48日目 転生希望
自分で言うのもなんだが、オレは優秀な頭脳を持って生まれてきた。しかし、周りはそれを理解しようとしてくれなかった。
オレの人生は、どの段階で失敗したのだろう。子供の時にいじめられた時か、学生時代に人間関係を構築できなかったときか。研究室で教授に嫌われた時だったか。遡っていくと、自分が子供の頃の失敗が今に至るまで続いている様に思ってしまう。
研究室を辞めてから、実家でも研究を続けていた。モチベーションはこの人生をやり直したいという欲求だ。
引きこもっている間、異世界に転生する小説や、過去に遡って強くてニューゲームのよう小説を読みながら、オレもこんな風にやり直したい、と強く願った。
そんな欲求の積み重ねが成果を上げて、僕は転生用の機械を作り上げた。
転生といっても、過去に遡れる訳ではないし、異世界に繋がるわけではない。純粋に、自分の記憶を引き継いで、身体を子供にする機械になる。小説でいえば、異世界転生や過去転生はできないわけだ。自分が死んだ後にその魂が別の人間に入るパターンに近い。
機械が出来上がると、僕は喜びに叫び、さっそく転生のための準備を始めた。
一度転生してしまえば、子供の扱いになってしまい、自由度は極端に減ってしまう。オレは転生前に、転生後の生活に向けて準備を始めた。
まずは親への指示である。子供となった後のオレをまずは警察に届けるようにする。そして、なにかの縁だからと育てるように言い含めた。そうなれば自然な流れとなるし、オレとしても事情を知っている相手でないと子供の時から好き勝手出来ない。子供であることを活かして、女の子とお風呂に入ったり一緒に着替えたりするというのも定番のエピソードだが、そこまでうまく出来る自信がなかった。
他に、自分の研究用の機械や資料を整理しておくことも行った。特に転生後は記憶も曖昧になることも考えられる。自分のスマートフォンを契約しておいて、ネット上に色々な情報を保存しておき、パスワードは暗号化しておく。もし記憶がなくなった場合には、自分が成長して暗号を解けるようになることを期待するしかない。
準備を万全にした上で、オレは転生機を動かした。
次に意識が戻ったときにはオレは子供の身体だった。声を出そうとするが、うまく出せず、子供の泣き声しかでなかった。
オレが全力で泣くと、両親がやって来た。それを確認してオレは泣き止む。ここまで行けば、後は流れに身をまかせるだけだと安心した。両親はオレの身体を抱きあげる。
しかし、両親はオレの身体を持って部屋から出ると、どこかの箱に入れてしまった。真っ暗になってしまったオレは慌てて叫ぶが、状態は変わることはない。オレは身体を動かそうとするが、赤ん坊の身体はまともに動かすことも出来ない。
なんとかできないかと焦るが、オレに出来るのは思考を巡らせることだけで、それ以外に出来ることは何もなかった。オレは最初、強烈な空腹に叫んでいたが、次第に力が抜けていき、暗闇の中に意識を落としてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます