第10話
「よーし」
「そんな張り切らなくてもいいと思うけど......」
「えー。兄さんのケチ」
唇を尖らせると兄が倒れた。
「ぐはっ........やっぱ無理。ハルトが可愛過ぎる。尊死するよぉ........」
「へー。俺、カッコいいを目指してるんだけどなぁ.......俺、可愛いなんだ」
これはちょっとショック。俺はカッコいいがいい。男としてそれは当たり前なのである!別に性別上は男だけど心は女、とかの人を差別するわけではない。断じて。
ていうか人間ってなんで新しいものとか未知のものを怖がるんだろうね。自分が怖いから差別するってどんだけ自己中なんだ?他の人にとっては危険だから?その人の危険はその人が決める。善人のフリしないでほしい。差別するのを容認するわけではないけれど、せめてあからさまに態度に出さないくらいはできないのかな。
あ、やばい。急に哲学になっちゃった。
ということで、状況を説明します。今、俺はアルバート兄さんとお忍びで城下町に来ています!"学園"で必要な教材を買うために。
「あっ!でんk......じゃなくって!ぼっちゃま!お待ちを!」
あーはい。フラグ立ちましたわ。殿下のお忍びね。はいはい。ってええ?俺のところに向かってきてるのは気のせいか......?
気のせいじゃなかったよおおおおおお!なぜだあああああ!
「あっ、やばい!そこの人、どいてええ」
あ、やばい。どかなきゃ。間に合わないから宙返りで許して!
「はっ..........ほっ。間に合ったー」
「マジカヨ全力疾走ちゃんと避けられたの初めてだすげー」
「殿下?一度お話しましょうか?」
にっこり笑う従者の人、目がちょっと怖い。
「すみません。同行してもよろしいですか?」
「ハルト?行かないよね?」
うるうるしながら兄さんが聞いてくる。
「へー........兄さんは行かないのね。じゃあ勝手に同行するわ。じゃーね」
「待ってハルトぉ!」
「ハルト?なんか聞き覚えあるような.......」
「聞き間違いじゃないかな?ハルトなんて名前いっぱいいるし」
「え?そんな名前の人に会ったのは君が初めてだよ?」
「ま、まぁそれは置いておいて!どこ行くの?」
「酒場」
「よし来た!行く!」
「ハルト、やっぱり..........」
兄さんが反対する。
「うっせ、父さんに向かって可愛く謝れば許してくれるだろ」
「魔王がそんなものに引っかかると思う?」
「父さんが親バカじゃないように見えるのか?」
「それは.......」
「な?」
「え、ええぇぇぇ!?お前、魔王の子供なのぉぉぉぉ!?」
「あ、これ秘密な」
しーっと仕草をして笑ってみせる。
「"学園"では、どの学科に進む?」
「学科、ねぇ......」
*おまけ*
王子目線
「ハルト、やっぱり..........」
「うっせ、父さんに向かって可愛く謝れば許してくれるだろ」
「魔王がそんなものに引っかかると思う?」
え?え?え?聞き間違い?
「父さんが親バカじゃないように見えるのか?」
oya......baka.....desuto.............
「それは.......」
「な?」
「え、ええぇぇぇ!?お前、魔王の子供なのぉぉぉぉ!?」
「あ、これ秘密な」
そう言っていたずらっぽく笑って、形の良い唇に長い人差し指を当てる。そんな仕草されたら、例え同性でも秘密にしないことはないだろ。ずるい。
「"学園"では、どの学科に進む?」
「学科、ねぇ......」
ハルトは頬杖をついて考え込んだ。てか、そんな仕草一つ一つも絵になっているのが悔しい。ハルトの美貌は作り物としか思えない。
................羨ましいのである。俺だって金髪碧眼みたいな普通の色じゃなくて、ハルトみたいな色が良かった。
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