47 計画

『なあなあ、八月一日に夏祭りがあるだろ。そこに四人で行かないか?』

 テニス合宿が終わり、残り僅かな七月を課題消化に費やして過ごしていた俺に唐突に届いたメッセージ。

 相手はもちろん優輝。

 だが気になることもある。

『和泉さんと二人きりで行った方がいいんじゃないか?』

 俺はそう返事を返した。

 夏祭りというのは夏の一大イベントの一つだ。

 それをわざわざ俺たち四人グループで行く必要があるのだろうか。

 そんなことを考えているうちに優輝から返信が返ってきた。

『初めてのデートが夏祭りってのはちょっと難易度が高くないか?だからお前と中川さんも一緒に来てほしいというか』

 なんとも日和った返信が返ってきた。

 とはいえ俺も合宿の時に栞に対して「夏休みにたくさん思い出を作ろう」とか言ってあれだけ啖呵を切っておきながら、まだ具体的に遊ぶ予定を決めていなかったのが現状であったので人のことは言えないが……

『分かった。お前がそうしたいのなら中川さんには伝えとくよ。ただし和泉さんにはお前から伝えろよ』

 優輝がそう考えるのも少しわかる気がするので、素直に提案を呑むことにした。

 ちなみに優輝と和泉さんにはまだ俺と栞が付き合っていることを教えていないため、いまだに優輝や和泉さんとの会話の時は栞呼びではなく中川さんと呼んでいる。

 そして優輝からはすぐに返事が返ってきた。

『当然だろ!さすがに自分の彼女には自分で伝えるわ!』

 返信を見て思う。

 彼女のことを大切にしてそうで何よりだと。


『八月一日にある夏祭りに優輝が俺たち四人で行きたいらしい。栞はその日行けそうか?』

 俺は優輝との会話を終えるとすぐに栞にメッセージを送った。

 栞にも予定はあるだろうし、いつ返信が返ってくるかも分からないので、できるだけ早く送っておいた方がいいと思っての判断だ。

 だが俺の予想に反して、栞はすぐに返信を返してきた。

『私は行けそうです。ですが私たちが行ってもいいんでしょうか?』

 確かに栞がそう考えるのも分かる。

 俺も最初はそう思っていたのだから。

『優輝によるとどうやら最初のデートが夏祭りというのはハードルが高いらしい。だから俺たちも一緒に来てほしいそうだ』

 俺は優輝が言っていた理由をそのまま伝えた。

『なるほど、そういう理由でしたか。ですが初デートはどこでもハードルが高いと私は感じてしまいます』

 そう言われて確かに栞が言っていることも分かる。

『やっぱり緊張するよね』

『はい……』

 話題が変わったこのタイミングで俺たちの話を切り出す。

『そういえば俺たちの初デートなんだけど、行きたいところとかある?』

 さすがにそろそろ会う予定を立てたいと思っていたので、こういう話の流れになったのは都合がよかった。

 少し間があったのち、返事が来た。

『正直夏祭りに誘おうと思ってました……本当のことを言うと私は雅也くんと二人きりで行きたかったです』

 だけど優輝からの提案となると断りづらいのだろう。

 仮に俺たちが優輝に無理だと断って二人きりで夏祭りに行っても、優輝とか和泉さんに見つかれば少なくても疑念を持たれたりして俺たちの関係が悪化する可能性だってある。

 でも同時に栞の願いをかなえてあげたい気持ちが俺の中にはあった。

 どうしたものかと考えを巡らせると、どちらも満たせることができそうな方法がふと閃いた。

『じゃあこういうのはどう?~~~~~~~~~』

 俺は夏祭り当日にやるべきことを詳細に伝えた。

『確かにそれならなんとかできそうですね。とはいえ横山さんからしてみればかなりの無茶ぶりになるかもしれませんが』

 どうやら栞も問題なさそうな反応だった。

『じゃあこの方針で行こうか。集合場所とか時間は決まり次第伝えるよ』

『はい、よろしくお願いします』

 こうして夏祭りの計画が決まった。

 夏祭りがどうなるのかは当日になってみないと分からないが、俺の心は楽しみだという感情で胸がいっぱいになっていた。

 

 

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