人作家は出版社の言いなりに、これらの条件を呑むしかありません。
一方でアマゾンの電子書籍であるkindleでは、KDP(kindle direct publishing)という契約方法があります。これはその電子書籍をアマゾンのページだけで独占販売することを条件にして、印税率は価格の70%が支払われるという契約です。
またKDPでは本の価格を決めるのは出版人、つまり作者であるあなたです。常識的な価格の範囲は存在すると思いますが、価格は報酬である印税に直結するだけにこれは魅力的なシステムです。
PODはこれとは少し異なります。価格設定は出版人であるあなたが行いますが、基本的に紙の本であるため、その価格には紙代と印刷費、PODを取り扱う出版社の手数料を盛り込まなくてはなりません。これらは原稿をアップロードする際に、画面上で希望価格を入力し、自動計算されます。
しかし、従来の本よりはかかる経費は少ないと感じます。考えてみれば当たり前で、表紙やイラストといった経費は含まれません。そのほかにも編集費用、広告宣伝費も入っていません。
その上で後述するPODの出版社では、あなたの取り分、すなわち印税率は20%を推奨しています。
結局のところ、これらKDPとPODはあくまで出版代行業務を行っているのです。そのため、本の内容に関する責任は出版人であるあなたが全責任を負います。同時に印税率も高いものに設定できるというわけです。
あなたはどうお感じですか?
アマゾンでしか売ることが出来ないのは出版活動の場を狭められる印象をお持ちでしょう。かつての私もそうでした。
しかし、ある時私は考えを変えました。どんなに出版社に企画提案書を送っても、あちこちの新人賞コンクールに応募しても、結局出版社の目に留まらなければ書籍化の夢はかないません。
アマチュアの悲哀というか、あるいは負け犬の遠吠えとも解釈できるでしょうか。そんな悪循環の中にいるよりも、たとえアマゾンという狭い範囲でも、商品として出版し、印税に変えていく方が現実的ではないだろうかと。
あくまで個人の選択です。決めるのは自分であり、そして自己責任の出版です。私は自分が持つ原稿を世に出していくことに違いはないと考えました。
書店に自作が並ぶことは晴れがましいことです。しかし、世の中のどれだけの人たちが足しげく本屋さんに通うでしょうか。私はそう考えた後、もう一度大手書店に行きました。
そこで感じたことは
「広い売り場にこんなにたくさんの本が棚に並んでいる。自分の作品が棚のあそこに置かれているとしても、そのことが売れる本であることの保証、証明になるだろうか。もうこの場所に3分も立って見ているのに、あの本を誰も手に取っていないではないか」
つまり、書店に並ぶのは格好いいことだけれども、本を売り、印税に変えていくことはそれとは別の事なのだと。
全国の本屋さんは次々に閉店しています。街中の個人商店のような本屋さんは少なくなってしまいました。これからは紀伊国屋書店などの大手書店しか残っていかないと思います。
こういった大手書店は、人が集まる繁華街の巨大商業施設や郊外の大規模商業施設などにしかありません。一方で街中の本屋さんが閉店していくならば、店舗としての書店は身近なものではなくなっていくと考えます。
つまり、本を買いたいという人は、購買行動の機会が少なくなり、実際に買える場所が少なくなっていくということです。
アマゾンはインターネットの巨大サイトです。私は書店が無くなるとは思いませんが、一方のアマゾンによる書籍販売はますます身近になっていくと思います。ということは、今はまだ行き渡っているとは言えない電子書籍でも、今後は市場を大きくして行くでしょう。PODの認知も上がっていくと思います。
また絶版本の再出版や相続した著作権のある本を再び世に出す方法としては、最適であるように思います。
あなたはどう考えますか?
以下に従来の出版、自費出版、kindle電子書籍、POD出版の比較一覧表を掲載します。
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