第1話


「おい!お・き・ろ!」


「うわっ!.....なんだ、晴人か。もー、びっくりさせんなよー」


「兄さんが起きないんだから仕方ないだろ」


いつもの会話からいつもの毎日が始まる。

そう思っていた。


「うぅぅううううぅ.........」


「晴人!晴人!」


視界が霞んでいく。


あぁ、そうか。俺は、兄さんを庇って通り魔に刺されたから、死んじゃうのか........

兄さん、助かったかな.......


............パトカーの、サイ、レンの音が聞こえ...................



「こんにちは!私は、女神です!」


「え!?ちょちょ!女神ってそんなに軽い感じなんですか?」


俺の前には、女神と思われるきれいな女の人が立っていた。


「えっへん。妾は、女神じゃ!」


「あ、もういいです。そのノースリーブのトップスとチノパンとスニーカーのイメージにあってないので」


てか、そんな話してる場合じゃなくて。

俺は、死んだはずじゃ.....?


あっ!これはもしかして、転生ってやつか!チートで無双して、ハーレム築いて、青春を謳歌して...............


「ごめんなさい......チートを授けることはできますが、その........」


女神様は言いにくそうに俯く。


「どうしたんですか?」


女神の様子に気づきながらもワクワクして先を促す。


「その.......ジョブを、魔王に固定しないといけないんです。それをしないと転生ができなくて…….」


なんだ、そんなことか。内心ホッとしながら返答する。


「そんなことは気にしなくて大丈夫です!それよりも、チート一杯ください!手から溢れるくらい!」


「ふふふっ、面白いことを言うんですね。じゃあ、お望み通り、両手で数えられる以上のチートを授けましょうか。まず、必須なのが言語理解と、言語伝達です」


確かに、それは必須かもしれない。あとは、やっぱ憧れは素手でドラゴンとか倒しちゃうけど本職は魔術師なんです!みたいな?


「なるほどなるほど。なんか楽しみですね!日本人って面白いこと考えますから!」


........んん?え、ちょっ?女神様ぁ、今、俺の心読んじゃったり?


「そりゃ、神様ですからね!」


なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁ!ひどいぞ!プライバシー侵害だ!

や、神様にそんなこと言ったって無理か。ははは。


「ええ!無理です!」

がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!

いや、そこはすみませんって謝るところですからね!?満面の笑みで言い切らないで!


まぁ、一度気を取り直して。


「じゃあ、頭脳明晰、性格が良く、美形でイケボの完璧魔王様、なんて面白そうですね!」


「勝手に進めないでください!まぁ、いいんですけど。............あ」


「どうされました?」


「なんで転生できるんですか?俺ってそんな利用価値ないじゃないですか」


それを聞いて女神が嬉しそうにパン!と手を合わせる。


「そうそうそれそれ!聞いてほしかったんですよ!実はですねぇ........あなた、晴人クンのお兄様はですねぇ、天才科学者になるんです!将来の話ですけどね。だから、その命を救ったのが、君でして!そんでもってご褒美をあげましょう!って決まったんですよ!あ、ちなみにお兄様助かってますから!かすり傷一つないです!良かったですねぇ!」


「良かったぁっ!?.........ってえ?兄さんが!?天才科学者?ナイナイ」


俺がヒラヒラと手をふると、女神様がくわっと目を見開いた。

いやこの顔意外と面白いな。


「じゃああなたの将来の夢は?」


「.......科学者かな?」


「それ聞いてもまだ分からないんですか?君のお兄様はですね、自分のせいで死んでしまった君の願いを叶えようと、努力したんですよ!」


「ああ.......兄さん変なところで頑張るからなぁ.........とりまチート決めちゃいましょう!」


「変なところじゃないと思いますけどね、兄弟思いでいいじゃないですか」


「なにか言いました?」


「いえ、別に何も。独り言です」


そのときは魔王というジョブがいかに面倒くさいものか、この女神様の呟いたことを理解していないことがいかにいけないことか、それを全く知らない晴人は他に3つ、チートを女神様の耳にささやいていった。

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