第三話① 超越者とのロケットスタート
「さあっ! 次は超越者のセイカの所なのだっ!」
「何嬉しそうにしてんだゴルァァァッ!!!」
アガトク様の一部を体内に取り込んだ俺っちは、そのまま燃えながら意識を失ったっす。その後はマツリが呼ばれて俺っちを回収したらしいんすが、あんなに上機嫌なアガトク様は初めてだったとのこと。
お陰でしばらくは大丈夫そうだとなり、マツリもテンションアゲアゲみてーっすね。俺っちはあんなもん口にした所為で内臓火傷、意識不明の重体だったって聞いたんすけどねェェェッ!? 寝て起きたら綺麗に治ってたけどもォォォッ!!!
「別にお前は放っておいても勝手に治るから、心配しなくても良いのだ。さあ、起きたんなら次に行くぞ」
「喰らえ秘奥義ロメロ・スペシャルゥゥゥッ!!!」
「痛い痛い痛い痛いっ! 肩の関節と背骨が無理矢理反り返されて背筋が良くなっちゃうのだぁぁぁっ!?!?!?」
いつもの
俺っちがいくら
「マツリ様。そろそろ超越者セイカの住居にたどり着きますが」
「ごめんねが言えねーのかオメーはよォォォッ! この、このォッ!!!」
「にぎゃぁぁぁああああああああああああああああああああっ!!!」
「……はあ」
やがてやってきたジャスティンがため息をついた頃、ようやく俺っちはマツリを離してやったっす。マツリはよくもやりやがったなっつー目でこっちを睨んできてるんすが、それはこっちのセリフじゃアホンダラ。
「……
と思ったら、手のひらになんか書きながらボソボソと何か呟いてるマツリっす。んんん? 聞き覚えのあるそのフレーズは……。
「【
突然放たれた彼女の言葉と共に、光に包まれた俺っち。気が付くと、俺っちは大砲の砲身にすっぽりと装填されてたっす。
「おいまな板。これって?」
「人に変な技かけるお前なんか飛んでっちまえば良いのだぁぁぁっ!!!」
「貴様ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
次の瞬間。轟音と共に俺っちは射出されたっす凄い勢いで風を切って飛んでいくのが痛いィィィッ!!!
「ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?!?!?」
・
・
・
「うん。こんな感じね」
科学技術によって寿命を克服し、銀河のほとんどを解析し終わったことによって超越者となった種族の一人、セイカ。彼女は今、庭先にて趣味の【
それは、彼女自身の記憶を立体映像として再現するメカ。映写機のような形をしており、専用のヘッドギアで彼女の脳みそと無線接続することで、頭の中の細かい記憶ですら映し出すことができる。
「記憶の映像化は大変だったけど、ようやく形になったわ……でも、こんなものまで作っちゃうなんて。私、まだ引きずってるのね」
細い瞳を、少し俯ける。夫に先立たれてしまったセイカは、未だに彼を忘れられないでいた。嘆き悲しみ、この惑星ガイアで長い間眠りについていた彼女であったが、外からの働きもあり、最近になって目が覚めてしまった。夢の中ですら、夫には出会えなかった。
死んでしまった人を蘇らせる技術は、超越者であるセイカ達にすらまだない。彼女はそれをずっと研究しているが、それでもなかなか成果が出せずにいた。夫の遺体がないことも、上手くいかない要因の一つである。
「久しぶりに見られるのかしら、あなたの顔が」
上手くいかない研究の中での、憂さ晴らしとして作ったこのメカ。思い出の中にある彼の顔を見て、少しは気が晴れるであろうか。
そんな期待を寄せたメカに無線接続するヘッドギアを自分の頭に被り、早速起動させようとしたその時。
「あひゃぁぁぁあああああああああああああああああああッ!?!?!?」
突如として落ちてきたチャラ男がその全てを叩き壊した。
「…………」
セイカの額には、青筋がビキビキと浮かんでいた。
・
・
・
「何か釈明はありますか、コーシさん?」
「いえ、その。はい、なんも、ねーっす」
そして俺っちは今。SF作品でしか見たことねーような円盤型のドローン兵隊からレーザー銃っぽい銃口を無数に突き付けられながら、超越者であるセイカさんの前で土下座してるっす。
何があったのかと簡単に説明すると、俺っちはあのまな板によって吹き飛ばされてっすね。超越者のセイカさんのドーム内に撃ち込まれた訳なんすけど。
落下した先に彼女が【
『えっと、あの。ごめんなのだ』
『ごめんで済むかこのまな板ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
脳内でしおらしい声を出しているマツリだが、そんなもんで状況は何も変わらん。アガトク様と違ってこっちのセイカさんはまだ温厚そうなイメージあったのに、最悪のファーストインプレッションになっちまったじゃねーか畜生ァァァッ!!!
「それで? コーシさんはどうしてくれるんですか?」
やがてセイカさんから来たのは、お前はせっかく作ったメカを壊してくれたけどどうしてくれるのか、という問いかけだったっす。俺っちの答えは、たった一つ。
「直させてくださいっすッ!!!」
弁償、修繕、これ一択。それ以外に、俺っちに取れる手段が思いつかねーっす。
「……貴方が直せるの、これ?」
「ぶっちゃけ何がどーなってんのか、全く理解できません。貴女の手となり足となりますから、どうか教えてください。覚えた暁には、俺っちが全部やりますんで」
うん。何か見たこともねーメカとか俺っちに作れる訳ねーっす。ここは土下座でも足舐めでも何でもして教えてもらうしかねー。これでダメだと言われたら、もう俺っち、腹でも切るしかねーんじゃねーの。
「……はぁ」
少しの沈黙の後。セイカさんは盛大なため息をついたっす。マジすんません。
「まあ、良いわ。コーシさんが直してくれるというのなら、直してもらいましょう。必要なことは教えますので、ちゃんとやってくださいよ?」
「全身全霊で努めさせていただきまっすッ!!!」
「全く。今度の方は大丈夫なのかしら……?」
こうして俺っちは、壊してしまったセイカさんのメカを直す為に、泊まり込む羽目になったっす。これ以上機嫌を損ねたら、マジで何されるかわかんねーから。俺っちは大っ嫌いだった勉強を血走るような目で必死こいてやることになっちまったっす。
畜生マツリめ、ゼッテー許さねー。
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